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転生最強魔王の引退物語 ~最愛の部下と田舎でのんびり暮らしたい~  作者: 茶巾丸
第8章 魔王様行方不明事件編

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91. 魔王様異邦の地で散る

ここはどこだ?

何も見えない深淵の世界に飛び込んだと思ったらある場所へ来ていた。

転生する前に元いた会社で沢山の仕事に囲まれていた場所。

何時ものルーチンをこなすように、パソコンの前で仕事に没頭していたら、左側から突然誰かに呼びかけれた。


「先輩、お疲れ様です!」


横から顔を覗かせて現れたのは新卒で入ったメガネをかけた女の子。

幼さが残る顔だが、それがコンプレックスなのか彼女はかなり濃いめの化粧をして大人っぽく見せている。

なんだか昔見たことがあるような懐かしい感覚。

大事な後輩から労いの言葉を聞いてこちらも素直に返答を返す。


「ああ、お疲れ様…どう仕事は慣れてきた?」


「まだまだ慣れないです…勉強することが沢山あって大変です…」


「そうか、まあ無理しないで頑張ってな。困ったことがあったら自分一人で抱え込まないよういつでも相談してね。大事な新人さんなんだから」


「はい!先輩ありがとうございます!今度よければお食事でもご一緒させてください、それでは失礼します」


軽く会釈をして後輩の子は去っていく。

新卒で入ってきてそんなに経っていないのに俺は彼女に凄く慕われていた。

他の先輩たちには目もくれず、俺だけにずっと仕事の相談とかを聞いてくる。

もしかして俺のことが好きなのか?なんてな…それは自意識過剰ってもんだ。


あんな可愛いらしい子がこんなくたびれたおっさんを好きになるわけがない、面倒見がいいからあくまで先輩として頼りにしているだけだろう。

そういえば後輩の名前ってなんだったけ。

胸に掛けられた社員証の名札に書かれた名前とふりがなを思い出す。


品元彩香(しなもとさいか)


そうだ、彼女の名前は品元だった。

どこかで聞き覚えのある名前だったが思い出せない。

名前の漢字は俺の妹と同じだったな、妹は『あやか』だったけど。

そんな事を考えていたら突然地面に穴が空き吸い込まれる。

深い暗闇に飲み込まれ、また何かの記憶が流れてきた。


そうだ、俺は異世界転生して魔王となり二度目の人生を謳歌していたが突如として死を迎えて、新たな人生は志半ばで失ってしまった。

色々なことが廻りどんどんと奥深く落ちていくところで誰かが呼びかける声が遠くから聞こえる。


「………ちゃん………パルテちゃん………目を覚まして…」


誰だ?俺を呼ぶのは…パルテ…そうだ俺の名前だ。

呼びかけられた声と何かに揺さぶられるような感覚。


「パルテちゃん…目を覚まして!」


静かに眠っていたいのに大きくなる声につられ静かに瞼を開く。

自身の眼に映ったのはカトレアさんの顔だ。

彼女は俺の顔を両手で掴みずっと名前を呼びかけていたようだ。

状況がよく飲み込めず、相手の名を確認するように口から呟く。


「………カトレア……さん……?」


「よかったわ~、目を覚ましてくれて」


「私は…死んだはずでは…」


そう言いながら何だか体にカトレアさんから重さと共に違和感を感じる

顔を少しだけ起こして見てみると、カトレアさんの凄く大きな双丘と自身の胸がピッタリと重なっていた。


え、どういう事?まるで状況が飲み込めない。

二人とも上半身裸で、いわゆる乳合わせの状態。

余りの状況に驚いていつもより大きな声で彼女へ問いかける。


「ええええっ!?なんで私とカトレアさんが上半身裸で抱き合ってるんですか!?」


「おちついて、変な事はしてないから。無理やり襲うのは主義じゃないからね~」


確か俺はマチュアさんに剣で心臓を貫かれ死んだと思っていた。

だけど、心臓の鼓動も感じるし間違いなく生きている。

一体何が起きたのか、カトレアさんへ問いかける


「私は…死んだんじゃなかったんですか?」


「危なかったけど、蘇生の秘術(アークリザレクション)で肉体を完全復元させたからもう大丈夫よ~」


蘇生の秘術(アークリザレクション)で、体を復活…?それで何でカトレアさんと私が上半身裸になる必要があったんですか?」


蘇生の秘術(アークリザレクション)は、ワタシとの肉体接触が大きいほど効力が高まるのよ。本当は全裸でやるのがいいんだけど変なことしたと思われたく無かったから上半身だけでやったのよ~」


「そ、そうですか…カトレアさん助けていただいてありがとうございます」


「今回はこちらの落ち度よ~、マチュアちゃんが先走って貴方の命を奪いにいったのが問題。だから蘇生させた事は気にしなくていいわよ~」


そう言えばマチュアさんはどうしたんだ?

