92. 新たなる敵
神滅の秘宝との会話にて、突然ライラに巻物を見せるように伝えて来た。
渡された中身を確認すると何故か日本語でこう書かれていた。
『貴方は鍵か』
俺は困惑した。
この世界ではありえない、過去に自分達が居た世界の言葉だった理由。
真実を知りたいため俺は神滅の秘宝に問いただす。
「聞かせてください!何故これは日本語が書かれているのですか!?」
『…残念ながら…我が話せる時間は僅かだ…別れの前に…お主に力を授けよう』
「そんな!この真実を誰に問えばいいんですか」
『…何れ真実に辿り着く……さあ、我が石板に手を触れるが良い』
謎は尽きなかったが神滅の秘宝は時間が残っていないようだ。
それなら相手の要求を飲むしかない、指示通り石板へと手を当てて待つ。
「これでいいでしょうか?」
石板へ重ねた手に光が宿り、体に何かの力が伝わってくる。
今まで感じたことがない、自分自身の中で巨大な滝から大量の水が流れ込み巨大な川を満たすような感覚。
従来とは比べ物にならない程の力の流れを全身で感じていた。
『…今与えた能力は、固定されていた上限を超えて成長が可能になる秘術だ…戦えば更に強くなって行くだろう…それではまた会おう』
別れの挨拶を告げ神滅の秘宝は光を失い沈黙したようだ。
しかし、今までのレベルを超えて更に強くなる能力だって?
魔王になってから強いとは思っていたが更に強くなれという事なのだろうか。
なぜか今までの力では太刀打ち出来ないほどの強敵が現れる予感がした。
「それでは女王の元に戻りましょうか」
目的を達成したのかマチュアさんから魔法都市国家に帰還しようと促される。
全員で神滅の秘宝から外に出ると自動的に防御結界が貼られていく。
なるほど、絶対に誰も入れないように防御は完璧にしてあるのか。
ダンジョンの入口まで全員で歩き始め最後の通路が見え始めたところで、マチュアさんが両手剣を構えて慎重に進み出す。
「どうしました?」
「この先に何かいます…恐ろしいほどの強さを持つ者」
「もしかしてアトレシアですか?」
「いえ、このプレッシャーは彼女ではないです。」
マチュアさんの指示により全員で慎重に入口まで向かい外に出る。
目の前には凄惨な光景が繰り広げられていた。
物凄い強さを誇っていたアトレシアが全身から血を流し瀕死の状態で地面に倒れていた。
「アトレシア!!」
急いで彼女の元へ駆け寄り抱きかかえて体を起こす。
「アトレシアしっかりしろ!誰にやられたんだ!?」
彼女は生き絶え絶えな状況で俺にこう伝えた。
「パルテ様…お逃げください…」
「カトレアさん、アトレシアの治療をお願いします!」
「わかったわ~、後は任せて他の敵に備えてね~」
周囲を見回すと大量のガーゴイルが倒されていた。
アトレシアは、敵が入りこまないようここで防衛してくれていたのだろう。
だが、こんな雑魚敵程度で彼女が瀕死になる程までやられる理由がない。
恐らく真の敵は他に居る、警戒しながら索敵を行うと森の奥から誰かが迫ってくる気配がする。
「あら?見知った顔がいるわね、せっかく裏切り者を処分しようとしていたのに邪魔が入るとは驚きだわ」
過去に聞いた懐かしい声の主。
森の影から目の前に現れたのは、かっての魔王軍統括シエルだった。
「シエル!?何故こんなところに!」
「四天王クロバイアの気配が消えたから確認しに出向いたのよ、まさか寝返っていたとは思わなかったけど、役に立たないゴミだったから処分する事に決めたわ」
「お前が彼女をここまで痛めつけたのか!?」
「まさか、私は戦いは得意じゃないの。念のため助っ人を呼んでいたわ。貴方は知ってるだろうけど、ここで始末する前に紹介してあげましょう」
