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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
第4章 日本動乱篇
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0049 3割

 何事も、思い通りにはいかない。人生は勿論、経済も、政治も、そして戦争も。お互いにたてた計画が台無しになる。あるいは失敗して大損害を被る。その逆に、上手くいきすぎて想定外の大戦果をあげる事もあるくらいだ。経済でも、目標を前倒しで達成する事もあれば、政治でも選挙にて大逆転する事だってある。

 彼らが今正に直面している状況も、想定外の出来事だらけにて始まった、とんでもない「決戦」であった。それは、「日本動乱」を象徴する「混乱」と「偶然」により始まっていた。


 元を辿れば、臨時大統領・阿戸蒜菜は戦略攻撃と言う名のジェノサイドを行おうとして、「レイド・サム連邦」を構成する星を端から端まで、満遍なく燃やし尽くすつもりであったところに、出くわしたのは「レイド・サム連邦」の宇宙船団であった。

 「戦争は地上でやれ」と言うのが、この時代の鉄則であった。元々宇宙空間での戦闘も経験していなかった彼らは、手近な星に降りていった。「敵が来たらひたすら逃げろ」と言われていたが、連邦軍にはそれが出来なかった。帝国軍の数は、こちらに匹敵する大軍である。お互いに、全戦力がここに揃い踏みだ。

 逃げろ? こんな美味しいシチュエーションで? 何よりも、守るべき民草を後ろにして、逃げろだと? 無理だ。やるしかない。

 同じ事は、帝国軍も思っていた。戦略攻撃なんてやっている暇で、後ろから連邦軍に斬りつけられるのはわかりきっている。敵に背を見せて、前の市民を殺すなんて、そんな器用な真似は出来ない。結局、ここでやるしか無い。

 かくして、お互いに当初の計画には一切ない武力衝突が、惑星「神田那波」にて始まっていた。


 市民は、空から降下してくる連邦軍と帝国軍双方の宇宙船を見て、急いで地下や屋内に逃げ込んでいた。敵も味方も、軍隊は関係無しに殺していく。そんな修羅場は、これまでの人間の歴史の中で何度も繰り返されてきた蛮行と言うよりは、「恒例行事」である。「戦争」が齎すストレスと疲労、そしてその手の本能的な暴力は、自分達より弱い存在に向けられる。絶対に抵抗しない、あるいは出来ない相手が常に選ばれる。そこにはヒーローも居なければ、兵隊も居ない、居るのは人間という生き物のみである。

 市民は、それを知り尽くしていた。幾らプロパガンダを駆使しても、人の目から目へと、耳から耳へと、伝わり続けた伝説を、人々は決して忘れない。

 帝国軍も連邦軍も、お互いに人口密集地帯にて着陸する程の事はしなかったが、惑星間国家の持てる物量と最大限の動員を行った人的資源は、見る者を不安にさせるものはなかった。

 戦姫軍、機甲軍、巨神軍、お互いに揃えられるだけの数を揃えた。なんでこんなに出来すぎたタイミングで両軍が出くわしてしまったのか。それはつまり、こういう事である。


 帝国軍は、最初から市民を標的とする「戦略攻撃」を行うべく、そしてその際に戦力分散による各個撃破を避ける為に全兵力を一度に動かしていた。そして、統一機構・日本にて有数の有人惑星である「神田那波」を標的に設定していた。

 そして、連邦軍は当初の予定通り、侵攻してくる帝国軍の消耗を待って戦うつもりであったが、連邦全域に散らばっていた戦力を集結させるのに、この星を選んでしまっていた。まるで少女漫画の王道の様な展開にて、帝国軍と連邦軍は偶然にて出会ってしまっていた。

 どちらも逃げるつもりはなかった。連邦軍は市民に犠牲を強いる作戦に反発しており、帝国軍も市民を狙って攻撃する作戦に反発していた。


 彼ら、彼女は勇ましかった。強く、勇敢で、忠実であった。眼の前に居る敵に対して、一歩も引かずに戦っていた。

 しかし、双方にとって絶対に必要な戦いではない。つまり、ここで発生する犠牲は無意味であり、無駄死にである。単なる消耗戦でしかない。元々それを避ける為に知恵を絞っていたのだが、天はその小賢しいやり方に怒り、連邦と帝国の双方に罰を下した。


 屍山血河。それはこういう風景の為にある言葉であった。双方共に7割の戦力を失い、戦いはようやく終わって、生き残った3割は青息吐息の状態で、宇宙船に戻って帰還していた。

 双方共に考えたのは、自分達の指導者の怒り心頭となった顔である。13才の天才児、ギフテッドが、この惨状をどう見るのか。罰するべきは現場指揮官や中堅指揮官であろうが、そんな結構な人材は殆ど皆殺し状態になって残っていない。


 7割喪失! 7%ではない。7割である。10人中7人が殺された計算となる。臨時大統領・阿戸蒜菜と暫定指導者・滂沱玲音にとって、この全く持って無意味で無駄な戦いで失うべき数字をなかなか受け入れられないでいた。

 生き残りが齎した情報を聞いたら、その怒りも少しは収まるのだが、完璧に収まるのは不可能であった。どちらも、顔面蒼白の末に顔を真っ赤っ赤にして、唾を飛ばしまくって怒りと呪いの言葉をまくし立てていたが、それこそ時間の無駄である。気持ちを踏みとどまらせて、お互いに同じ言葉を口にする。

「人的動員は行わない。何がどうなろうと、絶対に、だ。このまま残りの戦力でどうにかするんだ。それが出来なければ、我々には戦争をする資格も権利も無いっ! こんな馬鹿げた理由で味方を7割失う無能には戦争をする資格も権利も無いっ! この目の色が変わるまでは、何がどうあろうと人的動員は行わせない、絶対だ!」

 行わないではなく、行えないのだ。今回の戦闘で失われた人員を補充し、軍を再建しようとしたら、一体どれだけの血と金が必要になるものか。そうなれば、臨時も暫定も、無能な指導者の烙印を押される事になる。残り3割でも、やれる事は幾らでもある。

 連邦と帝国、双方の軍幹部は俯いたまま、顔をあげられなかった。人に会わせる顔がなかったからだ。こう言う遭遇戦は、一度や二度はあるものだと考えても考えすぎではないが、そんな遭遇戦で総兵力の7割を失うなんて、誰が予測できようか。

 運が良かった3割の生き残りは、自分自身の命の為にも、早急に今後の戦術の見直しを行わなければならなかった。敵にも同じ数の損失が出ているだろうから、お互いに残った3割での戦いになる。それは、あの合戦に勝るとも劣らない、凄惨な戦いになるに違いない。


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