周囲を見回すと地面に頭を付けた彼女がすぐ側にいた。

彼女はとても申し訳なさそうな声でこちらに謝罪の言葉を伝える。


「申し訳ありません!私が先走り過ぎました!後少しで大事な方を失うところでした」


マチュアさんは地面に頭を付けてジャパニーズ土下座と言わんばかりに全身で謝罪の気持ちを現しているようだ。

でも、まさかこんな異世界の地で土下座謝罪を受けるとは思わなかった。


「先走って命奪われるって…どうこう言うレベルじゃないんですけどね…」


「本当に重ね重ねお詫び申し上げます!許されるならこの体を好きにして貰ってもいいです!いや何でも言うことを聞かせていただきます」


ん?今何でもって言ったか。まあとりあえず生き返ったから不問にはしたいけど何か罰を与えないと納得しないのであろう。


「生き返ったから不問としたいけど、剣が刺さった時めっちゃ痛かったので罰として何か考えます」


「は、はい…甘んじて罰を受けます」


そんな話をしながら裸だった上半身を見たら胸を貫かれた傷は消えていた。

蘇生魔法に傷を完全に消し去るほどの回復能力、さすが魔法都市国家最上級の治癒魔術師という事だろうか。

横に落ちていた上着を羽織り服を改めて整え普段の格好へと戻る。

カトレアさんは僧侶の服を開けさせただけなのか、簡単に衣装を直してマチュアに対して嗜めるように少し厳しい口調で叱った。


「女王様が私を同行させた理由が何となくわかったわ~、貴方先走る癖があるから何かあった時のお目付け役と蘇生が使えるよう対策してたのね~」


「返す言葉もありません、天使が絡むとつい我を忘れてしまって…」


三人で普段通りに戻り談笑していたところで神滅の秘宝が問いかけてきた。


『問おう…お前は何故天使の力を持つ…』


「私が天使の力を得た理由ですか、それは…」


俺は神滅の秘宝にこれまでの経緯を話す。

魔王として生まれ変わり、配下として魔族を召喚して魔王城を脱出。

彼女と逃げて一緒に行動していたが肉体の完全復活時に女性と体が変化した時に魔族が分裂して天使が現れた事。

そして肉体に堕天使に抗う能力を埋め込まれ、謎の祠でこの地に飛ばされてここにいると言う話を全て伝えた。


『天使が我らの味方をだと…それが真実なら…もしかして』


神滅の秘宝は突然静かになってしまう。

何かを考えているのだろうか、天使が仲間になると言うことがそんなにイレギュラーな出来事なのだろうか。

時間にして数分だろうか、神滅の秘宝が更に問いかけてきた。


『ひとつ聞こう…貴殿の真の名前を教えてくれ…』


「名前ですか?魔王バルテオスで今はパルテと名乗ってますが…」


『…そうではない…過去に持ちし…真の名前だ』


過去に持ちし真の名前?一体何を言っているのだろう。

俺はこの世界で魔王バルテオスとして生まれた、だから名前も同一。

待て…過去に持っていた名前…つまり前世の名前ってことか?

問われた理由が謎だが、人間だった時の名前を告げてみた。


「…天城天馬です」


俺の名前を聞いて神滅の秘宝は、声のトーンを上げて驚いた。


『なんという事だ…魔王に鍵が渡るとは…一体何故だ…もしかして…』


魔王に鍵が渡る?一体何の事を言っているんだ。

というか神滅の秘宝は、何故俺の前世の名前を知っている風な口ぶりなんだ。

もしかして過去に転生してきた人物?でもそれなら知ってる理由にはならない。

何故、転生前の名前を知っていたのか神滅の秘宝に問いかけた。


「貴方は私が以前に持っていた名前を知っているのですか!何故ですか?」


『…残念だが…貴殿の問いには現時点では答えかねる…だがもし我の願いを聞いて貰えるなら…答えに近づくだろう』


「その願いと言うのはなんでしょうか」


『…貴殿の側にいる天使の娘に…この巻物で問いかけて貰えるか』


問いかける?ライラに何かを聞くというのか。

神滅の秘宝がこちらにそう伝えてからしばらくすると頭上から何かの巻物が地面に落ちてきた。

地面に落ちた巻物を拾い上げて中身を見て驚く。


「貴方は鍵か」


書かれている内容を見て驚いた。

巻物に書かれていた文字が異世界ではありえない言葉。

それは日本語で文字が画かれていた。


『その天使が…この内容を肯定したら…この場所に連れてきて欲しい…』


神滅の秘宝による突然の日本語を利用した質問に俺は困惑していた。

異世界なのに何故こんなところで日本語が出てくるんだ?

次々と浮かび上がる疑問は尽きなかった。

一日置き(隔日)の19時から21時頃で更新予定。

月曜日は投稿お休みです。

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