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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
最終章 「テラース」大海戦篇
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0061 信じるに足る理由

 この時代の打撃部隊同士の戦いは、以下の通りになっている。

 打撃部隊の中枢たる「双胴強襲艦」を狙って、お互いに対艦ミサイルを撃ち合い、お互いにそのミサイルを防ぐべくイージス艦による防空戦を行う。防空網をすり抜けた対艦ミサイルは、機甲部隊の人型有人操縦ロボット兵器により要撃する。お互いにミサイルを消耗し尽くした後で、今度は「双胴強襲艦」に載せられてきた戦姫、ロボ、巨神同士での戦いとなり、負けた方が退却する。

 イージス・システムなる防空網は、独力での防艦能力が無きに等しい「原子力空母」や「双胴強襲艦」を守る為に進化し続けたシステムである。解放戦争の時は、飽和攻撃にて空母3隻を一挙に失う事になったが、今度はそうはいかない。

 ドクトリン通りに、ソメリト合衆国総軍大海洋打撃部隊もまた、ミサイル発射装置のあるすべての船に命じて、艦対艦ミサイルを打ち上げた。今度はこちらが飽和攻撃にて敵の「双胴強襲艦」を沈めるのだ。


「……どういう事だ?」

 その違和感を最初に抱いたのは、戦闘指揮所にて、画面越しに戦況を睨みつけている艦隊司令官である。敵、レイド・サム防軍打撃部隊の艦対空ミサイルの数は尋常ではない。「決戦」を志向しているのであれば、艦対艦ミサイルも当然持っている筈だが、これでは対艦ミサイルを積み込むスペースがない。最初から対艦ミサイルを装備していないのだ。

 という事は、あの打撃部隊は、レイド・サム防軍の総力をかき集めた部隊は、全部陽動部隊。こちらの目を引きつける為の。あの戦姫が、クルセイド・ギャリンゴ戦姫中尉の言っていた通りだ。あの艦隊は囮で、敵は恐らく海中を進んで、こちらの本拠地、パールハーバー洋上基地を攻撃するつもりなのだ。

「どうします、閣下このまま戦闘を続けますか」

「バカか貴様」

 司令官は当然の反応を返した。

「パールハーバー洋上基地を破壊されたら、この海戦に勝っても意味なんて無いんだぞ。敵打撃部隊を叩いている間に、守るべき基地が廃墟にされたら、本末転倒だ!」

 司令官は薄暗い部屋にて叫ぶ。

「止めだ! 止め、止め! 基地に急ぎ引き返せ!」


 クルセイド・ギャリンゴ戦姫中尉は、教科書通りに対応した。即ち、戦力の集中である。ここを破壊されたら、もう基地機能が停止する場所、動力炉に来ていた。こちらの戦力は敵の半分。海中から浮上してきた水中スクーターの数を見て、クルセイド戦姫中尉はこの作戦を立案した人間を、おそらく自分と同じ戦姫であろう人間を、高く評価していた。矢張り、オリジナリティと言うのは、やろうとして出来るものではないと言う事実を再確認していた。

 このパールハーバ洋上基地には、大勢の民間人も働いている。悪い表現にはなるが、それは「一定」の効果があるはずだろうが、元々飛び道具を使わずに得物でもって戦う戦姫である。剣、槍、矛、斧という原始的な武器での格闘戦である。

 しかも、この動力炉は、原子力だ。万が一、爆発なんてしたら大海洋の3割近くが汚染されて、戦争どころではなくなってしまう。


 クルセイド戦姫中尉は、現場指揮官としてはベストと言える作戦を取っていた。民間人を囮にしてでも「時間稼ぎ」をする。当然、責任問題になるが、自分の詰め腹1つ切って済めば、それで結果さえ良ければ良い。

 しかし、100人の戦姫達は容赦しなかった。またたく間に基地は外から見ても赤い血に染まり始めていた。これが「ベストな判断」である。「時間稼ぎ」をするにしても、もう少しやり方はあったんでは、そう後悔するのは後で良い。動力炉を守る為ならば、必要な犠牲だ。

