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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
第1章 メロス・ベクトルスタン戦争篇
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0018 狐を殺せ

 意外な事に、「現場」となっている地域住民からの協力は、かなり手広く受けられていた。マロニスティラ・ズィークトが音頭を取ってはじめた暗号名「托卵」と呼ばれる作戦、自分達に非協力的な街々を次々と毒牙にかけるレンヴェル・マニストを誘き寄せて、これを「生死を問わず」始末するのが、「托卵」作戦の趣旨である。

 当初の計画では、自分達で街を作り上げて、そこへ誘き寄せる計画であったが、地元住民と交渉した際、むしろ協力的な姿勢を示して、自分達が暮らしている街を丸ごと提供すると申し出ていた。作戦を担当していたマロニスティラ・ズィークトは、その気持ちを良く理解していた。ベクトルスタンの戦姫の家系に産まれて、そこから逃げ出した彼女には、このセントラル・イースト地方の片田舎で暮らす人々の感じる様々な感情が、良く理解出来ていた。

 そうでなくても、国が2つ消滅して、権威も秩序もあったものではない。メロス・ベクトルスタン戦争にて、衛星国化・植民地化が続けられている。その中で、理性や自制心は失われて、毎日が生きるか死ぬかだ。「デザートイーグル」、その勢力は日に日に大きくなっているが、流される血と涙も増え続けている。

 人は「正義」や「悪」で動かない。それ以前に、「命」が無ければ話にならない。人間、普通に働いて、普通に家を持ち、普通に結婚して子供の1人や2人と暮らすのが、一番の幸せなのだ。そこには「正義」も「悪」も無い。金持ちや政治家は、そんな「普通」を保障するのが仕事なのだが、全部逃げ出した。こうなれば、「悪」である筈のソメリト合衆国でも、何でも良いから「正義のヒーロー」を気取るテロ組織を始末して欲しい。それが人情と言うものだろう。

 マロニスティラ・ズィークトは、協力を快く受け入れた。カーディアス国とメロス国の国境沿いにある小さな町が選ばれて、「ZETA任務部隊」の戦闘部門の兵隊が、住民と入れ替わりになって、待機していた。

 「デザートイーグル」は、レンヴェル・マニストは必ず現れる。メック・ダンク隊長は勿論、他の任務部隊の面々も、それを確信していた。そして、もう1つ確信していた、これが最後のチャンスだと。

 ソメリト合衆国が一方的に「対テロ戦争」と呼んでいる「メロス・ベクトルスタン戦争」に置ける、最後の敵である「デザートイーグル」の最期が、近づいていた。しかし、これが最後のレンヴェル・マニストでは無いのは、誰の目に見ても明らかであった。第2、第3のレンヴェル・マニストの萌芽は、このセントラル・イースト地方のあらゆる所に埋まっており、それに水を撒いている連中は幾らでもいる。

 こいつが治まり、普通の暮らしが戻るまで、何世代かかるか分かった物では無い。それでも、100年かかろうと200年かかろうと、1度投資したからには回収出来る様になるまでやり続けなければならない。セントラル・イースト地方は勿論、石油不足にて頭を抱えている他国もまた、戦争に関するリスクが大きくなった現実を目の当たりにしていた。


「こちら狐。托卵へ。客が来た。どうぞ」

「こちら托卵。狐へ。了解した。歓迎の準備に取りかかる」

「こちら狐。托卵へ。客の規模は大きい。航空支援の準備も行われたし」

「こちら托卵。狐へ。具体的な数字で伝えられたし」

「その街を取り囲む様に、ざっと1200人」

「せ、1200? しかも、こちらを包囲下に置いているのか。事前に情報が漏れたのか」

「こちら狐へ。托卵へ。いざとなれば、レンヴェル・マニストの抹殺を度外視して、包囲網を突破するのだ」

「こちら托卵。狐へ。了解」


 最初、「デザートイーグル」の交渉役と言う建前で、この街を訪れたテロリスト達は、この街がソメリト合衆国の軍が住民と入れ替わったとは思えなかった。恐らく、自軍の中でセントラル・イースト地方の出身者をかき集めたに違いない。

 移民の国だからこそ出来る荒業だ。街の指導者が現れても、全く「敵」には見えなかった。でも、大丈夫だ。自分達の背中には、「金髪の魔女」と呼ばれる様になったレンヴェル・マニストが、背中に巨剣を背負って、相手に圧をかけている。

 彼女が居る限り、こちらは負けない。指導者は、頭を垂れて交渉役に述べる。

「今や飛ぶ鳥を落とす勢いの独立国「デザートイーグル」への協力は、一切躊躇する所ではありません。どの様な要望にもお答えしましょう」

 にこやかな顔であるが、しかして表情は見えない。これが「どの様な要望にお答え」する人間の顔では無い。それについて何か言おうとした時、指導者役の老人が叫ぶ。

「狐を殺せ!」

 街のありとあらゆる建物から、銃器で武装した男達、そして警棒を持った戦姫が複数人、現れていた。

「男どもはお前達がどうにかしろ。私は警棒持ちの戦姫を殺す」

 レンヴェル・マニストはそう言うと、銃撃戦がボチボチ始まってきた街にて、警棒を持つ戦姫、即ち軍人ではない戦姫が2人、こちらにやってくる敵を前にして、背中に背負った巨剣を手に持って、それを2人の戦姫、エミリー・プラスとマロニスティラ・ズィークトに剣先を向けて言う。

「私の命は安くは無いぞ」


 どの面下げて、そんな台詞がお前の口から出てくるのだ。マロニスティラは思わず、そう感じてしまう。これまで交渉に応じなかった街々で、次々とジェノサイドを行い、命を安く扱い続けた、お前の口からどうしてそんな台詞が出てくるのだ。

 格好付けやがって。これからお前がそんな生意気でえらそうな台詞が出てこない程に叩きのめさせてもらう。マロニスティラ・ズィークトは、この一戦にて命を落としても良いと決意する。


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