93. 魔王軍統括参謀シエルとの戦い
神滅の秘宝の入口に現れた魔王軍統括参謀シエル。
俺はある事を思いつき二人に四天王との戦いを任せてその場から逃げだす。
予想通りシエルもこちらの誘いに乗って追ってきた。
彼女を誰もいない砂漠のような場所に誘い込み地上へと降りる。
「どこに逃げても無駄よ、今回は逃さないわ。」
さて、こちらの狙いを悟られずにどうやって相手に攻撃を受けさせるか。
少し会話して相手の注意を引きつつ情報を引き出そう。
「シエル貴方の正体は堕天使なんだってな」
「あら、どこからその情報を仕入れたのかしら?貴方の側にいた反逆天使が明かしたの?」
「ああ、ライラがこの世界の事を教えてくれた。聖教国家と魔王軍が手を組み世界の人達を苦しめてる事などな」
こちらの言葉を聞いて、シエルは僅かに驚きの表情を見せた。
しばらくして口元を歪め何故か笑いだす。
「フフフ…貴方は何も知らないのね。側にいる天使も情報統制の縛りに逆らえない…良いことを聞いたわ」
「どういう事だ?なんだ情報統制って!?」
「いいわ、死ぬ前に教えてあげましょう。魔族が何のために生まれたのか既にご存知でしょう?」
「魔族は天使に対抗するために生み出された存在って事か?」
「そう、貴方達は天使を滅ぼすために魔界の神が作り出した生物。だから私たちは魔族へ対抗するための器を作りだした。貴方達が堕天使と呼ぶ存在よ」
「魔界の神が堕天使を操って世界に干渉しているのではないのか?」
「魔界神が?バカバカしい話ね。私たちを従えられるのは八人の神のみ、ただの概念存在に干渉など出来るわけ無いわ」
八人の神?魔界の神が概念存在?初めて聞いた単語だ。
恐らくライラは嘘を付けないけど、情報統制の縛りがあり正しい事実が語れないということなのだろか。
ならばシエルの今語っている内容が恐らく真実なのだろう。
色々思考を巡らせてる間に相手からの戦いの狼煙があげられる。
「そろそろお喋りは終わりにしましょうか、では死になさい『漆黒の残光』」
シエルが両手を天に掲げ羽が飛び散った瞬間、全身から物凄い悪寒を感じた。
ほんの一瞬だった、彼女の周囲からまるでレーザービームの様な光線が大量にこちらに襲いかかる。
俺は空に大きく飛び上がり間一髪で相手の攻撃を逃げのびた。
「アラよく避けたわね。一撃で死ぬと思ったのに」
相手の攻撃は堕天使の羽を使ったスキルだ。
ただの羽が多彩な攻撃を繰り出して来て全く読めない。
「それではこれはどうかしら?『漆黒の剣撃』」
空に飛び散る漆黒の羽に光が収束し剣を作り出す。
今度は大量の剣による刺突攻撃が俺を襲いかかる。
「魔王の覇気!」
魔法障壁で迫りくる剣を防御するが前回受けた羽の攻撃より強力だ。
あっという間に防御壁が崩されて何本かの攻撃が体をかすめて傷を負う。
大丈夫、まだかすり傷程度だ。
シエルは戦闘苦手とか言ってたが全然そんな事はない。
流石に魔王軍統括だけあって、めちゃくちゃ強いじゃないか。
このまま攻撃を逃げ続けるだけではジリ貧になるのは目に見えている。
反撃するんだ、何でもいいから相手の動きを止める事だけを考えろ。
「爆裂雷!」
巨大な雷によってシエルに対して叩き込む。
だが何事ももなかったようにシエルは平然と立ち尽くす。
予想通り、こちらの魔法攻撃が全く通じていない。
だったら地獄の業火で燃やしてやる!
