85. 初めてのダンジョン (ヤバい2名含む)
女王から『深淵の迷宮』への挑戦と引き換えに大陸横断の費用を融資してもらえる約束を取り付けた俺はマチュアさんともう一人を加えて三人で目的のダンジョンへ向かうことになった。
事前準備のため来賓の部屋で二人の到着を待っていたが一向に現れない。
これだけ準備に時間かかるという事は深淵の迷宮って結構大変なダンジョンなのだろうか。
色々考えてベットの上でのんびりと過ごしていたら、扉のノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ」
現れたのは白金の豪華そうな鎧で全身を固め、背中に両手剣を備えたマチュアさんともうひとりの人物。
腰まで伸びた紺色の長髪に服の上からでもわかる様な抜群のスタイル、下リム型メガネを掛けて大人びて勝ち気がする美人の女性。
僧侶っぽい衣装から、恐らくヒーラー系のジョブではないかと推測できる。
「パルテ様、お待たせしました。紹介しましょう、こちらヒーラーの『カトレアさん』です」
「あ、はじめましてカトレアさん。私はパルテと申します」
紹介されたカトレアさんは無言でこちらをジッと見据えている。
そのまま無言でこちらににじり寄って来て、こちらの顔や胸に体とお尻のラインを舐め回ように見回している。
体に何かついているのだろうかと思い彼女に問いかけてみた。
「あの、カトレアさん?」
彼女がこちらの後ろに回り込んだ所で、突然左手がこちらのお尻を撫で回して来て体の感触を確かめてきた。
「ひゃっ!」
相手の予想外の行動に思わず女の子っぽい叫び声が出てしまう。
そのまま右手でこちらの胸に手を掛けて優しく揉みしだいてきて抵抗しようと声をあげて離れようとするがガッチリ固められて逃げられない。
「ちょっ…ヤメ…てください」
「パルテちゃん、顔も好みだし体もいい肉付きしてるじゃな~い?どう、お姉さんと出発前に一回ヤっていかな~い?」
カトレアさんは吐息がかかるくらいに、顔へ密着させて欲望のままにこちらに誘いを掛けてきた。
二人が絡み合ってるところで、マチュアさんが大きめな咳をして相手に自制を促す。
「オホン…カトレアさん!今日の目的はそうじゃないでしょ!」
「んもう、つれないわねえ。こんな可愛い娘見つけたらヤリたくなるでしょ?貴方も狙ってるんじゃないの?」
「それはそうですが、まずは目的を達成してからです」
ヤリたくて狙ってるってとこはマチュアさんも否定しないんかーい!
全くこの国にいる女性達の貞操観念ってどうなってるんだよ…。
女性同士の行為が自由だという法律があると、ここまで自由に好みの女性に対してアプローチしていくんだろうか。
魔王の威厳はなんとやら、この国にいると普通の女の子になってしまう。
強めに断る意思を表示していかないと、直ぐにでも襲われそうな雰囲気だ。
「パルテ様、それでは参りましょう」
「は、はい。お二人共よろしくお願いします」
前で先導してくれる二人について行き、王城を出て魔法都市国家の外に出る外門まで歩いていく。
門番の兵士たちがマチュアに気づくと、上官に挨拶する部下のよう規律正しく槍を立てたポーズで大声で挨拶をしてくる。
「マチュア様!お疲れ様です!」
「ご苦労さま、結界を開放して我々が出たら即閉じてください」
「承知いたしました!」
門番は何かの装置を動かし入口の結界を解除して、全員に告げてきた。
「いってらっしゃいませ!」
マチュアは軽く手を挙げて兵士たちに合図を送る。
全員が外に出た所で都市国家の結界が再度閉じられて外部からの侵入者を塞ぐ。
結界による防衛システムは、侵入者を一切許さない強固な守りとして作られているんだな。
というか一般兵士や国家調査官のボルダックも含め男性も結構いるけど、彼らはこの国の女性に対する法律はどのように感じているのだろう。
時間があったら一度聞いてみたいものだ。
色々考えながら二人と共に道を歩いていくとマチュアがこれからの道中について詳細を教えてくれた。
「深淵の迷宮までは徒歩で二十分程度です。馬車移動はここでは目立つので歩きでの移動をご容赦ください」
