97. 毒物混入事件の犯人は誰だ!?
俺達二人は大海龍ヴォルアトスがこの船を襲ってくる理由を調査していた。
船倉の倉庫から海に毒物を流し込んでいるのを発見し、恐らくだが船長が関わってる可能性が濃厚だ。
二人で隠れていたが応援が到着したらこちらが不利になるのは明らかだ。
何故このような事をしているか、船長を問い詰めて打開するしかない。
「貴方は何故海に毒物を流しているんですか?」
不意に声を掛けられた船長はこちらへ振り返り驚きの表情で俺達二人を見つめた。
だが直ぐに冷静な顔を取り戻し、こちらへと問いかけてきた。
「嬢ちゃん達誰だ?ここは部外者意外立ち入り禁止だぞ」
「質問に答えてください、何故毒物を海に流すんですか?」
「何を言ってるんだ。これは頼まれものだ中身は知らんよ」
「その海に流し込んでいた液体は魔法で強力な毒物だと調べがついています」
「…魔法で毒物だと調べただと?」
「ええ、何故ヴァルアトスがこの船を襲ってくるのか原因を調べていたら、その毒物に辿り着きました。そして倉庫に入って来た貴方は他にも大事な荷物があるのに真っ先にその箱を調べにきました、恐らく心当たりがあるからでしょう?」
「そこまで解ったのか…だが一足遅かったな」
奥の階段から沢山の足音が聞こえてくる。
先ほど船長が呼び寄せた船員達が武器を備えて纏まって倉庫へと降りてきた。
仲間の姿を見た船長は全員に対してこちらの二人を捕まえるよう指示を出す。
「おい!この女二人を捕まえろ!!倉庫に忍び込んでた不届き者だ!」
「なんだって?おい全員で捕らえるぞ!!」
バレてしまったなら仕方がない。
こうなったら全員を抑え込んで真相を追求するしか無い。
人数は六人程度か、普通に戦えば余裕だがここは彼女に任せよう。
「アトレシア、全員を傷つけずにしばらく動けないように出来る?」
「お任せください!お安い御用です!」
自信満々にこちらに伝えてきたアトレシアは剣を鞘ごと抜き正面に向ける。
構え終わった瞬間、眼にも見えない速度で船員たちのみぞおちに鞘と柄を使い正確に当てて動きを止めていく。
あっという間に全員を組み伏せて残りは船長一人だけになる。
「なんなんだ、そのバケモノじみた強さは…だが俺も海の男だ!負けられねえ!」
船長は自身の腰に装備していた曲刀を抜き俺に向かって襲いかかってくる。
だが間髪挿れずにアトレシアが相手の剣を自身の武器で受け止め船長のみぞおちに自身の拳を当てて動きを止めた。
「ぐはぁ!」
気絶した船長は床に倒れ込む。
さて人気のないところで尋問しようとするか。
他の人達に聞かれると話しづらい事もあるだろうから、どうしようか。
船長室にでも連れて行くか。
「アトレシア、船長を抱えてくれる。船長室に向かおう」
「わかりました」
背中に船長を抱えて、階段を登り船長室と思われる部屋へと入る。
アトレシアに彼の目を覚まさせるよう背中から刺激を与えるよう伝えて覚醒させて貰う。
「うっ…ん?どこだココは…」
「ここは船長室ですよ、聞きたいことがあって連れてきました」
「姉ちゃん達一体何者だ?」
「ただの渡航客ですよ、ヴァルアトスの行動を調査しているだけです」
「ヴァルアトスの行動?アイツは見境無しに攻撃しに来ているだけだ」
「私は船員達からの話を聞いて、ヴァルアトスは高い知能を持っているのがわかりました。この船を攻撃している理由があると思い調べたら倉庫の毒物を見つけました、これが原因じゃないんですか?」
「…………」
船長は黙秘を決め込んでいる。
何か言えない理由でもあるのだろうか。
こういった時は普通に説得しても駄目なパターンが多い。
相手の自尊心を尊重しつつ引き出して喋らせるのが常套手段だ。
「貴方達海の男たちは、海や仲間たちを大事にするんじゃないんですか?しかも船長なら皆からの信頼も厚いはず、それなのに仲間たちを危険に巻き込むような行為をして皆を裏切るんですか!?」
船長はこちらの言葉を聞いて鋭い眼光で睨みつけ、そして視線を反らした。
少し諦めたような口調で自身の行動について話し出す。
「ワシだってこんな事やりたくねえんだよ!!だけどなあ逆らうと……」
船長は何か言おうとして口を噤んだ。
