82. 真実の中の真実
魔法都市国家の裁判から、突如現れたこの国の女王との面会に場所を変え、彼女から衝撃的な事実を知らされた。
「私も、魔族だからです」
魔族を忌み嫌う人達の女王が何故魔族なのだろうか。
こちらが魔族と言うだけで死刑を決めるような国なのに疑問が尽きない。
「何故魔族がこの国の女王を努めているのかと疑問にお思いでしょう」
「はい、そのとおりです」
「パルテ様も自分で意志を持ち、魔王軍を抜けてきて平和へと邁進してきた。私もそれと同じで、この国を苦しめていた魔王軍から人々を守りこの国を作り上げたのです」
「何故魔族だった女王様が突然人を守るべく心変わりをしたのか知りたいですね」
「私にもわかりませんが、突然自我が芽生えたのですよ。苦しむ人の姿を見て悲しさが込み上げてきて守りたいという庇護欲が出てきたのです」
女王はただの魔族だったが人々が苦しんでいる姿を見て突然自我が芽生えた。
堕天使が魔族を操っているという話だったが、なにかキッカケがあったのだろうか。
「その話だけ聞くと、操られている魔族を開放して同じ様に改心させる方法がありそうだ…どうしてそうなったのか覚えていないですか?」
「突然意志が目覚めたとしか、何かの影響ではあると思いますが詳細はお答え出来かねます」
「そうですか…そこから皆を守り、更に国を立ち上げて国民を守るとは相当苦労したのではないでしょうか」
「ええ、魔族と言うだけで何度も命を狙われました。ですが困難を跳ね除け民に魔法の能力を伝え、信頼を勝ち取り魔法都市国家としてこの国を立ち上げることが出来たのです」
女王が立ち上げたこの魔法都市国家は将来のパルテセスへ向けた未来の姿だ。
ならばこの国の成り立ち全てを知りたい。
「もしよろしければ、この国の成り立ちについてお話できますでしょうか」
「理由をお聞かせ願えますでしょうか」
「私もここに飛ばされる前は、自分達の国を立ち上げたばかりでした。これから国を発展させるために参考にさせていただきたいのです」
女王はこちらの目を見据え静かに答えた。
「貴方様の国は、自分自身で作り上げるものです。私からの助言で国の方向が変わるような事があればついてきた民が悲しみますよ」
彼女の言葉には重みが感じられた。
これは長年国を治めて来た者の経験と苦労の積み重ねが垣間見える。
そうだ、自分の国は自分たちで作らなければならない、そう思ったらなんだか急いで帰りたくなってきた。
「ご意見ありがとうございます、それなら早く元の街に帰る努力をしないといけないですね、こちらに飛ばされた転送装置が使えればいいのですが…」
女王は自身の右手を静かに挙げて秘書の一人を呼ぶ。
彼女に耳打ちをして何かを伝えているようだ。
「来賓の客室がございますので、秘書のマチュアに案内させましょう。とりあえず本日は、そちらでごゆっくりとお過ごしください。」
「わかりました、お気遣いありがとうございます」
もうひとりの秘書がこちらに一礼して客室へ案内してくれるようだ。
金髪で長い前髪で片目を隠しているが何か秘密があるのだろうか。
容姿端麗の貴人というか騎士から秘書になったような美人の女性。
肉体も均整が取れており、魔法使いではなく明らかに前衛系の元騎士なのであろう。
「どうぞこちらへ」
マチュアに案内され謁見室を後にして客室へ案内される。
通された部屋は、上級貴族でも泊まるような豪華な客室であった。
牢屋で過ごしていた囚人生活とここでは雲泥の差だな。
「夕食の用意が出来ましたら、またお伺いいたします。それではごゆるりとお過ごしください」
そう言い残して彼女は本来の業務へと戻っていった。
俺は、客室に備え付けらたベットの上に寝転がり、これからのことを考える。
彼女は魔族一人でこの強大な国家をどうやって作り上げたのだろうか。
知りたいことは山程あったが彼女は恐らく教えてくれないだろう。
色々考えていたら瞼が重くなり目を閉じて静かに横になっていた。
──場所は替わり謁見室
静けさを取り戻した部屋で玉座の裏にあるカーテンの奥から何者かの声が発せられる。
『シャルミアよ…あの元魔王は使えそうか…?』
「はい、こちら側の仲間に引き入れるべきかと存じます」
