全てを駆けた〈ブルーマグノリア〉
「〈ヴァルナーガスカート〉の効果! 一ターンに一度、コスチュームの下に〈シェルベッコチャーム・トークン〉を一つアンダーとしてつける。このとき、フルコーデ状態なら〈シェルベッコチャーム〉をつけた自分コスチュームは相手の効果でドロップされない! 私は〈ヴァルナーガシューズ〉にチャームをつける!」
オーラを放ったスカートがシューズにチャームをつけさせると、一瞬の演出として脚にだけ半球型のバリアが展開された。
「そして、自分が〈ヴァルナーガ〉シリーズを着ている時、手札の〈ヴァルナーガカチューシャ〉は追加コーデされる!」
解凍された反動で、何度も効果を連発しながら衣装を積み上げていくが、一縷の汗が頬を伝うほど不安と緊張が拭えない。
このターンで、目当てのカードを引かねばいけないのもあるが、アーシャがどこで仕掛けてくるのか、そのタイミングを伺いながらは、流石にスリルがありすぎる。
「〈ヴァルナーガシューズ〉の効果!」
決めるなら今しかない。
私はシューズに煌方陣を描かせ、役目を終えたトップスとボトムスを素材に、リンケージコーデを決行した。
「現れろ! レアリティPR 〈RDティアーズ ヴァルナーガワンピ〉!」
「来た……あれが天水晴那の勝負服!」
液状化して結合の後に、水しぶきを上げて権限した天水晴那のエースコスチューム。
白浜の上で着られた黒の衣装は、かなり目立っていることだろう。
「〈ヴァルナーガワンピ〉の効果!」
「――そうはいかない!」
私がワンピの効果を発動しかけた瞬間、アーシャが手をかざしながら割り込んだ。
それに併せて、足下に伏せていたアクシデントカードが、海中から水飛沫を上げて跳ね上がった。
「アクシデント発生! 〈グレイシャルダイン〉!」
来た。
先に発動していた永続アクシデントを起点に警戒していた、もう一枚のパーツカード。
青い頭巾を被った雪だるまの妖精が、隕石みたいな大きさの氷塊を落とす、コミカルだが攻撃を連想させるイラストが描かれていた。
「アイスカウンターを全て消費して、相手のコスチューム一着をドロップする! その後、消費したアイスカウンター二個につき、相手のAPを100ポイント下げる! 対象はお前の〈ヴァルナーガワンピ〉!」
盤面のモニターに映ったアイスカウンターが一気に0に減ると、立ち上がったアクシデントのイラスト部から、まるで消費したアイスカウンターを集めたかのような氷塊を生成させ始めた。
というよりも、まんまイラストから飛び出したといわんばかりに、ゴツゴツとした氷の砲弾が大きさと共に殺意まで徐々に増していく。
「そして十二個使い切ったことで、お前のAPは600ダウン! お前の負けだ! 天水晴那!」
確信した勝ちを叫ぶアーシャに併せて、できあがった氷塊が大砲の如く放たれた。
「――この瞬間を待っていた!」
「な、なに!」
あと少しで氷塊をぶつけられる寸前、私は頭につけていたカシューシャを外した。
「〈ヴァルナーガワンピ〉の効果! 自分ステージ上の衣装が相手の効果対象になったとき、〈RDティアーズ〉ブランドをコストにすることで、その効果を無効にし、ドロップさせる!」
握りしめていたカチューシャがワンピの持つ効果によって変形し、昆布が巻き付いたボロい野球バットになった。
私はそれを両手でぐっと握りしめながら膝をあげ、なお迫ってくる氷塊に狙いを定めた。
「カラミティ……ドレイン!」
技名というよりもリズムあわせとして叫びながらバットを振ると、カキンと気持ちのいい音を出しながら氷塊が跳ね返した。
初めてのバッティングは、見事に効果そのものを跳ね返し、アーシャの頬を掠めて、立ち上がったアクシデントを砕けた氷と跳ね上がる水面へと沈ませた。
「そ、そんな……!」
最終兵器として温存していたコンボを発動させるのはこちらも読んでいた。
だが、アーシャがエースの登場を予期してくれたおかげで、発動タイミングまで綺麗にこちらの想定通りで助かった。
おまけに、頼みの綱であったアイスカウンターを全て使わせ、アーシャのAPが元の1500まで下がる。
もうアーシャがこちらのターン中にできる手段は全て使わせた。
対してこちらのAPは1230のワンピースと、チャームがついた750のシューズ。
そしてワンピ自身の効果で衣装の数×100上がり、合計で2280。
「これで条件がもっと満たされた! 晴那、今度こそキーカードを引くんだ!」
そして「待っていた」のは、アーシャのコンボを崩したことではなく、それを利用してランドリーに十分な衣装が積み上がったことだ。
「手札からミュージックカード〈ブルーマグノリア〉を発動!」
このカードは、自分のランドリーに置かれた〈RDティアーズ〉ブランドのコスチュームを最大六枚まで戻し、三枚につき一枚ドローできる。
今の私のランドリーには、〈サーフフェイスワンピ〉と〈ポリゴンタトルスカート〉、コストにした〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉、そしてジャケットとスカート。
最後にアクシデントを打ち返したカチューシャの合計六枚。
最大で二枚引けるチャンスをなんとか作った。
ランドリーから六枚のコスチュームが光の玉となって浮遊しながらデッキへと帰って行く。
洗い終わった衣装達の帰還を察すると、スキャナーが綿密にデッキをシャッフルさせていく。
シャカシャカと乾いた音を立ててシャッフルするが、この一瞬が異様に長く感じた。
このシャッフルでアレを引けなければ、試合そのものに勝っても、この抗争で負けてしまう。
シャッフルが終わり、私はデッキの一番上に指を乗せて囁いた。
カード達よ、産みの親でもある勇作Pの無念を晴らしたくば……この想いに応えよ!
覚悟を決めて、私はデッキトップから二枚のカードを引き抜いた。
引いたカードは……アクシデントカード〈バナーカルシールド〉。
「「――ッ!」」
そのカードの背を少し指でずらすと、ミュージックカードを示すフレームと〈蓮雪詠-Ren Setuei-〉のカード名が見えた。
「「――来たッ!」」
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