二人と会話しながら女王様を含め疑問に思っていたことがあった。
到着まで時間があるから雑談しながらこの機会に聞いておこう。
「マチュアさん、少し気になった事を聞いてもいいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
「都市国家の人達や一般兵の人達とは私の言葉が通じなかったのに、女王様やマチュアさんも含めてなぜ会話が出来るのでしょうか?」
「私達が所属する国の言葉は『アルカナ語』で、普段はこちらで会話するのですが、国家要職の人達はバルダーン言語も話せるのですよ」
「なるほど…だからマチュアさん達とは私は会話が出来るんですね」
「そういう事ですね」
「アタシも話せますよ~」
マチュアさんと共に飄々と前を歩いていくカトレアさんを見ていた。
彼女は後衛のヒーラーなのに、まるで前衛でもいけるぞみたいに雰囲気だ。
ただ普通に歩いているのではなく周囲に警戒を張り巡らせているのがわかる。
強い前衛が後衛に対して気を使うのはわかるが、彼女も前衛と共に前を歩くという事は相当な手練れの冒険者なのだろう。
しばらく歩いていると森に入り石造りの門らしき物が見えた。
だが入口に巨大な魔物が待ち構えていた。
以前、ドリアードのリアが居た大樹の前で巣食っていたキマイラに似た魔物だ。
魔物の姿を見てマチュアが厳しそうな表情でポツリと呟く。
「ガラントキマイラか、面倒な相手を置いているな…」
「なんとなく予想はしてたけど、マチュアちゃんなら楽勝でしょ~?」
「ここは良いところを見せないとね、カトレアさん耐火と強化魔法ください」
「いいわよ、では『炎断の護符』『守護の陣界』
カトレアさんは、まるで普通に声を掛けるくらいの雰囲気で二種類の防御魔法を軽々とマチュアさんに付与する。
この人はヤバイ、初対面の印象は只の変態チックなお姉さんかと思っていたが発動に時間がかかる防御系の魔法を軽々と使えるなんて物凄い実力者じゃないだろうか。
防御魔法を付与されたマチュアさんが、キマイラの眼の前に立ちはだかると相手も気づきライオンヘッドが大きく息を吸い巨大な炎を吐き出した。
だが、マチュアさんの姿は正面になく俺は消えた彼女の姿を探す。
恐らく上だ、そう思った俺は空を見上げて彼女を見つけた。
あれ程の重装備なのにまるで羽でも生えているように天高く舞い上がり背中の剣を抜いて地上へと落下しながら気合の声を叫ぶ。
「はあああっ!」
マチュアさんが地上へと降りた瞬間にキマイラのライオンヘッドを両手剣で一刀両断し、頭を地面へ切り落とす。
更に振り向きながら、もう一体の山羊頭も切り落として断末魔の声をあげながら相手は絶命する。
単独でこんな魔物を軽々と倒すなんて予想はしていたがマチュアさんの強さは物凄いな。
「ほらね、楽勝じゃない」
「ちょっといいところ見せようとして張り切り過ぎましたかね?」
「マチュアちゃん張り切るからこっちの出番全然ないじゃな~い?後ろでパルテちゃんとイチャイチャしてようかしら」
そう言ってカトレアさんは、こちらに体を密着させてくる。
密着してきた感じから彼女もかなり女性らしく出ているところは出て体のラインも絞られているが、それ以外の部分はかなりの筋肉質だ。
ヒーラージョブだけど、この人も前衛としても戦えるくらい強いんじゃないか?
「カトレアさん、この先に奴らいると思いますか?」
「邪魔者がこんな魔物一体なんてショボすぎるし、本命は中にいるでしょうねえ」
二人の会話を聞いて気になったので問いかけてみた。
一体この先に何が待ち構えているんだろうか。
「奴らって一体何がいるんでしょうか?」
「魔王軍か正教国家の下僕が待ち構えてるわよ、両方居るかも知れないわねえ」
「とりあえず、警戒しながら先に進みましょう」
ここでは魔王軍と正教国家が強調しながら戦いを挑んでくるのか。
初めての相手との遭遇を予感し、手に握る杖に力が入ってしまう。
こうして強力な仲間二人と共に深淵の迷宮へと挑戦を開始するのであった。
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