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豪氷と流水のぶつかり合い

「私のターン、ドロー!」



 引いた一枚を見る。


 〈リサイクルリンカネーション〉。


 ミュージックカードだけど違う、これじゃない。


 だけど、この氷の張った盤面で凍えずに過ごせるためには、むしろ最適な一枚だ。



「私は手札の〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉を捨てて、ミュージックカード〈リサイクルリンカネーション〉を発動!」



 空のペットボトルが粉砕されて服に生まれ変わる、そんな社会科の教科書の挿絵にありそうなリサイクルイメージのイラストが描かれたミュージックカードを、早速発動させる。



「このカードは手札のコスチュームを一枚捨てることで、手札・デッキから、捨てたカードの持つAP以下の数値を持つコスチュームを一着だけ追加コーデし、さらに差分のAP数値を持つ同じブランドの〈ベルマークバッジ・トークン〉を、その下にアンダーとして追加コーデするか、デッキから一枚ドローする!」



 長ったらしくややこしい効果だが、要するに捨てて、好きな衣装を出した後で、追加でトークンのAPと併せて、捨てた衣装のAPに合わせるか、代わりにドローできるかを選べる。



「私はその効果で〈RDティアーズ ヴァルナーガシューズ〉を追加コーデし、デッキから一枚ドローする!」



 氷付けを免れたトップスとスカートに次いで、このデッキのエンジンとなるAP750のシューズを呼び出してから、手札を新たに補充する。


 この効果で加えたのは〈均衡の謝肉祭〉。


 これまた違うカードだが、まったく使えないものよりかはマシだ。



「そして、手札から〈ポリゴンタトルパンツ〉を〈サーフフェイスボトムス・トークン〉の下にアンダーコーデ!」



 小さい丸鏡の装飾が肴の鱗の様に並んでいるスカートの前に、透明になった一枚のカードが出現し、重なるように接近しながら溶けてゆく。


 これでAP500のスカートに600ポイントが加えられた。



「〈ヴァルナーガシューズ〉の効果! 煌方陣(しょうほうじん)展開!」



 黒い靴を力強く踏み直し、霜で白みがかった芝生に青白い梵字の方陣が展開される。


 素材としてランドリーに送るのは、〈サーフフェイスボトムス・トークン〉と〈ポリゴンタトルスカート〉の二枚。



「コスチューム・ディゾリューション! 現れろ! レアリティPR〈RDティアーズ ヴァルナーガスカート〉!」



 鏡の鱗が生えたスカートから一転して、黒いゴシックパンクスタイルのスカートに着替える。



「そして、〈ポリゴンタトルパンツ〉がランドリーに送られたことで、場に出ている衣装の下に〈シェルベッコチャーム・トークン〉をアンダーとして追加コーデさせる」



 ランドリーに送られた時の起動効果が発動し、私はその効果でトップスとなった〈サーフフェイスワンピ〉に、鼈甲のチャームをつけさせた。



「再び煌方陣展開!」



 もう一度霜を帯びた芝を踏みつけ、薄い氷原の上に方陣を描かせる。


 次に素材にするのは、トップスとチャームのトークンだ。



「コスチューム・ディゾリューション! 現れろ! レアリティPR〈RDティアーズ ヴァルナーガジャケット〉!」



 スカートに次いで出したのは、紅いシャツの上に羽織られた艶のある黒革のジャケット。


 これで私も三着の高レア衣装を揃えることができた。



「よし! 最強の封殺効果を持つジャケットも出してフルコーデまで言ったぞ! あとは奴の衣装にも〈シェルベッコチャーム〉を無理矢理つけさせるだけだ!」



 最後のキーパーツとしてジャケットを羽織った途端に、ビャコが勝ちを確信して燥ぐ。


 〈RDティアーズ ヴァルナーガジャケット〉はフルコーデ状態の時、効果によって生成された〈シェルベッコチャーム・トークン〉には、このカードをアンダーとして重ねられたコスチュームの効果を無効にする――数々の強敵を黙らせた封殺効果を持っている。


 あとはビャコの言う通り、効果を使ってアーシャの衣装にチャームをつけさせることが出来れば、目的のカードを引くまでの時間稼ぎになる。



「〈ヴァルナーガジャケット〉のコスチューム効果を発動!」


「――そうはいかない!」



 こちらの発動を宣言する寸前、アーシャが突然声を割り込ませ、伏せていた一枚のカードを起き上がらせた。



「アクシデント〈フィンブル:ヴェロ〉発生! アイスカウンターを好きな数移動させる!」



 背に乗っていた霜を雪崩のように落としながら起き上がったのは、先が灰色に染まって見えなくなるほど吹雪いている険しい荒野のイラストが描かれたアクシデントカードだった。



「んなあ! アクシデントでこっちのターンにも配置換えができるのか!」



 シューズでもフルコーデ時限定でなんどでも行えたが、これは自分のターンだけの話。


 相手の動きに合わせて氷づけようと思ったら、今のようにアクシデントに頼るしかない。


 しかし、こちらが止められると痛いタイミングを見極めてアクシデントを起動させたところを見ると、やはり感情はぐちゃぐちゃでも持つ勘というか、センスはまだぶれていないようだ。



「わたしは、〈カイラスフリーザー〉に乗った三個のアイスカウンターを、お前の着ている全部の衣装に一個ずつのせる!」



 排出先を命じられたBGMカードから、再び三個の氷塊が射出される。


 まるでピッチングマシーンから飛ばされたボールを無抵抗にうけたような衝撃を胸、腹、脚と三度受ける。


 すると、ぶつけられた氷塊は、弾けずにそのままべたりと衣装に張り付いた。


 それどころか、着弾部から感染したように、衣装全体に氷の結晶が浸食してくる。



「しまったっ! これは!」


 アーシャのエースでもある〈ヒマーシェル〉のトップスとボトムスの効果による、AP半減と効果の無効化の演出だ。


「おわああ! 晴那のコスチュームがぁ! 冬の空の下で野晒しに駐めた車みたいに凍っちまったよぉ! 寝るな、お前達! 寝たら死ぬぞ! 普通体温を保つための服なのに、着たら逆に下がりそうなの本当に皮肉!」


「あんたは見習って少し黙りなさい!」



 衣装達が凍って沈黙しているというのに、手に握ったスキャナーはフリーズ知らずでベラベラと舌と口をフル稼働させてくる。


 とはいえ、氷漬けにされてしまったのは事実。


 相手の効果を封じるどころか逆に封じられてしまっては、せっかくの時間稼ぎもできない。


 このまま勝負を決められては……ただでさえ、勝ってもいけない勝負なのに、目的のカードすらまだ引けていないこの状況は、厳しすぎる。



「カードを一枚伏せて、ターンをチェンジ!」



 苦肉の策。


 一か八かもかねて、私は手札にある一枚を裏側でスキャナーに乗せて、白い芝生の中に埋めた。


 天水晴那 AP1100 VS 古奈アーシャ AP2100



ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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