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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
第2章 大京反乱事件篇
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0025 「桜花」作戦

 一点突破。

 可能であれば、定石通りであれば、包囲下に置いての兵糧攻めが正しいが、今はそんな暇はない。4隻の旧式戦艦を纏めて沈められて制海権を失い、完全に混乱の極致にある賊軍を名乗る革命軍から桝沢飛行場を奪還して、その戦意を完全に挫くのには、十重二十重に首都・大京に設けられた「賊軍」の陣地を一点突破して、これを制圧するしかない。

 この結論に至るまで、充分な時間で議論が為された訳では無い。分かっていたのは、自分達にはもう熟慮する暇なんてないと言う事実のみである。内戦にかこつけて、他国が攻めてくる可能性は充分にある。そうなれば、この国は改革・開放路線をする直前からやり直すことになる。今は兎に角、1分1秒でも時間が惜しい。制海権を失って動揺している賊軍に対して、こちらが用意した全兵力でもって、首都圏唯一の軍用飛行場、桝沢飛行場を制圧する。

 無論、犠牲を払うのは百も承知だ。だが、待っていたら他国からの干渉を受ける可能性が高い。そうでなくても、人質同然の大京都民に無用の犠牲を齎すかも知れない。犠牲を払ってでも制空権を奪うのだ。制海権は既に奪った。その為にこちらの空軍力は根こそぎ動員した。今現在、反革命軍に対して航空支援が出来る機体は1機だって無い。犠牲を払う可能性とは、そう言う事だ。

 巨神軍を先頭にして、機甲軍、陸軍という順番で、桝沢飛行場までの最短ルートを突っ走り、これを制圧する。その後で、総理官邸にて陣を敷いている「賊軍」に対して、海軍の艦隊が砲列を並べて、降伏勧告を行う。この大京決戦のクライマックス、「桜花」作戦と呼ばれる戦いにて、反革命軍が描いた青写真はその通りになっている。この写真通りに事態が流れるかどうかは分からないが、与えられた時間内にて、少ない選択肢の中から選んだ最適な手段がこれである。

 全戦力を動員しての、飛行場への一点突破。これしか無い。しかし、単純な銃剣突撃では犠牲を増やすだけだ。その為に、最新鋭の装備を初実戦にて使う事になった。一点突破を行うのには、最適な装備である。作った当初は、「税金の無駄遣い」と言われて煙たがられていたが、いざ使うとなると、これ程頼りになる装備は無い。


 「賊軍」こと「革命軍」は、その装備を看て唖然としていた。その巨神部隊は、「鎧」を着ていた。それも、装飾性は一切無く、戦艦に用いられる装甲よりは薄いものの、機甲軍のロボットや陸軍の戦車の主砲から身を守るのには充分である。大京の狭い国道を、2列で縦列を作りながら、その後ろを機甲軍の4足歩行の機甲ロボが走り、更にその後ろには最新鋭の八七式戦車が、歩兵を乗せて走る。それでも乗り切らない歩兵は、兎に角走らせる。その上空を守る為に、戦姫軍が翔ぶ。

 攻撃を受ける者にとって、恐怖以外の何物でも無い光景だ。鎧を着た巨神部隊は、それ自身が恐ろしい凶器である。今回、「賊軍」は巨神部隊を勧誘しなかった。狭くて建物の多い大京では、巨神部隊は身動きがとれない。聖華大陸やヴィクター大陸の様な広い陸地ではない、大都市のど真ん中では、瓦礫の山を築く覚悟が無ければ、全高20メートルの巨体を持つ巨神の出番は無い筈だった。

 「賊軍」は小銃は勿論、機関銃や野戦砲を用いて、これを防ごうとしたが、この鎧を着た20メートルの巨人を殺すのには、重砲が必要なのは明らかであるが、首都・大京にて重砲なんて用いたら、「反革命軍」だけでなく、街の建物も纏めて壊すと言う意思表示に他ならない。

