海綿の黙衣〈ヴァルナーガポリフェワンピ〉
「〈ヴァルナーガポリフェワンピ〉のさらなる効果!
デモンスポンジ・クリング!」
今までの礼を返すように、私は手を広げて衣装の効果によって生み出された丸くて黄色いスポンジ状の球体を編み出し、それをインディめがけて投げつける。
「このカードが〈RDティアーズ〉の効果で追加コーデされた場合、あんたの場を二カ所まで使用不能にする!」
「ま、まさか!」
投げつけられたスポンジ玉が、インディの頭にぶつけられ、まるでアフロのカツラをかぶせられたように頭にくっついた。
「あんたの備えているカードには、衣装やAPに反応しても、場そのものに干渉する効果を防ぐ効果はない!
よって、リンケージコーデで呼び出された〈ヴァルナーガポリフェワンピ〉の効果は通り、あんたの唯一の空きゾーンを封じる!」
ファンキーでキュートで、イメージが損なっている笑える格好だが、これで厄介なシルクハットを被ることは出来なくなった。
「クッ! アクセサリーゾーンを封じられたら、〈ファントムシルクハット〉の効果が発動できない!
〈ヴァルドラミスワンピ〉は超電磁状態で守られるけど、〈ファントムシルクハット〉を出してフルコーデ状態にならないと、シューズどころか、〈超電磁クレイモア〉も発動することができない……ッ!」
蟻の穴から堤も崩れる。
その諺を言い表すかのように、衣装でもAPでもない「場」という、ほんのわずかに見えたほころびを啄んだことで、インディ・オーラの立てた牙城が崩壊した。
「さらに! 手札からミュージック〈災厄の亀裂カラミティーキッコー〉を発動!」
インディ・オーラの戦略が崩れたことで、心置きなくスキルで生成したカードを発動させる。
満を持して発動させたのは、焼いて罅の入りまくった亀の甲羅に禍々しいオーラを纏った、歴史の授業でやった亀甲占いをモチーフにしているイラストのカードだ。
「手札と場の〈RDティアーズ〉コスチュームをランドリーに送る事で、その枚数分、相手のAPを500ポイント下げる!」
本当に最後の一枚である〈ヴァルナーガワンピ〉とシューズについたチャームの二枚をコストにしたことで、目の前でそびえていたカードが、要のない二枚の巨大な鋏に姿を変えた。
「私がコストにした枚数は二枚! よって、あんたのAPは合計1000ポイント下がる!」
私はそれを握りしめ、武器のように構えてインディ・オーラに肉薄する。
「これが……【神姫殺し】天水晴那の――いや、本当のエンプリスのプロフェッショナル、アイドルのタクティクス」
腕はあるが特撮俳優である自分と、エンプリスでのし上がったアイドルの圧倒的な技量を前に、インディ・オーラ……いや印東虎胡が畏敬と感服の籠もったまなざしのまま佇む。
そんなインディに向かってためらうこと無く、私は片方の鋏を引き絞って斬りかかった。
「――あうッ!」
直接APを500もダウンさせる一撃。
切りつけた一閃がインディの胴体にストレートに入り、血の代わりに電子の塵を体から舞わせながらのけぞる。
「年貢の納め時だぜぃ、このぉ鼠小娘ぃ!」
変に歌舞いて締め台詞を吐くビャコに合わせて、私ももう片方の鋏を構えて引き絞る。
「さらにもう一度、効果発動!」
〈災厄の亀裂カラミティ・キッコー〉による二閃目が、インディ・オーラを討ち取った。
頭から離れるスポンジ、無残にも跳ね飛ばされながら衣装が崩れていくインディ・オーラ。
目の前で負け倒されてしまったヒーローに悲痛の叫びを上げる観客達。
「超電磁アフロ怪盗インディ・オーラ! あいやいやぁ、召し捕ったりぃ~!」
インディ・オーラの皮が剥がれ、外れたスポンジのカツラごと印東虎胡がステージ上に落ちた瞬間、決着を告げるブザーが遊園地中に響き渡った。
天水晴那 AP2230 VS インディ・オーラ AP1800
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