これは何か訳アリだな、恐らく強請られてる可能性大だな。
事情聞いて助けれるなら、力になってやるか。
「先ほど見た通り私達は手練れの冒険者です、もし困っている事があれば力になれるかもしれません、事情があればお話しください」
「冒険者だって…?あんたらがか?」
「はい、相棒はもの凄く強い剣士で、私は強力な魔法使いです」
船長はしばらく考えて事情を話してくれた。
家族が誰かに拐われ、手紙が届いた。
家族を無事に返して欲しければ言うことを聞けという要求。
港に置いたある荷物を積んで、その中に入ってる液体をある海域で流す事。
液体の中身はしらなかったが、なんとなく毒だとは察していた。
船長は本当はやりたくないのに脅されて無理やり脅されてやっているのか。
家族を人質に取るって卑劣なやつもいるもんだ。
しかし、何故船を襲わせるような行為をやらせるんだ。
「その攫った相手って見当はつかないんですか?」
「見当はついているが、確証がない。恐らくだがライバルの海運ギルド『バルタッツァ』の仕業だと思う」
「誘拐してまで、従わせる理由って思いつくことはありますか?」
「恐らく大陸横断線の利権を乗っ取りたいんだろう。何度かこちらのギルドに横断便の売却を迫られていた。こちらの船に損害を与えて仕事が出来ないようにするのが目的だろう」
「街の領主とかに依頼して犯人の家探しとかも出来ないんですが?」
「もし家探しして何もでなかったら領主様の立場が危うくなる、相手も貴族連中との繋がりがあるからおいそれとは動けないんだよ。それに長い間世話になって来た人に迷惑はかけられん」
なるほど、領主には恩義があるから不安定な情報だけでは動けない。
でも、このままだと全員を危険に晒す可能性もあり板挟み常態か。
それなら何の柵がない俺達が動けば解決出来るかも、やってみるしかないな。
まず船長の家族が捕らえられている場所はどこだ。
自分たちの倉庫や民家等では見つかると立場が危うくなる。
簡単に手を出せない場所…恐らく警備が厳重な、相手ギルドの偉い人がいる屋敷の可能性が高いだろう。
「大体の話はわかりました、家族を助け出すのに私達がご助力しましょう」
「あんた達がか?ワシらを助けても自分たちの利益にはならないだろ…信頼していいのか?」
「助ける代わりに一つ条件があります。私達の国と海運ギルドで国交と商売をさせていただきたいです」
「なんだって?そんな事でいいのか…あんた達一体何者だ…?」
「今は一時的に冒険者になっていますが、私はガンギルダ西方にあるパルテセスという新興国家の領主と繋がりを持つパルテと言います。」
「ワシは、海運ギルド副長の『コンラッド』だ」
「それで、どうでしょう?こちらは農産物と引き換えに海産物との取引が欲しかったのです。お互いにメリットがあると思いますが」
「わかった、ギルドにはワシから話そう。すまない…恩にきる」
「取引成立ですね、それでは船が上陸した後の家族奪還作戦を立てましょう」
船長と港町オルバステに到着した後の動きについて打ち合わせを行う。
まずは、犯人探しだ。
毒物の搬入は夜間誰も居ない時間に荷物が置かれている。
誰が貨物を置いているかを突き止め追跡して証拠を集めてもらう。
こちらは船長たちに頼むが本当に信頼がおける人に依頼するようお願いした。
次に拐われた船長の家族がいる場所だ、これは恐らく相手ギルドの長がいる屋敷にいる可能性がある事を伝えた。
家族の救出は身元が知れていない俺達二人が担う。
もし、バレてもこちらのギルドに関係ない事を貫くように船長に頼んだ。
最後に倉庫での出来事は船員二人が寝てたので間違って入り込んだと口裏を会わせて貰って打ち合わせは済んだ。
今日は夜遅いのでここまでにして上陸前にまた再度作戦を練ろう。
──翌日
船内が朝から慌ただしく、足音が響いていた。
しばらくして、船員の声が聞こえてくる。
「ヴァルアトスが出たぞーー!!」
朝からの船員の叫び声で叩き起こされる。
俺は着のみ着のままで、上部甲板に向かうことにした。
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