声に出して読みたい〈マシマシチョモランマフロストジェラート〉
天水晴那 AP1100 VS 古奈アーシャ AP2100
「わたしのターン、ドロー」
盤面では向こうが圧倒的に押している。
状況は確実に有利だが、当のアーシャはえらく落ち着いたまま、ゲームを続行させる。
あの落ち着き具合は、こちらを警戒しているというよりも、天水晴那という存在を明らかに不思議がっている顔だ。
自分の展開パターンを熟知して警告したり、仲間しか知らない過去を知っていたり……天水晴那は敵なのに、自分のことをなぜか知りすぎている、そんなことを言いたげな顔だった。
「もうそろそろこいつの声で気づけよ、そんな大きく化けてるわけじゃ無いんだから!」
ビャコが痺れを切らしたかのようにぼやく。
「仕方ないわよ、天水晴那は自分の敵だという根底が外れない限り、よく観察して同一視しようなんて思わないわ。……そういうことに冠しては、アーシャはちょっと察しが悪かったわ」
ただ、不本意ではあるが、こうして小出しにした情報を拾っては、こちらを探ってくるようになったのは好都合。
あと一押し。
確実にあのカードさえ出せば、アーシャはきっと気づいてくれる。
そのためにも、このターンを凌がないと。
「永続アクシデント、〈マシマシチョモランマフロストジェラート〉発生!」
既に立たせた緑色のBGMの隣に、黒と黄色の警戒色フレームを持つ、もう一枚の等身大カードを立たせた。
聞くだけで頭が悪そうなカード名は伊達じゃ無く、イラストには見るだけで頭や体のどこかが痛み出しそうで、ついでにカロリー数値というスリップダメージまで与えてきそうなほどのトッピングも添えた、山盛りをこえた山盛りのかき氷が描かれたアクシデントだった。
「次の自分のメインフェイズが来るまで、わたしが持っているアイスカウンターと同じ数だけ、このカードの上にもアイスカウンターを置く!」
カード名やイラストのイメージ通り、期間限定でカウンターを一時的に倍にする効果だ。
今のアーシャは合計六個のカウンターを保持しているので、その倍の一二個まで増える。
「アイスカウンターが増えた事で、〈ヒマーシェルトップス〉のAPが、さらに増加!」
同時にアーシャの合計APが600ポイント増え、合計で2700まで到達した。
ただし、その永続アクシデントの効果期間は、次の自分のターンまで。
つまり……。
「奴め! このターンで整えきるみたいだぞ!」
私は頷いた。
分かっているからだ。
アーシャがそのカードを出すときは、大体このターンで勝負をつける時だって事を。
「ミュージックカード〈バタビアーズフラワー〉発動!」
続けざまに、最後に握っていた一枚を発動させる。
そのカードには、氷の結晶に満ちた洞窟の奥に咲いた、花弁から葉っぱまで同じ氷で出来た花の姿という幻想的なジャケットが描かれていた。
「アイスカウンターが六個以上あるとき、六個につきデッキから一枚ドローできる! わたしのカウンターは一二個、よって二枚ドローできる!」
手札補充効果。これはチャンスだ。
「アクシデント発生! 〈均衡の謝肉祭〉!」
「え? そのカードって……」
このカード自体は、相手がデッキからドローする効果を発動したとき、こちらも便乗して同じ枚数だけドローする効果。
「その効果によって、私も二枚ドローする」
それ自体は珍しいことじゃないが、私は〈RDティアーズ〉を使う前から、このカードを好んで使っている。
何よりも艶井鼎からの直伝、そしてアーシャのデッキにも入っているほど、ちゃんと記憶に残っていた。
「今のドローで引けたか⁉」
「いや、まだダメ!」
だが、手札補充に繋がるカードは来ている。
それに、アーシャの方もまだ混乱こそしているが、彼女の中で徐々に天水晴那から遊生澄香へと繋がっているはずだ。
「わたしはカードを二枚伏せて、スタンバイ」
想定通り、アーシャはスタンバイを宣言してゲームを終わらせにきた。
本来なら自信と不安を抱えて、相手の出方に対して覚悟を決める瞬間なのに、今のアーシャには煮え切らない、というか釈然としない気持ちのまま、最後のターンをこちらに渡してきた。
天水晴那 AP1100 VS 古奈アーシャ AP2700
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