ランク1と2と4と7
「――【ディーヴァス神姫】が無名相手に二対一とは感心しないねぇ!」
遠くから届いた朔真の声が我に返させる。
植え込みの中から刹那と一緒に抜け出して、私の傍へと駆けつける。
だが、遮って守るように立つのでは無く、私の後ろから肩に手を添えて。
「朔真、そして刹那か」
久しぶりに旧友と再会し合うが、日祈の額から血管がバキバキに浮くほど険しくなった。
やけに静かで大人しく名前を口にするが、腹の底ではめちゃくちゃ怒っているのが丸わかりだ。
「おひさー、阿国ちゃん、日祈っち」
気持ちを読み取れるはずの刹那だからか、あえて挑発するようにヘラヘラと手を振った。
「この裏切り者どもめ! 天水晴那と結託して、アーシャに何の用があって呼びつけた!」
「裏切り者なんて人聞きの悪い。ただ、クビになってしまったから、しょうが無く競合事務所に転職しただけなのだが」
「競合に鞍替えした時点で、普通に裏切りですわ」
とんちどころか言葉の綾にすらなってないと言わんばかりに、阿国が呆れて肩をすくめた。
「迷子捜索のために【ディーヴァス神姫】勢揃いかよ! すさまじいな!」
確かに元が二人居るとはいえ、【ディーヴァス神姫】というトップ層だけで編成されたQ-key.333の派生グループが、こうして一同を回している時と言えば、年の瀬のライブくらい。
だが、この奇跡的な全員集合は、もはやファンのためではない。
「退くぞ、晴那。作戦中止だ」
肩から首に腕を回して朔真が耳元に囁いた。
再会の時に軽口で煽った顔とは正反対の、神妙な面持ちで中止を伝える朔真の頬には、大粒の冷や汗が垂れていた。
「中止、ですって……?」
「口止めをしていたはずだが、まさか【ディーヴァス神姫】が総出で迎えにくるのは想定外だ。アーシャの意思ではないにしても、この状況はあまりにも分が悪すぎる」
それに併せて、刹那も片方の腕を抱きしめて撤退を促す。
「気持ちは分かるけど、ボクと朔真じゃあ、抵抗に加勢できない……。君一人じゃあ、どうやったって無理だよ」
刹那がビャコにも視線を送る。
事実、こちら側のスキャナーはビャコしかいない。
私は歯を食いしばったまま顔を逸らした。
アーシャの方も碧と詩弓に介抱されてヘリへと誘導される。
こんなにも近づけることができたのに、今でも数歩歩けば取り返せる距離なのに。
アーシャとの距離が、抗争の終着点がどんどん遠ざかっていく。
部を弁えているかつての仲間に大人しく止められる私を見て、残った【ディーヴァス神姫】達も背を向けてヘリに戻っていく。そんな中、唯一私を見ているのは、アーシャだけ。
潤んだ目から伝わってくる。
会いたかった澄香かもしれない期待と、そうであって欲しい切望。
暗闇の中で灯る蝋燭の様に、ぽつんと見えるアーシャの切ない顔が、徐々に小さくなっていく。
遠くなる、遠ざかっていく……。
アーシャのことが。
生きたスキャナーが……
ナガタマホの情報も……
大場璃玖の居場所も……
私の無実……私の帰る場所……
瞼の裏に一瞬だけ、故郷の風景が浮かび上がった瞬間、私の中で何かがブツンと切れた。
「ビャコオオオオオ!」
「――ッ! オォウ!」
突然、吠えた私の怒声に呼応したビャコが、割れるほどスキャナーから音を轟かせた。
「なにっ!」
「これはッ!」
半球のモニター部から、目をくらますほどの閃光を放つスキャナー。
同時に一瞬だけ私を中心にプリズムストリームが衝撃波となって放出され、介抱する刹那と朔真を弾き飛ばす。
発光、突風、怒声。
後ろを向いている間に五感から全てを察した【ディーヴァス神姫】共が改めてこちらに向き直おろうとした瞬間、私は芝を蹴って肉薄していた。
「「こんなところで、行く道退いてられるかああああ!」」
ビャコと声を重ねながら、アーシャを目指して突貫する私。
「身の程知らずの無頼物め」
冷めた目でため息と共に見返しながら、日祈と阿国が改めてスキャナーを構え直す。
「「そこをどけええええ!」」
駆けながらデッキをスキャナーに装填し、プリズムストリームを噴射させる。
吹き上がった衝動のまま、私は対戦に臨んだ。
「「「――オン・ステ……」」」
三人が同時に開戦の号令を口に仕掛けた瞬間、視界が三度も瞬いた。
唐突に弾けた発光に、私どころかこの場の全員の動きが止まるほど目が眩む。
ビャコからではない。それどころか、少し遅れて雷鳴が耳を劈いた。
突然の雷に、滞空しているヘリが動揺して機体を揺らす。
「な、なんだ!」
「今夜は雲一つ無い晴れだぞ! なんで雷が!」
不安げに揺れ始めるヘリとは反対に、一瞬の閃光が冷や水となって私達の動きを止まる。
すると、その硬直している様をからかうように、太い一筋の紫電がこの広場中に駆け巡った。
芝を駆ける犬のようにうろちょろと走りながら、目がくらむほど稲妻が瞬く。
思わずこの場にいる全員が雷を避けて身を縮めていると、その雷光は隙を縫ってアーシャを連れ去った。
やがて女の子を一人抱えた紫電は、公園を照らす外灯の頂点へと登り、ピタッと動きを止めたかと思うと、月を後光に佇む人影に変わった。
「三つ数えてくわばらくわばら。禁忌の紅と蒼き沈黙が瞬く時、一閃の紫電が闇を駆ける!」
アーシャを抱きかかえたまま影の塊が動いたかと思いきや、そいつはマントを翻して正体を現した。
長いシルクハットに薄紫色の挑発。
よく響くアルトの声で、絶妙にテンポが悪くて聞き覚えがあるその口上を、見上げる面々に聞かせる。
「電磁のパルスをマントに纏い、超電磁怪盗インディ・オーラ、ただいま見参!」
まるで雷の申し子の様な登場と、怪盗らしい奪取でアーシャを抱えたまま、インディ・オーラがこの場に現れた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「いいから早く決闘しろよ」
と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。
また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、
思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。
あとブックマークもいただけるとうれしいです。
細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!




