87. 深淵の迷宮攻略 その2
こちらの迂闊な発言で若干不信感を与えた二人と共に深淵の迷宮奥地へと進んでいた。
最初の階層に現れた正教国家の下僕と呼ばれていた天使の複製体以降、目立った敵は現れてこなかった。
ただ、俺は二人の会話とライラの教えてくれた内容の相違点が気になりずっと考えていた。
天使は器に乗り移って堕天使として地上に降臨する事ができる。
両者とも同位体で裏で暗躍しているのは、天使だという事。
では、ライラはどうなのか?
彼女は魔族の体に憑依した天使だった。
今は俺の覚醒で肉体が分裂して天使の力を宿した魔族になっている。
彼女は俺が魔王城から逃げ出した後ずっと手助けをしてくれた。
更には俺達と共に魔王軍や堕天使達と戦ってパルテセスの建国まで収支助力してくれている。
加えて何故か俺に対して好意を寄せていた。
ライラの照れる顔、嫉妬してむくれた表情、ヤンデレっぽく怒ったり、一緒にお風呂に入った時に見せた恥ずかしそうだった姿。
彼女の見せてくれた表情を思い出すと全てが愛おしい。
今更気付いたけど俺はライラの事が大好きなんだ。
彼女が沢山見せてくれた全てが俺を誤魔化すための演技?
いや、そうは思えない。
だったら何故俺に嘘を教えたのかが解らない。
いやまて思い出せ、リアは天使が嘘をつけないとも言っていた。
つまりライラが教えてくれたことも真実の一つと言うことなのだろうか?
色々な話が交錯して何が真実なのか考えが纏まらない。
ああ…早く皆のところに帰って普通の生活に戻りたい。
ライラやリブラとパルテセスにいる皆と平和に暮らしたいという願望。
いつの間にか望郷の念にかられていた。
難しい顔をしながら歩いていたせいだろうか。
突然カトレアさんが背後から抱きつき、こちらの胸を揉んできた。
「ひゃっ!」
突然の出来事に変な声が出てしまう。
そして彼女はこちらへ吐息がかかる程すぐ側まで顔を寄せて問いかけてきた。
「な~に難しい顔して歩いてんのよ~?」
「色々考えてたら早く皆がいる国に帰りたいなあと思っていただけですよ」
「ふ~ん、実はさっきの話の続きが気になるんじゃないの~?」
カトレアさんはこちらの心を見透かすように自分が今悩んでいる事を的確に突いてくる。
「それはそうですけど、秘密なんですよね?」
「まあね~、神滅の秘宝に行くまでは明かせないわね~」
警戒心は持っていたけどカトレアさんは普段と変わらないスキンシップを交えての会話をかわしてくれて安堵の気持ちが高まる。
年上のお姉さんから感じる安心感というか、破天荒な雰囲気だけど周囲に気を配って見てくれている、これが彼女なりの流儀なのだろう。
「ありがとうカトレアさん」
「ん~?突然どうしたの~?」
「なんとなく…お礼を言いたくなって」
三人で歩みを進め階段を降りていく途中でマチュアさんがこちらに告げてきた。
「そろそろ最深部です、カトレアさんどうですか?」
「魔族が一杯いるわね~、あと物凄く強そうな奴が一体」
カトレアさんは周囲から敵をサーチする能力があるのか。
だからあまり警戒せずに、普段通りに過ごして進んでいたんだと知った。
それならこれから戦う相手が誰か彼女に聞いてみよう。
「カトレアさん、先にいる魔物って何が待ち構えているかわかりますか?」
「ん~、ちょっと待ってね」
カトレアさんは目を閉じて相手の正体を探っているようだ。
魔法詠唱も無しに調査していると言うことは何らかのスキルなのだろうか。
しばらくして彼女が相手が何かわかったのか全員に敵の正体を伝えてきた。
「羽が生えてるから恐らくガルフガーゴイルと、物凄い力を持った魔族の剣士っぽい敵が一体いるわね~、全部で百体程度かしら?」
物凄い剣士っぽい魔族の敵…もしかすると魔王軍四天王の一人か?
