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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
第4章 日本動乱篇
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0048 基本戦略

 惑星「テラース」に設置されたレイド・サム国改めレイド・サム連邦の行政府には、同連邦に加盟した惑星の代表や運営の中から引き抜かれて編成された政府と軍部は、早速「大日本帝国」との戦争計画を練り始めた。ただ闇雲に攻めたり守ったりでは、いずれ戦力を使い果たして潰えてしまう。

 攻めるにせよ守るにせよ、最低限の目標が必要である。惑星・塔京に居を構える「大日本帝国」まで積極的に攻め込むべきか、あるいは相手からの攻撃を受け流して後に慎重に反撃するべきか。

 お互いに「距離の暴力」とされる兵站線はワープ航法により無効化されている。重要な拠点は、お互いに首都しか無い。生産拠点や工業地帯も、全宇宙に散らばっており、全部虱潰しにしていたらキリがない。唯一の重要拠点は首都星のみだ。

 暫定指導者・滂沱玲音は、まずは自分の意見を言うより先に、各惑星より集まった人材からの議論を出し尽くすくらいに話し合わせる。

「積極的にこちらから攻めるべきだ。長引けば、無駄な消耗戦に陥る事になります」

「ここは1つ防御に出て、敵の疲弊を誘い、疲れ切った所を決戦でもって打ち倒すべきである」

 議論百出、出し尽くされたところで、積極派と慎重派の2派に分かれていた。完全に議論が煮詰まった所で、玲音暫定指導者は自分の意見を述べる。

「積極的に戦っても消耗戦になる。かと言っても、防御に回って疲弊を誘っても決戦する頃にはこちらも疲弊している。敵軍撃破を至上目的とする戦争にて、どちらも敵に利する悪手である」

 では、どうあがいても、絶望しか無いのか。

「大丈夫だ、現有戦力でも、「大日本帝国」には勝てる。「距離の暴力」が無いのは、お互い様である」

 結局、それで何が言いたい。

「「防御にて、敵の疲弊を誘うところまでは良い。しかし、必ずしも戦う必要はない。この際は、首都星の機能をレイド・サム連邦全体に分散配置して、こちらはひたすら逃げの一手を打てば良い。兵隊を動かすというのは、それだけで金もかかれば疲れもする。ここは1つ、逃げの一手だ」

 それでは、こちらの連邦を構成する星全てが燃やし尽くされるのを待つのか。

「そこまで待たせるつもりはない。そうなる前に、こちらが動けば良い。帝国軍は全戦力を投じて、こちらの首都星と思しき星に攻め込むだろうから、空き家同然の帝国の版図は攻め放題だ。その時こそ、疲弊した敵と戦う機会が出てくる。その時が来なければ、こちらとほぼ同数の戦力を持つ敵と戦ってはいけない。物量にて互角と言うのは、実はかなり危機的な状況と言える。同数で戦っても、同じ数が減り続ければ、いずれはお互いに戦力が底をつく。そして、和平なり休戦条約なりで戦争は一旦止まるが、今後も未来永劫休戦し続けるとは思えない」

 ここで、臨時大統領・阿戸蒜菜をひっ捕らえて、戦争犯罪者として裁判にかける。「大日本帝国」を柱の1本も残さずに滅ぼす。そして、統一機構・日本を再興する。それが最終目標である。

「何か質問はないか」

 玲音の質問に答える者は、1人も居なかった。それは即ち、了解の沈黙である。彼らは、自分達が暫定指導者として仮に仰いでいる13才の少年が、間違いなく「戦争の天才」である事実を受け入れていた。


 首都星・塔京にて建て直された大統領府にて、臨時大統領として椅子に座る阿戸蒜菜は、以前の大統領府よりも丈夫で硬い装甲に守られた会議室にて、自分が「使える」と判断して適材適所にて行った人事にて集められた、その道のスペシャリストが、次々と自分の考えや意見を出し尽くすまで出し切っていた。

 臨時大統領・阿戸蒜菜は、全員が疲労の極に達したところで、自分の意見を口にする。

「諸君の意見は出し尽くしただろう。議論はここまでだ。あとは決めるだけだ。こちらから攻めるか、あるいは守りを固めて待ち続けるか。俺の考えでは、どちらも結果は見えている。こちらが負ける」

 負ける。どういう意味なのか。

「俺達には、真正面から力ずくで攻め込んでも攻め抜ける力はないし、逆に真正面から守っても守り抜ける力はない。戦力比は互角。であれば、どちらを選んでも、真正面からぶつかり合えば同じ数を減らし続けて、やがては同じ数まで減って戦う力を失って、負けるか、あるいは引き分けに終わる。そんなのは何の意味もない」

 では、どうするべきなのだ。

「武力で真正面からでは駄目、同じ様に真正面から守りに回っても駄目。どの道、武力では物事の解決にはならない」

 ならば、また「斬首作戦」でもするのか。

「それもそれで一手だが、レイド・サム連邦の暫定指導者は、あくまでも暫定指導者であり、他に人材が幾らでもいるのだから、もう「斬首作戦」は使えない。もっと楽に、そして簡単にやるぞ」

 しかし、もう「距離の暴力」も無ければ、「兵站」も心配無い状況で、もっと楽に、そして簡単にやるのにはどうするのか。

「戦争の主役は誰か、国家を作っているのは誰か。それは市民だ。市民が居なければ、戦争も出来なければ、経済も回らない。この戦いを決めるのは武器ではない。民衆がどちらを支持するか、それで決まる。市民の支持を得ていない行政には、誰も税金も労働も命も差し出さない」

 では、プロパガンダ作戦でしょうか。

「戦略攻撃だ。最初から市民を標的として、敵が来たら全力で逃げるのみ。それを繰り返していけば、レイド・サム連邦の市民は徐々に、だが着実に戦意も士気も失われる。そうすれば、戦争どころではなくなる。その時点で、我々の勝ちだ」

 ハッタリの天才とはいえ、天才は天才だ。ギフテッドとして生まれてきて、育ってきた奴は、発想自体がぶっ飛んでいる。最初から市民狙いの「戦略攻撃」であれば、こちらの犠牲も少なく、敵の市民の犠牲は大きくなる。

 だが、それはこちらの希望的観測だ。戦意や士気が挫けるどころか、相手の宣伝次第では、絶好のプロパガンダの材料となる。そこをどうするべきか、話し合われないままに、この日の会議は終わった。


 かくして、2人の天才が示した戦略案は出し尽くされた。そして、2人は「現実」とは何処までも人間の思い通りにはならない事実を強かに思い知らされる事になる。経済だって世論だって、そして人間自身だって思い通りに動かないのだ。思い通りに動かせるのは、それこそ「神様」のみだ。


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