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転生最強魔王の引退物語 ~最愛の部下と田舎でのんびり暮らしたい~  作者: 茶巾丸
第8章 魔王様行方不明事件編

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84. 謎の祠の正体と帰還方法

昨夜の情事中断から女王の呼び出しを待つことになった。

お風呂上がりでさっぱりして過ごし、面会に備えて着替えたところで、扉のノック音が聞こえる。


「どうぞ」


迎えに来たのはマチュアだった、恐らく面会の準備が整ったのであろう。


「パルテ様、お迎えに参りました」


「わかりました、伺いましょう」


彼女に連れられ謁見室へと向かうと既に女王と見慣れない女性が一人待っていた。

肩にかからない程度の茶髪にメガネを掛けて白衣のようなガウンを掛けた如何にも学者っぽい女性だ。


そして女王はこちらの顔を見て微笑を浮かべている。

昨日あんな出来事があったのでなんとなく恥ずかしくて顔を合わせ辛い。

その気持を察したのか少し意地悪気味にこちらをからかって来る。


「どうしました、顔が赤く染まってましてよ」


女王は、こちらの気持ちを察してる。

恐らくだがこのような場面を何度も経験してるから冗談めかしてこちらを突いて来ているのだろう。

なんだかちょっと悔しいぞ、何かいい返したいところだが、いかんせんそういった経験値が乏しくて反論が思いつかない。


「まあ、冗談はこれくらいにして…本日はある方を紹介いたしましょう。我が国の魔法技術を担い、その発展を導いてきた人物です」


女王の紹介と共に先ほど待機していた学者っぽい女性が前に出て自己紹介を行う。


「はじめまして、都市国家魔法技術統括部門の『フェリア・クロノス』と申します、フェリアとお呼びください」


「彼女はこの魔法都市で魔法に関するあらゆる技術開発を行っている人物です。地下の祠についても調査済ですので伺いたいことがございましたらどうぞお伺いください」


女王に昨日祠を使いたいと要望した事について手筈を整えてくれていたのか。

流石国を治めるトップだと感心した、ここは礼を告げるべきだろう。


「お気遣いありがとございます、女王様」


「よろしくてよ、それじゃあフェリア話を続けて」


「では、地下に封印していた祠についてお伝えします。我々の調査結果では古代文明の転移装置だと言う事が判明しております」


「推測はしていましたが、やはり転移装置でしたか…ではフェリアさん、再度祠を稼働させれば、私は元の地に戻れますでしょうか?」


「魔力を注入する事で装置を起動させる事は出来ます、ですが恐らく元の地に戻ることは困難でしょう」


「え…そうなのですか?」


「はい、どうやらあの装置には移送先を決める制御が出来ていないようで、使う度に転移する場所が異なるのです。過去に実験として幾人かの冒険者に協力をお願いしましたが、転移して帰ってきたのはひとつのグループのみで、他は戻る事が叶いませんでした」


「そうなんですか…それでは祠を使っても運任せという事で戻れる保証がないのですね」


「ええ、そのような設備を稼働状態にしておくのは危険なため、祠を厳重に封印して入れないようにしていたのです」


なるほど、転移先が解らない装置で飛んでもどこに行くか解らない。

再稼働させると反対からも何者かが来る可能性もあるし、リスクが高いから立入禁止にして封印したって事か。


だから俺が現れた時に都市国家が厳戒態勢になって大慌てだったのかと今更ながら理由を理解した。


転移装置が使えないなら飛翔魔法を使って海を越えるか?

いや、戻る大陸の場所が解らない状態で大きな海を飛び続けても途中で魔力が尽きたら海に落ちて溺れ死ぬ可能性もある。

それならば、順当に船などを利用して大陸間を移動した後に、飛翔魔法でパルテセスまで戻るのが得策だ。


「ありがとうございます、それならどこからか船で大陸を渡る方法を考えるしかなさそうですね…」


「船で大陸を渡るならここから北東の港街『バルジャンテ』から大陸横断船が月に一回出ています」


「その大陸横断船で渡る際の渡航費用はご存知でしょうか?」


「渡航費用は、一人当たり金貨で三十枚程度ですね」


「あら、大したことないのね」


女王は大した事ないと言っているが金貨三十枚って大金じゃないか?

