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【ディーヴァス神姫】勢ぞろい

 轟音と共に虹色の風が吹き荒れる芝原を、空飛ぶ鉄籠から白金の乙女が地上を見下ろす。


 外灯の僅かな光だけでも輝くほど、かち割った鉱物の断面に似た彩りを宿した瞳と目が合った。


「Q-key.333のランク1!」


「【煌閃天】蓁原詩弓!」


 トルクの轟音をならしながら低く滞空するヘリの中で、プラチナの長い髪を靡かせた天女が、現代的な方法で光臨しているよう。


 下界に蔓延る汚れた人類を見るような冷めた目つき。


 睨み返すものの、その吸い込まれそうなほど幻想的に輝く瞳の前では、格の違いを思い知らされる驚異を感じざるを得なかった。



「やっぱ、あいつも伏兵で備えていたか!」



 ビャコが悪態をつく。



「いいえ、そうじゃなさそうよ……」



 だが、こうして派手な方法で迎えに来た詩弓を前に、アーシャが目を丸くしているということは、この登場は想定していなかったのだろう。



「夜中に黙って外に出ててたら、みんな心配して全力で探しにきたって感じだわ」


「過保護すぎるだろ! 箱入り娘かよ!」



 確かに迷子一人にヘリはやり過ぎに思える。


 だが、アーシャの性格が幼いこともあって、そもそも未成年のアイドルが一人で夜中に出歩くこと自体が、本来は危険極まりないことだ。


 特に、私のような辻斬りが脅かしている状況では猶更。


 アーシャと私を顰め面で交互に見るなり、詩弓はロープを握りしめ、ステップを軽く蹴ってから一気に地上へ降りてきた。


 落下から着地までキラキラと絵になる所作で詩弓は芝の上に立つなり、詩弓はすぐさまアーシャの傍へ駆け寄った。



「アーシャ、探したぞ。やっと外に出たかと思えば、こんなところで」



 肩を抱きながらちゃんと目を見て優しく語りながら保護する詩弓。



「待って、詩弓! そこの天水晴那が、晴那がね!」


「そうだ、そこに居るのは確かに天水晴那。我々の敵だ。奴の手によって、自分達は大事な友を失ったのだ。うかつに近づくべき相手ではない」


「違うの! 晴那はね! もしかしたら澄香かもしれなくて!」


「迷子になった君に住処を与えてくれるかもしれないだと? そんなの罠に決まってるだろ」


「だから違うってば!」



 腕の中でアーシャが駄々をこねて抵抗するも、詩弓はこちらに一切目を合わせること無く、ただアーシャをなだめているだけだった。



「碧、手伝ってくれ!」


「――はいはーい、今行きますよぉ」



 流石のランク一でも、あの華奢な腕では女の子一人強引に引き寄せられないらしく、詩弓が踏ん張りながらも誰かを呼んだ。


 その声に応じて、同じくロープを伝ってもう一人の背の高い大人びた女性が、降りてすぐにアーシャの傍に駆け寄った。



「碧……愛染碧か!」


「えええ! ランク7も来てるのか!」



 突然の探索にブラをつけるほど余裕も間もなかったのか、寝間着のような薄い服にカーディガンを来ているだけの軽装で、駆ける度にバインバインと胸が弾むその嫌みったらしいグラマラスボディと、靡いている緑色のロングヘアー。


 そしてアーシャを心配する母性溢れる優しい顔は、【堅翠天】の愛染碧に間違いなかった。



「ここは危ないから、お家に帰りましょうね」


「ねぇ待ってよ! 天水晴那と話をさせて!」



 安心させるように柔和な笑みで、ぐっと強引に背中を押して進ませる碧。


 アーシャがなんとか抵抗しながら私を指さすが、詩弓は依然として私を見ていなかった。



「彼女に話したいことは寮で私達が代わりに聞いてやる。戻るぞ」


「やーだー! 話を聞いてよ!」



 強情にも踏ん張って帰宅を拒否するアーシャの腕を、詩弓も同じくらいぐっと引っ張りながら、ヘリへと繋がるロープにも腕を伸ばしていく。



「そうはさせない!」



 このままだとつれて返される、そうなる前に私は地を蹴ってアーシャを奪い返しにかかる。



「――それはこちらの台詞だ!」



 頭上から堅苦しい口調のわりに声が高い少女が声ごと天から割り込み、詩弓の前を遮った。


 着地と同時に降り上がる朱色の一閃。


 思わずスキャナーで受け止める。


「ギャッ」という悲鳴とバチンと竹の弾ける音。


 それはネオンライトが埋め込まれたゲーミング竹刀だった。



「……いってぇ! 俺で受け止めるな!」


「このゲーミング竹刀――あんたは!」



 悶絶するビャコよりも、私は竹刀ごと乱入してきたもう一人の存在に面を食らった。


 燃えるような朱色のポニーテール。


 同じくらい真っ赤なジャージ。


 年相応の童顔で厳格さを感じないが、その性格は鬼教官そのもの。


 研修生を卒業してランク持ちになってもなお、しごかれた思い出が古傷のように疼く、このアイドルは――



「【紅暁天】鞠地日祈!」



 そのアイドルは、自身もQ-key.333に所属しながらもグループの指導役を担う本物の教官にして、教え子達をよそ者に負かせない本物の指導力を持つ軍神が【煌閃天】に次いで現れた。



「法王杯で同胞を散々屠っただけでは飽き足らず、裏切り者と結託してアーシャの首を狙おうなどと、随分と貪欲な方なのですわね」



 さらに別の――気品溢れる声が私に皮肉を送る。


 未だ滞空するヘリの成す影の中から顔を出したのは、この状況と場所に合わないほど派手なドレスワンピースを来た、血の赤いツインテールの高貴に満ちたお嬢様。



「【赤滅天】の神息吹阿国までッ!」



 公園にヘリが飛んでいる理由。


 迷子捜しにヘリを自転車感覚で用意できたのは、アートマンストラに援助が出来るほどの太い実家を持つ令嬢でもある阿国の力だ。


 しかも、こいつは強いのは金だけだと言わせないほどの実力もある。


 その証拠が、全てを滅ぼすほどの暴れっぷりからつけられた【赤滅天】の二つ名と、ナンバー2というランクだ。



「そこをどけ! あんた達に用はない!」



 私は啖呵を切るが、膝が笑っていた。


 自分でも分かるくらい虚勢を張っているように見えるほど腰が引けていたのだ。


 神殺しの声が裏返えるほど、虚しい威勢を見かねた阿国と日祈は、わざとらしく鼻で笑い、逆にじりじりとこちらに迫ってくる。いつの間にか、手にはスキャナーを握りしめたまま。


 ここで二人同時――しかも、ランク2とランク4を相手に。


 いずれ勝たなければならない強敵。


 それが今になっただけのこと。


 なのに、私の足は一歩ずつ後退していた。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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