シエルがそう言って右手を天上に掲げて静かに降ろし俺に向ける。
一体何のポーズなんだ、そう思った瞬間マチュアさんが大声で叫んだ。
「パルテさん危ない!!」
そう伝えた後に彼女が俺を突き飛ばし、天高い場所から地上へと落下して来た相手の攻撃を自身の両手剣で弾き飛ばす。
地上へと降り立った敵は、強者であることを感じさせる口ぶりで自身の名を告げた。
「知るが良い、ワシの名は四天王最強の『天壊のエビルバレス』だ」
アイツは、魔王城で見た四天王の一人。
悪魔に似た羽を持っていたので飛行型と言うのは理解していたが奴の名は天壊のエビルバレスというのか。
魔王城で見た時は何も装備していなかったが、今は巨大な槍を持ち竜騎士みたいな格好をしている
「エビルパレスは魔王軍最強の戦士よ、ただの人間如きが太刀打ちできるわけないけど、まあ必死に足掻きなさい。後は頼みましたよ」
「御意!さあかかってこい人間ども!」
相手の戦いの咆哮に対して自身の名乗りを告げ、両手剣を正面に構えマチュアさんが戦いの狼煙をあげる。
「魔法都市国家騎士団長マチュア参る!」
四天王最後の一人とマチュアによる戦いの火蓋は切られた。
お互い一進一退の攻防を繰り広げているが流石彼女は強い。
四天王相手に互角の戦いを見せている。
「さて私はこの元魔王を処分しましょうかね」
「シエルは戦わないんじゃなかったのか?」
「既に新しい魔王は生まれた、貴方はもう用済み。だから私の手で処分してあげるわ」
新しい魔王が生まれただって?
魔王軍は俺の後任となる魔王を新たに召喚していたのか。
新魔王の事も気になるが、今は目の前の敵に集中しよう。
しかしどうする?シエルは堕天使だ。
以前戦った聖教国家司祭と同じ様に魔族が繰り出す魔法や物理攻撃も恐らく通用しない。
逆にこちらから攻撃を行うとエネルギーとして吸われてしまう。
色々と思考を巡らせてる間にシエルは自身の背中に漆黒の羽を伸ばし何かのスキルを唱える。
「漆黒の刃羽」
相手の言葉と共に周囲に飛び散っていた羽が全てこちらへと方向を変える。
空に浮いた羽がまるで意思を持ったナイフの様に全て俺に襲いかかってきた。
「魔王の覇気 !」
俺は自身が持つ防御スキルで目の前に魔法の壁を作り相手の羽を防ぐ。
だが絶え間なく執拗な攻撃により防御魔法へ亀裂が入リ始める。
まるでガラスにヒビが入るように徐々に広がっていきこのままでは防ぎ切れないと感じた。
このままではダメだ!そう思った俺は魔法で反撃を開始した。
「これでどうだ!暴風殺!」
目の前に現れた巨大な竜巻で漆黒の羽と共にシエルを巻き込む。
これで相手にダメージを与えてくれればいいかと願う。
しかし竜巻の中から相手の笑い声が聞こえ、俺が放った魔法を一瞬で消し去ってしまった。
シエルは余裕の表情で俺に告げる。
「こんな魔法が私に通じると思ったら大間違いよ」
やはりこちらの魔法も攻撃も通じない。
何か堕天使相手でも通用する攻撃はあるだろうか。
せめて攻撃が通じてくれれば何かの対処方法があるのだが…。
そんな時、一つの方法を思いついた。
もし、神滅の秘宝によりこちらの力が上がっているなら試してみる価値はある。
俺は戦ってる二人に告げてこの場を離れることにした。
「マチュアさん!カトレアさんしばらくここを頼みます!」
「シエル俺と戦いたいならこちらについてこい!」
相手にそう言い伝え俺は飛翔魔法で空に飛び上がり何もない広い場所を探す。
遠く離れた地に広大な砂漠を見つけて逃げたように向かうことにした。
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