90. 神滅の秘宝との遭遇
四天王クロバイアから魔剣士アトレシアとなった新たな仲間を手に入れ、目的となる神滅の秘宝へと進もうとしたところでカトレアさんが静止した。
「ちょっとまって頂戴」
「どうしました?カトレアさん」
「残念だけどアトレシアちゃんは、この先に進む事はできないわよ~」
カトレアさんは新たに仲間と加わった彼女を突如として先に進むことを拒む。
疑問に思い俺は、進めない理由を彼女へと問いかけてみた。
「それはどうしてですか?」
「神滅の秘宝への接触はパルテちゃんしか許可されていない、その他の者が入ることは許されないわ~」
カトレアさんが珍しく真剣な表情でこちらに伝えてきた。
神滅の秘宝というのは外部の者を招き入れない程重要な宝なのだろうか。
それなら何故俺だけが通ることを許されるのだろう。
「何故だ!確かに私は魔王軍四天王だった。だが今はパルテ様の家臣となり忠誠を誓った身だぞ!共に行動をする必要がある!」
「ダメよ~、神滅の秘宝への場所は選ばれたもの以外は入れないのよ」
ここまで拒否されるとは本気なのであろう。
俺以外には完全部外秘でアトレシアがいる限り先に進むのは難しいか。
それならば彼女を説得して一旦外で待っておいて貰うしかない。
「悪いけどアトレシアは、ダンジョンの入口で待ってて貰えるかな?」
「しかし、それではパルテ様への忠義が果たせません!」
彼女は臣下となったのに置いていかれることに納得出来ないようだ。
ただ、このままこの場所で問答していても国に帰ることが出来ない。
本来の目的を彼女に告げて納得してもらおう。
「私は神滅の秘宝へ行くことで、バルダーン大陸へ戻るための資金を融資して貰う約束をしているんだ。もし貴方がこのまま居たら帰れる事が叶わない可能性がある、わかってもらえないか?」
しばし沈黙後にこちらの言葉に納得したのかアトレシアはこの場から出ることを了承してくれ外に向かう。
「私は外でお待ちしております、何かありましたら直ぐにお呼びください」
「わかった。魔族召喚で思念通話が使えるようになったから用があったらすぐ呼ぶよ」
「承知いたしました、どうぞお気をつけてください」
彼女は俺達が入って来た通路から入口に向かって歩き出す。
多少抵抗があったがこちらの事情を理解したのか素直に従ってくれた。
アトレシアが広間から去ったところでカトレアさんとマチュアさんが先程魔族達が攻撃していた壁に対して左右に分かれて立ち並ぶ。
「それでは行きます」
「いいわよ~」
二人は壁に手を当ててお互いに何かの言葉を交互に呼び始める。
「オドヌフォルプ、アルラスラ、サリオイド、エドオヨヴアル(神の道は深淵の先へ)」
「オレプセサネヴ、オドヌフォルプ、アルトソプ(深淵の先には希望を呼び)」
「ノティム、ナヴォン、サエルク(新たな神話を作り出す)」
「ノイドサヴェラムイリ、ジョモフウドエド、オトロフアルレプ(二人の力で神を呼び)」
「オヨジョエド、タユアクリチサツェ、オドノムアルエド、ヨナフナイル(世界の子たちは喜びに包まれる)」
二人が揃って最後の言葉を叫ぶ。
『オギイイネン、アイディアルエド、ノロゼルト、タネルケス、 アルウムレフラム!(開け神滅の秘宝)!』
二人の言葉が周囲に響き渡ると眼の前を塞いでいた壁に貼られていた魔法障壁のような見えない防御結界が消滅した。
それと同時に地面から大きな地鳴りのような音が響き渡り壁が自動ドアのように左右へと開いていく。
扉の中からは大きさにして学校の教室くらいの部屋が現れた。
そして室内の中心部には将棋の駒に似た五角形の石碑が自分たちの背丈より高い姿で鎮座している。
「パルテさん、中に入ってください」
マチュアさんに促され部屋の中へ全員で入ると、先程開いた扉が自動的に閉まりだし、全員が神滅の秘宝と呼ばれる部屋の中に閉じ込められる。
完全に扉が封鎖されたのを確認した後、マチュアが部屋の中で誰かを呼びかける。
「オコヴラアルウド、ノプセルオギイネン、 アイディエドオルツァム!(神滅の主よ、呼びかけに答え給え!)」
彼女の呼びかけにより中央に存在していた石板が赤く輝き、空中に人の顔を形取った存在を投影し語りかけてきた。
『我は…神滅の秘宝と…呼ばれる…存在…まずは汝を示せ…』
神滅の秘宝と呼ばれる存在の言葉と共に地面から何かの装置が上に伸びてきた。
相手の問いかけの言葉を聞き考える。
汝を示せ、どういう事だ?