 ようやく先頭の1列目が、度重なる攻撃を前に命尽きた頃には、全行程の半分以上は過ぎていた。この時、反革命軍が用意できた巨神部隊は36人。鎧を着た全高20メートルを着た巨神を打ち倒すのには、「賊軍」の火力は明らかに不足していた。桝沢飛行場を拠点としている第6飛行師団の関心は、今の所は海に、大京湾に向けられている筈だ。その隙に、一点突破で飛行場まで侵攻し、飛行場を占領する。無論、駐機してある「賊軍」の航空機は全部ぶち壊す。勿体ないなんて言っていられない。兎に角、この一撃にて「賊軍」の戦意を完全に挫くのだ。


「既に「敵」軍は桝沢飛行場から見えるところまで近づいています、せめて爆装して爆撃機だけでも離陸させろと言いますが、それは無理です、もう1分も経たない内に「敵」の巨神部隊が雪崩れ込みます!」

「駄目だ、死守だ、絶対に明け渡すな! その飛行場が最後の切り札なんだ、死守だ! 良いな!」

「そんな」


 事、言われても困る。と続けようとした「賊軍」の目の前に、33人の巨神部隊が雪崩れ込む光景が広がっていた。空荷で良いから飛ばさせてくれと言う現場の声に対して、爆装させて翔ばせと言う後方からの声の間でせめぎ合っていた双発爆撃機、八八式爆撃機が20機並んでいる滑走路に、全高20メートルの巨神が次々と突っ込んでいく光景は、「悪夢」という表現を絵に描いて額に入れた様な光景であった。その巨神部隊の後から、次々と機甲軍の4足歩行ロボが飛行場へと突入していく。その後ろから、更には戦車部隊のお出ましだ。

 最後尾から文字通り「走って」ついてきていた歩兵部隊が駆け込む頃には、飛行場は既に瓦礫の山で、滑走路にて待機していた爆撃機は勿論、格納庫や管制塔も全て破壊されており、歩兵部隊は「革命軍」を名乗る「賊軍」の旗を下ろして、レイド・サム公国の旗を掲げていた。

大京湾の沿岸部にて、戦艦2隻、巡洋戦艦4隻の、合計6隻の戦艦がズラリと並んで、総理官邸に向けて主砲を向けた頃には、「革命軍」は自分達のしでかした事について、最終的な、そして最大の決断をするべき瞬間に立ち会っていた。


 何故だ。何故我々は負けたのだ。

「大抵の戦いは、戦う前から勝敗が決まっている。と言う言葉もありますが、今回もまた戦う前からこうなる様に定められていたのでしょう」

 そんな、まるで他人事の様に言うとは、我々は貴殿の言葉で起ったのだぞ。今更そんな無責任な発言が許されると思っているのか。

「だとしたら、どうするのですか」

 だとしたら、お前らは破廉恥な詐欺師だ。どうしようもない犯罪者だ。純朴な乙女を騙して誑かす洒落男と同じだ。

「何とでも仰って下さい。元々、博打だったのですから、今更負け惜しみと言い訳を並べても仕方がありません」

 ……で、これからどうなる。

「関係者は全員逮捕、軍事法廷にて裁かれるでしょう。勝ち目は万が一にもありません。それが嫌ならば、今すぐその場で頭を撃ち抜く事をお薦めします。では、短い間でしたがご苦労様でした」


 「大京決戦」は、こうして終わった。「桜花」作戦にて「反革命軍」が打った博打は、大当たりであった。犠牲は生じたが、許容範囲内である。

 そして、隣接する各国軍は、準備していた出兵を大急ぎにて中断し、平時の体勢へと戻していた。そう言う意味では、間一髪の戦いであった。これからは、民主政権を如何に再生させるかであるが、それは「反革命軍」の役割では無い。現に、「反革命軍」はそれから半年後に事件後初の内閣が組閣されたのを機に解散していた。

 但し、一度失われた信用は、それでも戻らなかった。


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