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澄香とアーシャのなれそめ

 天水晴那 AP1000 VS 古奈アーシャ AP2100



「なんだ? あいつのスキル……今まで出会ってきたアイドル立ち寄りも高性能だぞ……」


「そうなの?」



 ターンを迎えた直後、ビャコがいつもの軽口ではなく重たい警戒を呟く。


 ビャコは異常だと言いたげだが、私にとってはいつもの展開、そんなのを気にしたことがなかった。



「そもそも、特に条件もなく無から生成させるスキルなんて高等中の高等だ。あれじゃあ、まるでプリズムドローだ」



 そういえば。


 私の――正しくはビャコが組みあげたプリズムドローは、絶対に割り込みを許さないトゥルーワードミュージックをプリズムストリームから作り出す生成系スキル。


 一方で、過去に同じ元素からBGMを生成するスキルといえば、ビャコのスキルを解読して独自にくみ上げた福山美祿(ふくやまみろく)の相棒セリュがいた。


 その美祿ちゃんでも、かなりのプリズムストリームの収集と限定的な発動条件を要求されていたが。



「Q-key.333の開発者の中に、俺達よりも上等のスキルコードを書けるプログラマーがいたのか……それとも、あいつ自身とプリズムストリームの共鳴適正が高いのか……よくわからんが、もしそうなら、あいつはただ者じゃない! 何者なんだあいつは!」



 ランク3や【蒼極天】の二つ名の時点で大分警戒していたが、いきなり披露されたスキル演出をまえに、今度はビャコが冷静を失う。


 何者なのか。それを他人から問われて、私は口が歪むほど歯がゆくなった。



「何者なのか……それを探すために、あの子はアイドルをしているのよ」



 声を押し殺して、ビャコにだけ聞かせるように、私は小さく伝えた。



「どういうことだ?」


「……古奈アーシャはね、孤児だったの。まだちゃんとした名前を与えられていない頃から、両親が既にいなかったそうよ」


「そんなプロフが……じゃあ、あいつがアイドルをやっているのって、まさか?」


「ええ、大舞台に立って、生き別れた両親に自分の存在を教えること。それが彼女の強さの秘訣でもあったの」



 ただ、本人には最初からその目的があってQ-key.333に入った訳では無かったそうだ。


 気がついたらアートマンストラに拾われて、言われるがままにエンプリスを始めていた……自分の意思すらなかった始まりだった。


 そのときは、入所したての私とさして変わらないレベルのランクしかなかった。


 ただ、一人ぽつんと黙々としていたところを、艶井鼎と出会って弟子入り……もといナインボールにグループ入り。


 それから、上京して田舎者と周りに嘲笑われて孤立していた私も一緒に引き入れたことで、私達は出会った。


 二人揃って先輩から、笑顔になる魔法を教えてもらった。


 最初は無口でほとんど喋らなかったアーシャが、やがて心を開いてそんな話をしてくれた。


 きっかけは、どうしてアイドルとして頑張れるのか、の話題の時だ。


 そのとき私は「応援してくれる家族や故郷のため」と語ったとき、転じて家族や故郷のことにふれた。


 ただ、そう話したアーシャには、寂しいとか悲しいとかじゃなくて、淡々と自分には応援する場所も応援をしてくれる人もいないと、まるで物を持っていないと言うくらい無関心だった。


 それはそれで悲しい。


 そう思った私は、アーシャに「家族に見つけてもらうためにトップアイドルを目指そう」と言ってみた。


 思えば、あれからだ。


 その提案を聞いてから、アーシャの中で何かが変わったようだ。


 目がキラキラするようになって、表情も豊かになって……気がついたら、あっというまにランク3に到達していた。



「なんでその話、お前が知ってるの?」



 小声で話していたのに聞こえていたのか、アーシャは固まるほど動揺していた。


 その問いに、私はただ鼻を鳴らしていなした。



「……ただ、世界で3番目になっても、未だに両親は見つからずかぁ。まったく、この世は非常だなぁ。――いだッ!」



 言いたいことは分かるが、あまりのもデリカシーのない反応を腹にも据えずに口にするビャコに思わず私が手刀制裁を加えた。


 だが、スキャナーになって固くなったのか、勢いで殴ったこっちの手も結構痛かった。



「……お前が奴を気にかける理由がわかったぜ。それに、あいつもあいつで、お前の事をすごく慕っていた理由も。脱退させられて、あんなに落ち込んでいた理由も。朔真の言葉を信じて、お前に会うために来た理由も」



 失言の反省なのか、ビャコが珍しく穏やかな声になって話しかける。



「……もしも、全てが解決したら、アーシャを〈アクアクラウン〉で働かせても良い? そのときは……私も一緒に」


「ああ、そのときは、勇作達と喧嘩してでも説得して叶えてやるさ! そのためにも、この作戦を必ず成功させるぞ。嘘だと思っていたことが、実は本当だと伝えるためにも!」



 生きたアーシャのスキャナーを回収する目的は変わらない。


 だけど、この決意を交わしてくれたビャコの中では、単なる保護から再会の約束に変わった。


 スキャナー状態だけど、真剣なまなざしで見つめる猫顔が重なって見えた。


 本当にこいつは……心を強くしてくれる点では頼りになるマスコットだ。



「私のターン、ドロー!」


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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