えーと、日本円で換算すると大体片道百万くらいかかるって事!?

特に準備せずに祠の調査に向かって飛ばされて来たから、ポケットに入ってるの銀貨数枚しか持っていないがどうしようかな。


「大陸横断にそんな費用がかかるんですか!?」


「二週間ほどの船旅で、主に利用するのは商人ですので妥当だと思いますよ」


「そうですか、実は祠を調査する時には、お金を全く用意していなかったので手持ちが無いんです。何か金策を考えないといけませんね…」


二人で会話しているところに女王が割り込んである提案を寄越してきた。


「わたくしが渡航費用含め融資を行いましょうか?二つの条件付きですが」


女王が渡航費用を用立てしてくれる?

条件付きってのが引っかかるが背に腹は変えられない。

一旦話を聞いてみて承諾するか考えてみよう。


「その条件というのは何でしょうか?」


こちらが話に乗ってきたことで女王は微笑を浮かべながら会話を続ける。


「まず、一つ目はこの近隣にある『深淵の迷宮』というダンジョンを踏破していただきます。補助役としてマチュアともう一人の部下をつけましょう」


「マチュアさん含め三人でのダンジョンの踏破ですか!?実はダンジョンってまだ未経験なので、彼女達に迷惑掛けそうな気がしますが…」


「この娘は魔法都市でもトップクラスの強さを誇る元騎士です。日々修練も欠かしておりませんので、きっとお役にたつでしょう。マチュアよろしいかしら?」


「仰せのままに女王様」


やはり彼女はここでも相当な強さの騎士だったのか。

それなのに護衛兼秘書としても立ち振る舞っているという事は相当有能だな。

うちの国に欲しいくらいだ。


「わかりました、彼女達と挑戦してみます。マチュアさんよろしくお願い致します」


「こちらこそ、よろしくです」


「もう一つの条件はある人物を救出していただきたい事、これについてはダンジョン踏破後に改めてお教えします」


「ある人物の救出?」


「今は明かせません、当面はダンジョン攻略に集中してください」


「わかりました、ではマチュアさんの準備もあるでしょうから、私は先程の部屋で待つ感じでよいでしょうか?」


「そうですね、ではステラ案内してあげて」


「承知いたしました」


女王についていたもう一人の護衛役が部屋まで案内してくれた。

とりあえず、こちらは杖くらいしか用意するものはないが、マチュアさんが来るまで部屋で大人しく待っていよう。


──場所は変わり謁見室


女王はマチュアに対してある事を伝えていた。


「それではマチュア、深淵の迷宮での手筈頼みましたよ」


「承知いたしました。パルテ様が『アビスゲート』の器か確認を行うのが目的でございますね?」


「恐らくですがあの方は『ゲートキーパー』で間違いないでしょう。まさかこの地に現れるとは思っても見ませんでした。深淵の迷宮最深部に到達したら神滅の秘宝と接触させてください、本来の力を取り戻すでしょう」


「危険ではないでしょうか?神滅の秘宝と接触して離反されると、こちらにも打撃となりますが…」


「色仕掛けは失敗しましたからね、ですが彼女の雰囲気から誠実さを感じるので恐らく交渉は出来るでしょう。貴方は深淵の迷宮踏破を目指しなさい、邪魔者が現れそうな気配も感じますから」


「正教国家の者ですね、こちらも準備して向かいたいと存じます」


謁見室では、元魔王が知らない裏の謀略が進んでいく。

魔王軍、正教国家と魔法都市や複雑な利害関係が絡み合いこの世界が抱える大きな問題の核心に突き進んで行っているのを俺は全く知らなかった。

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