0062(完結編) ガラスの舞台
財団Nが打ち上げた惑星「テラース」の文明社会の最初の宇宙ロケットに乗って、宇宙から「テラース」を見下ろす。美しい。しかし、脆そうな、否、脆い青さが、逆にこれを美しく見せていた。
「小国が1つ傾くレベル」とまで言われた予算を注ぎ込んで、そして、4,5回の失敗を経て、人工衛星を打ち上げ、犬を送り込み、次はいよいよ人間と言う所にまで漕ぎ着けた。
やはり、「テラース大海戦」に鐚一文払わないで宇宙開発に集中したのは正解だった。100年前ならいざ知らず、今や地方大国にまで落ちぶれたソメリト合衆国が、世界相手に戦争を仕掛けても勝てる筈がない。恐らく、近い将来には破産するに違いない。そうなる前に、軍縮をして、軍に傾いている人と予算を民需に振り向けなければならないが、そんな胆力のある政治家は与党には勿論、野党にだって居ない。相変わらずの「ソメリト・ドリーム」を唱えて、「さらなる発展「果てしがない軍拡」を公約に掲げるだろう。
財団Nにとって、そんな事はもうどうでもいい。新しいフロンティアは、海には無い。あるとすれば、それはこの宇宙だ。このガラス張りのステージで殺し合いを続けるのは、あまりにも危険だ。ガラス細工の様に繊細で、美しい星に依存するのは、年老いた母親に依存して生きるのと同じくらいに危険である。
「「テラース」は脆い。皆で守りましょう。戦争はもうおしまいです」
それが、この惑星「テラース」最初の宇宙飛行士が残した名言であった。
宝田之カミキ作戦中佐は、旗艦「おうみ」の甲板にて、レイド・サムの雄大な自然に対して眺めながら、手にしていた新聞に目を通す。
「財団N 世界初の宇宙飛行士を宇宙へ送り出す」
「ガラスの星を守ろう」
カミキ作戦中佐は、記事の文書を読みながら、眼の前の自然を眺めて、胸の内にてこの戦争の本当の勝利者を見抜いていた。
この戦争に勝ったのは、財団Nだ。レイド・サム国も、ソメリト合衆国も、旧来の古い戦争から未だに脱皮できずにいる。確かに、海は最後のフロンティアではない。宇宙にこそ、次のフロンティアがある。こんな小さい星の海でポコポコ殴り合っている内に、ゼータ商工会が残した財団Nが一歩先に進んでしまっていた。
あの星の光の中にこそ、人類の未来はある。この大海戦の本当の勝利者は、財団Nだ。
……まぁいいか。俺は単なる軍人。スーパーヒーローになって怪獣を倒す程の力はないし、その領分にはない。もう仕事はやり尽くした。次のボクシングの試合の配信時間には、休暇は取得できそうであった。
完