確か四人の中に暗黒騎士っぽいのが居た記憶がある。
「もしかするとその剣士は、魔王軍四天王の一人かもしれません」
「そういえばパルテちゃん元魔王だっけ、どんな攻撃をしてくるか知ってるの~?」
「私はお飾りの魔王だったので、四天王がどういった能力を持っているのか残念ながら知らないんですよ…」
「そうなの?実は隠してるんじゃないの~?」
「これから戦うのに隠してたら不利になるじゃないですか、本当に知らないんです」
カトレアさんは、こちらに顔を向けて俺の目をジッと見つめた。
なんだろう、彼女の目を見ているとこちらの心の中が見透かされるような感じ。
しばらくの間見つめた後にこちらの両肩を叩いて告げて来た。
「うん、パルテちゃんの言い分信じるわ~」
なんだか心の奥底を覗かれたような気がしたが、信じてもらったならよい。
これから沢山の敵と挑むならまず二人と対策を考えよう。
「まずは、大量にいるガーゴイルの処理ですね、相手の弱点って何かご存知ですか?」
俺の問いかけに、マチュアさんが教えてくれる。
「ガーゴイルは雷系統に弱いですね、空を飛んで物理攻撃や魔法を使うので近接戦闘だと苦戦しそうです」
相手は雷が弱点か。
それなら爆裂雷を開幕にぶっ放したらかなりの数が処理できないだろうか。
試してみる価値はあると思う。
こちらは三人だし相手に数で来られたら不利になるのは目に見えている。
だったら今度は俺が殿を務めるべきだ。
「それなら私が最初に雷魔法で突撃します、二人はその後に続いてください」
「ダンジョン内は、電撃が散りやすいから雷系統の魔法弱まるけど大丈夫~?」
「一回で仕留められなかったら、何回か撃ちますのでお二人は巻き込まれないように出来るだけ離れておいてください」
「承知しました、こちらは後ろで待機してます」
「わかったわ~、開幕は任せるわよ~」
二人は顔を合わせてこちらの提案を飲んでくれた。
全員で階段を降りて先に広間が見えて来たので相手に気取られないように進んでいく。
全員で隠れながら広間の手前で隠れて中の様子を見てみると敵が全員で何かの壁を攻撃しているようだ。
魔法障壁か何かで弾かれているが執拗に破壊しようと攻撃を繰り返している。
相手は攻撃に夢中でこちらの存在に気付いていないようだ。
これなら奇襲攻撃で突入できる、そう思った俺は二人に頷いて合図を送り突入して魔法を発動する。
「いくぞ!爆裂雷!吹き飛べ!」
こちらの魔法詠唱と共に巨大な稲妻の塊が空中に現れ周辺一帯に雷撃が飛び散り次々とガーゴイルへと命中していく。
手加減無しの容赦ない全力での爆裂雷による一撃だ。
ガーゴイルの強さがわからないが、恐らくだがそれなりの数を仕留められたはず。
爆裂雷の噴煙でハッキリとはわからないが半分近くは倒したように見える。
ならば更に追い打ちで追加攻撃を食らわせるよう。
「もう一度だ!爆裂雷!!」
二発目の攻撃で飛んでいたガーゴイルは壊滅した。
そんな中、噴煙の中から不気味な笑い声が周囲に響き渡る。
奥から現れたのは、暗黒騎士風の人物で魔王城で一度見た四天王の一人だ。
爆裂雷を二回も放って恐らくアイツも攻撃も食らっているはずだがほぼ無傷の状態だった。
「貴様何者だ?ガーゴイル達をあっという間に一掃出来る力を持つとは…」
「私は魔道士パルテだ!私の魔法を受けて平然としていられるとは貴様こそ何者だ!?」
相手は自身が持つ巨大な両手剣を地面に立て自信満々に自分の名前を告げてきた。
「聞いて驚くがよい!我こそが魔王軍が四天王の一人『暗滅のクロバイア』だ」
なるほど、あいつの名前は暗滅のクロバイアって言うのか。
実は四天王の名前全員知らないので名前語ってくれてよかったよ。
俺は後ろに待機していた二人に合図を送り中に入る用促す。
全員揃った所でクロバイアは戦いの宣言を告げてきた。
「なるほど、三人で我の相手をするというのか…相手にとって不足はない!全力でかかってくるがいい!」
こうして俺達は魔王軍四天王の三人目と戦いを挑むことになった。
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