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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
第4章 日本動乱篇
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0050 戦闘可能

 宇宙空間とは、まっこと戦争には不向きな場所である。少し力を入れたら、その方向に身体がくるくると回る。何か衝撃を加えられたら、宇宙の果てまで飛ばされる。爆発なんて起きたら、無数の破片が飛び散って敵も味方も死んでしまう。本来、戦場なんて選ぶのは贅沢なものであったが、この場合は贅沢と言えば、そうでもない。

 しかし、崖っぷちまで追い込まれたら、人間と言うのは変わらざるを得なくなる。宇宙空間での戦争は出来ない。となれば、別の方法を用いなければならない。惑星の地上と同じ環境であれば、戦争はまだ可能なのだ。


 「レイド・サム連邦」の偵察船は急いで引き返していた。民間船が度々連絡を断ち、そのまま行方不明、あるいは破壊される事態が多く報告される航路にて、偵察船が見たのは、高速艦を改造したらしい「大日本帝国」の軍艦であった。後方に報告しようとした時に気が付かれて、もう逃げるしかなくなってしまった。

 しかし、何という脚の速さか。偵察船も高速を発揮できるが、敵に発見された場合に逃げる為にも、可能な限り高速を発揮できるように出来ている。その偵察船に、追いつこうとしている高速艦。恐らく機関をより強力なものと交換したようだ。

 それでも、高速艦はこれ以上の追跡を断念して、今度は足早に去っていった。連邦の支配圏に深く踏み込めば、囲まれたら逃げようがない。偵察船が持ち帰った高速艦の外見から考えられる事実は、連邦軍の度肝を抜くものであった。


 この映像から考えうるに、「中型高速艦」の機関を改造しているか、あるいはより速く飛べる機関と交換して、速力を倍近く引き上げている。もし同サイズで通常の機関を積み込んでいれば、偵察船はあの高速艦を振り切れた筈だ。

 また、船外作業員の外出用ハッチ周辺に、本来ならば不必要な装置が付け加えられている。それは即ち、溶接用バーナーである。これは、海賊船や不審船の臨検の際に用いられる侵入用の装備である。

 以上の点から、この高速艦は敵の船に接触して、船外から侵入して、内側より船を制圧する事を目的とした軍艦であると判断されます。


 会議室に集められた「レイド・サム連邦」の軍幹部のお歴々は、その魔改造されたと思しき帝国軍の高速艦の動画を見ながら、嘆息して言う。

「成る程、確かに船の中ならば、酸素もあれば重力もある。戦争するのに不自由の無い環境が揃っている」

「「宇宙船」の内部へと侵入して、これを制圧する。宇宙空間で戦うよりはやりやすいだろう」

「まったく、余計にややこしくなっていくな」

 前回の「神田那波決戦」にて、7割の戦力を一度に失った軍幹部達は、帝国軍のやり方に一定の評価を与えていた。成る程、これならば宇宙船を爆破して、その破片でやられる事はない。それどころか、敵の船も奪えて一石二鳥の妙案である。

「早速、こちらでも真似してみるか」

 それは決して皮肉でも嫌味でもない。本心からの言葉である。これは敵ながら有効な戦法であるし、優れた戦法であればこちらもやらないに越したことはない。

 これは、宇宙規模のゲリラ戦となるだろう。しかし、やらざるを得ない。いや、こちらはより過激なやり方で、徹底的にやるべきだ。

 その場での議論は、その方向に向かっていった。帝国軍を出し抜くのに、手段を選んではいられない。こちらに残された戦力では、大規模な戦闘は出来ない。であれば、こんな通商破壊戦の様な真似も、やれるだけやるべきだ。


 帝国軍は、自分達の新しい戦法を察知されたと言う事実を受け入れていたが、とは言えこちらの戦法に対抗する手段はまだ持ち得ていないとしていたが、その後、それが油断であり隙でもあった事実を突きつけられていた。

「こちらが用意した高速艦は100隻近くある。これを一網打尽にするのは不可能に近い。余程上手い手を打ってこない限り、暫くは対策の必要はない」

 この発言は、裏を返せばその場にいた軍人全員の心理を余すことなく表現していた。彼らにはこの戦法「しか」無かったのだ。他に作戦なんて考えられない。100隻以上の高速艦でもって、敵が用いる航路を引っ掻き回して、連邦軍とそれを支える市民の疲弊と厭戦気分を醸成させる。それがこの戦法の根幹にある着想であった。

 あの7割の戦力を喪失した戦いの後で、貧者の戦術として、あくまでも「一時的措置」として許可した作戦案である。もう環境が整った惑星での戦争は、終わりを告げた。新しい環境に早く慣れてなければ、適応できずに死ぬだけだ。


 ワープ航法により、人間は無制限とも言える脚を手に入れていた。それでも、決められた航路を使うことだけは止めなかった。その航路は別に秘密でもなんでもなく、関所もなければ税関もない。

 だらこそ、大型の軍の輸送船が「そこ」を通っても、そしてその輸送船の側面に連邦軍のマークが描かれていても、他の民間船は気にもとめなかった。しかし、高速艦だけは、この大型輸送船を狙っていた。まるで捕食者が攻撃のタイミングを狙うかのように、ギリギリまで距離を詰めると、あとは一直線に近づいていき、外部作業員の作業用ハッチに仕組んだ大型チューブを伸ばして、輸送船の船壁に磁石で接触すると、溶接用バーナーにて穴を開けて、そこから潜入する。あとは、艦橋まで行って指揮系統を制圧してしまえばいい。

 いつもの通りの流れであり、いつもの通りに成功すると思っていたが、船内に突入した高速艦の船員達を待っていたのは、この時を待ち構えていた連邦軍の戦姫であった。

 賢いやつは、みんな先に降伏していった。引き際を弁えていない船員は、戦姫の剣の錆にとなって消えていった。


 まずは一隻。これからどんどん狩って回るぞ。連邦軍は意気込んで、次々と大型輸送船は勿論、民間船からでも帝国軍の高速艦を狙っては制圧していった。しかし、10隻ほど仕留めたところで、帝国軍も高速艦に戦姫を乗せる事を覚えていた。


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