ちべたいアイスカウンター
【蒼極天】古奈アーシャの愛用する〈二ヴリティスノー〉の得意戦術。
それはビャコも察したとおり、衣装達が持つ共通効果を何度も発動させ、様々な効果を引き起こす特殊カウンターを積み重ねるタイプ。
カードやバースト負けが存在するエンプリスにおいて、もう一つ別の管理しなければならないカウンターという概念があるが故に、扱いが非常に難しい形態だが、それを難なく扱って圧倒できたからこそ、アーシャはランク3にいる。
今のように、溜まったカウンターを条件に、続けて手札から出したのはトップスの衣装。
デザインはシューズと同じだが、下地の色はブルー。
そのトップスが出たと言うことは、様子見などではなく最初っから全力の構えだ。
当然、〈ニヴリティースノー〉ブランドを冠するこのトップスも、登場時効果で自身にアイスカウンターを置く効果を持っており、ついでにBGMも連動して、さらにもう一個乗る。
ACE COUNTER 05
「そして追加コーデされた〈ヒマーシェルトップス〉の効果! 一ターンに一度、アイスカウンターを一つ使うことで、デッキから〈ニヴリティースノー〉ブランドのコスチュームを手札に加える! わたしは、カウンターを一つ使い、〈ヒマーシェルスカート〉を手札に加える!」
画面上の「ACE COUNTER」から数字が一つ減り、対価を受け取ったのを察したスキャナーが、デッキの中腹から一枚のカードを押し出した。
「そして、まだわたしにはカウンターが二つ以上あるから、今手札に加えたスカートも、トップスみたいに自分の効果で追加コーデできる! 来て! 〈ヒマーシェルスカート〉!」
トップス、シューズについで、とうとうボトムスの部分にも衣装が加えられた。
「くっそ~、後攻一ターン目なのに、奴の方が一足先に全部の衣装を着揃えやがったか。しかもかなりの盤石だな」
「スキルの恩恵もあるとはいえ、この展開力の早さには圧倒されるわね……」
「でもフルコーデ揃えたとしても、各衣装のAPは一枚につき500で、合計1500ポイント。あのブランドがローAPであることを代償に侵攻する妨害型なら、こっちにも部があるぞ」
「まさか! それっぽっちの戦略で済むブランドじゃないわ。おまけにAPが低くても、スカートが出たことで衣装とBGM側も、共通効果でまたカウンターが蓄積される!」
実際に、これでアーシャの元に合計六個のアイスカウンターが積まれた。
「準備は整った……。まずは〈ヒマーシェルトップス〉のフルコーデ効果!」
「来るわ!」「やっぱりフルコーデ効果か!」
手をかざして衣装に命じるアーシャの動作を見て、私は改めて身構える。
「このカードのAPを、アイスカウンターの数×100ポイントアップさせる!」
アーシャが積み上げたアイスカウンターの数は六個。
合計600ポイントアップし、アーシャの総APは2100まで上昇する。
「んなぁ、やっぱりこういう展開か!」
『合計APが低い』と『効果一強』はイコールで成立しない。
それを体感したビャコが唸る。
「続けて、〈パールヴァスノウシューズ〉のフルコーデ効果! このシューズを履いている限り、わたしは何度もアイスカウンターの置く場所を変えられる!」
「カウンターの移動までできるのか?」
「わたしはBGM〈カイラスフリーザー〉に乗ったもののうち二個を、一つは効果で使い切ったトップス、もう一つはお前の〈サーフフェイスワンピ〉の上に乗せる!」
これでアーシャ着る衣装に一つずつカウンターが乗ったことになり、ついでに私の方にも一つだけお裾分けされる。
相手にも一個渡したが、盤上では個数そのものは減っていない。
「オイオイオイ、こちらにも乗せてきたってことはまさか……」
佇むBGMカードのイラスト部分から、一個の氷塊が放たれる。
それが私の胸にぶつけられると、崩れるどころか、服の表面に埋め込まれた。
乗せるというよりも、これでは植付けだ。
だが、せっかく自身が積み上げたアイスカウンター惜しげも無く受け取ったことで、まさに氷を直で渡されたような悪寒がビャコの中に走る。
「そうはさせない! 効果の対象にとられたことで、〈サーフフェイスワンピ〉の効果!」
振り分けられたアイスカウンターが及ぼす影響を骨身に染み込ませていた私は、対策としてワンピの効果で反抗する。
「このカードが効果の対象になったとき、その効果を無効にする」
心なしか菌みたいに氷を浸食しかけていた氷塊が、布地からジワジワと剥がされ、やがて元いたBGMカードをめがけて飛んで帰った。
「その後、ワンピはトップスとなり、ボトムスに〈サーフフェイススカート・トークン〉を追加コーデさせる! この方法で追加コーデされたコスチュームのAPは、相手の着ている同じカテゴリーのコスチュームと同じになる!」
アーシャの身にはAPが500のトップスとボトムスがある。
よって、こっちの着ているトップスとボトムスも同じ数値になる。
「くっ、だったら! シューズの効果でもう一回……!」
「――おいたところで、カウンターを無駄に消費するだけよ」
防がれたことでシューズの効果でカウンターを乗せようとするアーシャを、私はあえて忠告して止めた。
「……?」
これから彼女がするだろう展開を見透かしていた私の言葉に、アーシャが固まった。
「あんたが乗せようとしたアイスカウンターは、〈ニヴリティースノー〉ブランド以外のコスチュームに乗せられると、別の効果に浸食される」
手を返さず、人差し指をアーシャに向けて伸ばしたまま、私はさらに言葉を続ける。
「まずトップスには、アイスカウンターがコスチュームのAPは半分にする効果があって、そのスカートの方にも、アイスカウンターが乗っている限り効果が無効にされる上に、対象になったら退場される……どちらも氷付けにされる永続効果がある。あんたは、それを狙ってたんでしょ、お決まりの展開だもの」
「な、なんでそこまで知ってるの!」
「何度も対戦してきたブランドだからね。ただ、一回もまともに勝ったことなかったけど……」
思い出し自嘲で口が笑えるかと思ったけど、なかなか口角がつり上がってくれない。
これでは挑発にもならず、ただ敵の特徴を知っているだけの天敵としてアーシャの目には映っているだろう。
変なの。
そう言いたげなまなざしでアーシャがこちらを訝しむが、こちらの忠告通りカウンターの移動は行わず、手札から二枚を抜き取った。
「カードを二枚準備して、ターンチェンジ」
天水晴那 AP1000 VS 古奈アーシャ AP2100
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