「地獄炎!」
相手の全身が巨大な炎に包まれて燃え盛る。
魔王の全力で出した炎だ、少しは体にダメージでも与えてくれ。
しばらくすると炎が消えて相手の姿を見ると何も変化がない。
クソ!雷も炎もこちらの魔法が全く通じないなんてどんなチート能力だよ。
「わかったでしょう?貴方の魔法では何のダメージも負わないわ」
こうなったら物理攻撃だ。
試せることは何でもやってみるしかない。
「我が杖よ槍になれ!」
俺の意思で杖が槍の形状に変化して近接戦闘の準備が整う。
「これでも喰らえ!!」
槍を両手に持ち替えて飛翔魔法を使いシエルへと斬りかかる。
斬りつけた部分は体に切り傷が入るが、肉体が即時修復していき元に復元していく。
更に何度も斬りつけて相手の様子を観察して弱点を探る。
攻撃自体は入っているが、肉体の修復が恐ろしいほど早い。
一旦離れて相手の様子を見ながら呟く。
「全く…物理攻撃も通じないのかよ」
恐らくだが自身の修復能力に加え相手のエネルギーを吸い取って更に回復を加速させているんじゃないだろうか。
つまり物理攻撃自体は通じる。
要は相手の修復速度を上回る強力な必殺の一撃を繰り出せばいい。
「そろそろ無駄な足掻きは済んだかしら?」
「まだだ!これでも喰らえ!」
俺は右手に持った槍を全力でシエルに投げ飛ばし相手の体へと突き刺す。
体深くに突き刺さった槍をまるでゴミを払うように抜いて地面に落とす。
「無駄だと言うのが解らないのかしら?それではトドメといきましょうか」
「闇の手!」
俺は闇の手を使い地面に落ちた杖を拾いあげた。
相手はこちらの攻撃が通じないので油断している。
作戦決行だ!上級風魔法で相手の視界を奪うんだ!
「いくぞ!上界魔法暴風殺!」
俺の魔法でシエルの周囲に巨大な竜巻が巻き起こる。
相手の視界を完全に奪った、よし行くぞ!
俺は飛翔魔法を使い空高く飛び上がりどんどん上昇していく。
もっとだ!もっと高く相手がギリギリ見えるくらいまで飛ぶんだ。
高度を稼いだところで今度は自分の杖に全力で魔力を注ぎ込む。
「うおおおお!全力で魔力を吸え俺の杖よ!」
杖に力を注ぎ込むと今まで違う威力の高まりを感じた。
凄い…なんだこの力、神滅の秘宝に力を解放されたからだろうか。
魔力が充填された杖は雷光を発して稲妻の武器の様相を見せている。
「闇の手!杖を持ち構えよ!」
自分自身の手で槍を投げても投擲速度が遅い。
闇の手を使って逃げられないほどの速度で攻撃だ。
「いっけえええええ!」
俺はシエルに向けて槍を全力で投げ飛ばす。
風を切り裂き、竜巻を貫通しながら音速に達する速度で槍が飛んでいく。
気づいた時には遅い、既に彼女の目の前に槍が飛んできていた。
シエルは自分自身の羽を使い槍を受け止めるが時既に遅しだ。
受け止めた瞬間に槍に蓄積された力によって大爆発を起こす。
「こんな…力…余裕で…キャアアアアア!」
強大な爆発攻撃で断末魔の様な声を叫び、周囲一体が完全に消し飛ぶ。
スタインブッケ領地を吹き飛ばした威力とは段違いで恐らく半径五百メートル位の砂漠が吹き飛び地面が見えるほどだ。
俺はシエルを倒したか確認するため爆心地の地上へと降りていく。
地面に刺さった杖を見つけて近くに四肢と半身が吹き飛んだ彼女がいた
「ア…ウ…コンナ…はずでは…」
「驚いた…あれだけの爆発を食らってまだ生きてるのかよ…」
彼女にトドメを刺そうと思い杖に魔力を込めたが反応がない。
「あれ?魔力が伝わらない…何故だ」
杖を見てみると今まで何度も酷使しても平気だった相棒に亀裂が入っていた。
今回の威力に耐えられなかったのだろうか、これは困った。
そんな事を考えていると背後から地面に影が映り大きくなってくる。
危険を察知してシエルの元から離れると四天王『天壊のエビルバレス』が彼女の元に飛んできたのだ。
「まさか、シエル様をこんな姿にするとは…」
エビルパレスは彼女を抱え、俺に告げる。
「今回はこちらの負けだ、いずれまた戦う時が来るだろう。さらばだ!」
そう言い残しシエルを抱えたエビルパレスは何処かに転移して姿を消す。
勝利した俺は、マチュアさん達が待っている神滅の秘宝入口まで戻ることにした。
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