 大海洋の3割を汚染させるくらいならば、非人道的だろうとなんだろうと、誹りは後で受ける。優先順位を考えたら、残酷な話であるが、そういう話になる。

 そうこうしている内に、レイド・サム国の戦姫は、動力炉近くに集まりだしている。40人と100人とでは、勝負にならない。しかし、人質は、もう一つある。この原子炉そのものが、人質である。


 無論、このクルセイド戦姫中尉の考えている事は、波和之キリコ戦姫中尉にも分かっていた。この洋上基地に居る「敵」と言う「敵」は全て斬って捨てた。残っているのは、この動力炉だけだ。そして、こいつを吹っ飛ばす為に爆弾だって用意してきたのだ。

 どうする。原子炉を含めて、爆破するか。あるいは、それだけはどうしても避けて通りたい、どちらの気分でもある。どうするべきだ。最終的な責任は誰が取ってくれるのだ。どうする。

「……吹っ飛ばすよ。例え汚染されても、私達にはやらなくちゃいけない事がある」

 キリコ戦姫中尉は、100人分の爆薬をここで使おうと集め始める。


 一方、40人の戦姫と共に、原子炉を守るソメリト合衆国総軍もまた、悩んでいた。

「このまま原子炉に海水を流し込めば、核爆発は起こらない」

 但し、この基地は二度と使用不能になる。あるいは、原子炉を無くしたら次の原子炉を作って、交換するのも手であるが、その為の予算は、恐らく調達できない。どの道、破壊されても、壊しても、最終的にこの基地は失われる。

 どうする、どの道、このパールハーバー洋上基地はおしまいだ。敵の罠にまんまと引っかかって、今正に死に瀕しているこの基地に、有終の美を飾るのには、どうするべきか。

「海水を入れましょう。それから、武装解除よ。降伏よ」

 反論の余地は誰にも無かった。核汚染。それも世界中に繋がっている海での汚染は、国境も関係なしに全世界に広がる。一度それを許してしまったら、もう二度と他国から信頼も信用もされなくなる。

 まずはこちらを追い詰めている敵に対する降伏の意思表示の為に、白いハンカチを振りながら、ソメリト合衆国総軍の戦姫は両手を上げて出てきた、正にその時である。

 基地全体が揺れる。あいつら、この原子炉を壊すつもりか。いや、そんなつもりはない。洋上基地の「基礎」となる柱に仕掛けたらしい。不気味な揺れと衝撃、それはまさしく「地震」のようであった。どうでもいい、今はともかく。

「逃げるのよ!」


 彼女達が思っていた以上に、パールハーバー洋上基地はよく出来ていた。湾岸施設機能、弾薬庫、ドック機能、飛行場機能、兵站設備、全て破壊されていたが、原子炉だけは無事であったが、洋上基地としての機能は完全に失われていた。

 基地からの「SOS」を聞きつけて、急ぎ引き上げてきたソメリト合衆国大海洋打撃部隊は、その惨状を見て、この戦争は、また自分達が負けたのだという事実を確認していた。

 軍人の死者はたった5名。しかし、基地にて働いていた民間人500名は無惨な姿で見つかっていた。圧倒的な劣勢にて戦う事を余儀なくされた守備隊40名の戦姫部隊に責任を問う様な事はなかったが、艦隊司令官は潔く職を辞していた。

 結局、パールハーバー洋上基地に駐留していた打撃部隊は、ソメリト合衆国西海岸の海軍基地に逃げ込んでいた。守るべき洋上基地を失ったのに、今更復讐戦を挑むわけには行かない。幾ら戦争とは言え、「私的な戦い」は御法度である。


 VLSのミサイルの在庫は空っぽ。ミサイル駆逐艦が2隻、敵の攻撃を防ぎきれずに撃沈。こちらの被害はそんなものである。パールハーバー洋上基地の破壊と言う当初の目標は達成された事を考えると、お釣りが来る戦果である。

 


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