この装置を使って何かを行なえという事だろうか?
こちらが躊躇していたところで、カトレアさんが装置の使い方をレクチャーしてくれた。
「パルテちゃん、地面から現れた『試練の石』に自分の掌を乗せてみて」
「は、はい…わかりました」
俺は促されるまま地面から現れた試練の石に近づき掌を乗せる。
すると、装置からはまるでコピー機が乗せられた物体を読み取るように光の帯が前後に走り何かを確認しているようだ。
しばらくすると神滅の秘宝が続けて何かを語り始めた。
『第一段階…確認…完了……続いて第二段階へと移行…』
神滅の秘宝の言葉と共に俺が立っていた地面から巨大なリング浮上して徐々に上昇していく。
こちらの体をまるでスキャンでもしているかのようだ。
リングが静かに登り続け頭を通過したところで、また巨大な輪は地面へと降りて元の状態へと戻る。
『第二段階…確認…完了……続いて最終確認を実行…』
最終確認の言葉とともに周囲の隅から青白い光が俺を照らした。
照射された光に何かが反応して俺の体から白い光が輝き出す。
なんだ、この体から現れた光の正体は?
体の光を確認した後に神滅の秘宝が強い口調で光の正体を明かす。
『その者の中に天使の力が存在している…再確認が必要……』
天使の力が存在?
もしかしてライラが埋め込んだとか言っていた、堕天使に対抗できる新たな力とか言っていた物だろうか?
そんな事を考えていたらマチュアが背後で何かを呟く。
「そうですか…残念です」
彼女が言葉を発した瞬間に既に俺の背後へと回り込んでいた。
そして体へ何かが刺さったような感触がした。
「えっ…?」
こちらが発した驚きの声が出た瞬間に、胸元から剣が体を突き抜ける。
ほんの一瞬の出来事で、一体何が起きたのか全く解らなかった。
しばらくして胸元から大量の血が溢れてきた事で察した。
マチュアが剣で俺の心臓を貫いて来たのだ。
「クハッ…ゴホッ…マチュアさん…なぜ…?」
「天使の力を持つものをここで解放するわけには行きません、残念ですが貴方にはここで死んでもらいます」
そう言いながらマチュアは俺に突き刺していた剣を引き抜く。
剣が貫通した胸元から物凄い勢いで血が吹き出た。
同時に全身から力が抜けていき俺は地面に崩れ落ちて地面に広がる自身の血液を見つめながら考える。
「なぜ…こんな事を…マチュアさん…?」
「悪く思わないでください…天使の力を持つものは排除しなければなりません。神滅の秘宝は世界を維持するための大事な力なのです」
天使の力は排除しなければならない?神滅の秘宝が世界を維持する秘宝。
一体どういう事だ?訳がわからない。
何故に彼女達は魔族よりも天使の力をこれほどまでに忌み嫌うのか。
天使の力を持つものは世界を維持するために排除が必要?
ダメだ…大量出血で頭に血がまわっていないせいか考えが纏まらない。
最後の力を振り絞りながらこれまでの事を思い出す。
パルテセスでみんなと生活した日々、リブラとライラとエルフの皆。
ルコットにセレネとヴァレリアみんなとの暮らしは波乱万丈だっけどとても楽しかった。
これが走馬灯という奴だろうか。
まさかこんな異国の地で突如命を失うことになるとは考えても居なかった。
(ライラ…リブラ…ごめん…二人と結婚出来なかった…)
俺の意識が遠くなり、瞼がとじていき周囲が暗闇に包まれていく。
パルテセスへの皆へ贖罪を続けながら俺の世界は暗闇に包まれた。
一日置き(隔日)の19時から21時頃で更新予定。
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