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DECIDE YOUR DESTINY:ZETA  作者: 北村タマオ
第1章 メロス・ベクトルスタン戦争篇
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0015 大剣と警棒

 その晩、1つの街が消滅した。

 独立国「デザートイーグル」を名乗るテロ組織への協力を拒否した、ダロス国の街である。

「我らは必ず世界を手にする」

 だから協力しろ。

「金は出す。外敵が来たら守ってやる。インフラ整備や、学校の建設も手伝ってやる」

 だから「こちら」につけ。悪いようにはしない。


「そうですか。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの「デザートイーグル」の申し出なのですから、これを断るのは天啓に反するとでも言うつもりでしょう」

 が、しかし。

「お断りさせて頂きます。他所の街々や、我が国の政府からも、色々と良からぬ噂を聞いています。麻薬の密売、都合の悪い人間に対する嫌がらせ、または暗殺、協力関係を結んでも一向に約束は守らない。要するに、あなた方はこのセントラル・イースト地方にて、そう言う立場の連中なのです。ソメリト合衆国は嫌いです。ですが、それ以上にあんたらの方が余程危険で悪質です。分かったか、ゴロツキ!」

 分かった。この世界で一番必要ないのは、この街だ。


 街が燃えていた。かつてデルタ・ビルが燃えていた様に、その街もまた濛々と炎と煙を噴き上げて燃えていた。家、人、家畜、畑、車、全てが轟々と燃え滾る炎の中に焼べられていた。周囲にはそれらが燃える際に立ちこめる異臭が、嗅覚を甚振りぬく。正しく、この世の地獄だ。

 燃え盛る街の中心にある広場に、1つの旗がはためいていた。「デザートイーグル」の旗だ。そして、その前に一本の大剣が突き刺さっている。


「今度の犠牲はダロス国とカーディアス国の国境沿いにある小さな街、ペドネスティアです。1100人の住民は全員死亡、街にあるものは家から小皿まで全て油をかけて燃やされました。周辺の街の住民からは、銃声と悲鳴、それに街が燃える煙が見えたと言う証言が多数ある。そして、何よりも、こいつだ」

「……この大剣」

「レンヴェル・マニストの持っていた大剣に間違いない。奴は生きていた。そして、今は「デザートイーグル」を率いている。「ヘルベルダー」が事実上分散して、拡散している今、奴は次の「巣」として「デザートイーグル」を選んだらしい」

「これが、最初なのかしら」

「ああ、そうだ、これまで「デザートイーグル」に対する協力を拒否して焼かれた街には、必ずこの大剣と旗が残されていた。あの独立宣言からかなり経つが、セントラル・イースト地方でも「デザートイーグル」に協力している連中は、そこまで多くはない。賛否両論、とでも言うべき状態だ」

「「デザートイーグル」か、ソメリト合衆国に対する、我らが祖国に対する当てつけにしか聞こえないな」

「感想はいいから、議論しろ」

「あの大剣、オーダーメイドでしょうか。あるいは市販品でしょうか。ヴィクター大陸で似た様なものが売られているのを見た事があるけど」

「ああ、実在する。フェイター社製のXLサイズ。あれ一振りで、バルムラサスM1戦車の半分の値段だ。安くは無い」

「それをこんなにも大盤振る舞いで使って、余程大きなパトロンを見つけたのかしら」

「使って?」

「全てのジェノサイドの現場にて押収した大剣には、人間の血と脂が付着しています。DNA検査でも人のものであると確認が取れています」

「存在しない筈の人間が、実在の人間を斬り殺している」

「ポエムが詠みたければ、他所へ行け。こちらはやりたい様にやられているのが実状だぞ。「デザートイーグル」を止めるのには、現地住民の協力が絶対に必要だが、それは現状全く見込みが無い。しかし、あの地域の砂漠はあまりにも広く、戦線が広がりすぎている。しかも、ベクトルスタンの「ヘルベルダー」残党掃討の為に、20万の兵隊があの土地に派遣されている」

「しかも、アッシュハウスが推し進めたい民主化は、選挙の見込みすらたっていない。議会を開いても議員が集まるかどうか。集まったとして、公平・公正な選挙にて選ばれるかどうか」

「メロス国については?」

「相変わらずのレジスタンス運動が繰り広げられているが、やっている事は「デザートイーグル」と殆ど変わらん。協力を拒めば殺す、受け入れても約束は守らずに頂けるものは頂いていく。そしてかき集めた予算で武器や火薬、燃料を集めて、我が軍の兵隊や兵器を殺して壊して火に焼べる」

「これが戦争なんだな」

「だからポエムは」

「では、ポエムではなくロジックで話します。目標を絞るべきです。ベクトルスタンやメロス国まで全部衛星国化したとしても、我々の赤字は確定です。仮に我々が手を引けば、その時点で民主的な政権もまた命脈を絶たれます。今は兎も角、「デザートイーグル」とレンヴェル・マニストの抹殺にのみ注力するべきです」

「セントラル・イースト地方には民主主義が根付かない、とでも言うのか」

「本人達に意志もやる気も必要性も無いのに、嫌がる相手に無理矢理仕込んでも駄目です。新たな火種を作るだけです。今更になってこんな事を言うのも気が引けますが、彼らの国は彼らのやり方で治めさせるのが一番です」

「本当に今更だな。ベクトルスタンでは、第1回の全国統一議員選挙が控えている。メロス国でも、以前からの親ソメリト合衆国勢力を焚きつけて、議会制民主主義を作らせようとしているが、矢張りこちらも全くやる気がない。だが、今になって「もう一度はじめから」と言う理屈は使えん」

「……1つ、良いかな」

「メック・ダンク隊長、どうぞ」

「皆、議論百出、出し尽くしたところで、こいつを一言に纏めさせてもらう。無駄だ。こんなに無駄な議論は無い。ただ、我々が目的を定めるべきだと言う部分だけは評価出来る。そろそろ次の大統領選挙が迫っている。政権が交替しても、この「ZETA任務部隊」は存続させると言う確約は、野党とは結んである。政権交代となっても、この任務部隊は残る。ソメリト合衆国は、その総力をあげて、「デザートイーグル」を潰す。今はそれだけ考えていれば良い。それと、ポエムを詠むなとは言わん。ただ、もう少し時と場所をよんでくれ。悪いとは言っていない、そこは勘違いするなよ」


 エミリー・プラスは、会議室から出てくると、そこで交わされていた話を思い返す。この戦争は完全に無駄骨だった。もしあの同時多動テロを事前に察知して阻止していれば、こんな羽目にはならなかった。

 あの時、捨てた剣に変わって、今持たされているのは警棒だ。戦姫の力さえあれば、防弾仕様の車も吹き飛ばせる凶器である。

 同じ戦姫出身のマロニスティラ・ズィークトは、この警棒が自分が家から持ち出した先祖伝来の剣よりも気に入ったらしく、野球の素振りの様に何度も振っていた。人間の使う武器は、単純で使い勝手が良い事が大前提にあるべきだ。マロニスティラは、警棒を振り回しながら言うのだ。

「何なら拳1つでも戦い抜くのが戦姫だからね。でもまぁ、このくらいが調度良いわよ」


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