『我らの目的を達成するには、まだまだ力が必要だ。元魔王の協力が得られれば目的達成に向けて大きく前進するだろう』
「ですが、まだあの方は本来の力を取り戻していないようです。現在は全盛期の三割程度でしょうか」
『そうか…ならば、あの地に赴かせる必要があるな』
「わかりました、そちらの手配はこちらでいたしましょう」
『しかし、元魔王が加わったとしてもまだ足りぬな』
「それでしたら、正教国家司教の救出も進言しては如何でしょうか」
『司教フレミアをか?だが元魔王とは言え一人であの地に赴くのは難しかろう」
「神減の秘宝があれば状況打破には近づくかと」
『この地に眠る秘宝を渡すというのか?いささか早計ではないか』
「会話した限り、あの方は信頼できそうです。恐らくですが器が異なるようです」
『お主がそう感じるのか…ならば信じよう。では今後の手筈は任せた』
「仰せのままに、ところであの方は頂いてもよろしいでしょうか?」
『…シャルミアよ、お主の趣味も程々にな。拒絶されては元も子もないぞ」
「重々承知しております。ですがあの方を見ていると、どうしても抑えられなくて…」
女王は舌なめずりをしながら不気味な笑顔をみせていた。
『まあ好きにするが良い…我らの悲願である「神降ろし」を実現するために手段は選ぶな…』
──場所は替わり客間
俺はいつの間にか寝てしまっていた。
寝心地の悪い独房の固いベットで数日寝ていたせいだろうか、つい自分たちの街で過ごすようにリラックスして休んでしまった。
体を伸ばして窓際に来て外を見ると日が沈みすっかり夜になっているようだ。
しばらくすると扉をノックする音が部屋に響く。
「どうぞ」
「失礼します。食事とお酒をお持ちしました」
部屋に現れたのは先程こちらに案内してくれたマチュアだった。
滑車付きのワゴンのようなものに食事を乗せて持ってきてくれたようだ。
彼女はテーブルの上に持ってきた物を並べてくれて食事が出来るように、準備を整えてくれる。
「どうぞごゆっくりとお過ごしください」
「わかりました、ありがとう」
彼女が部屋から立ち去ろうとしたが、出る間際に小さな声でこちらに伝えてきた。
「夜はお気をつけください…」
え?今この秘書さんお気をつけくださいと言ったか?
何故だか彼女の顔が若干赤らめているように感じた。
相手は女王の秘書だよな?何故こちらに気をつけるように進言するんだろうか。
真意は謎だったが何かあるのかもしれない、一応気をつけておくか。
用意された食事に念の為に毒物感知を使ったが特に問題はないようだ。
豪華な食事を食べて、久しぶりのお酒も堪能してみた。
果実酒だろうか、とても飲みやすくてグイグイいけそうだったがこの体がどれくらいアルコールに強いのかわからなかったので一杯で我慢しておく。
食事が終わりお腹が満足した所で、ここ数日お風呂に入っていなかったので、別室に用意されていたお湯と石鹸で体を綺麗に洗ってサッパリした。
身体を乾かして落ち着いたところで用意されていたローブのような寝間着へと着替えベットで横になる。
温まった体が心地よくお酒も入っていたことでウトウトしていた時。
入口の扉が静かに開き誰かが入って来たような雰囲気を感じた。
部屋に侵入した人物は静かにベットの上に乗りこちらへと近づいてくる。
俺は眠くて重い瞼を必死に薄目で確認しようとした。
何とそこには体のラインが透けて見えるような薄布の衣装で女王が自分の上に座って怪しい目でこちらを見つめていた。
驚きの出来事に一瞬で目が覚めてしまい、彼女と目があう。
「アラ、おこしてしまったかしら?」
「女王様!?いったい何事ですか!!」
「ウフフ…実はわたくし…可愛らしい女の子が大好きなのですよ…」
そう言いつつ、顔を眼の前に近づけて来てこちらの唇を奪う。
自身の身体を密着させて、こちらの胸に指を這わせ女性が感じるところを的確に責めてくる。
声にならない呻き声が室内に響き渡っていく。
秘書が「気をつけてください」と言っていたのはこの事だったのかー!?
まさか国を治める女王が女好きだったとは、驚きすぎて声も出せない。
俺は遠く離れた異国の地で何故か女性相手に貞操の危機を迎えるのであった。
一日置き(隔日)の19時から21時頃で更新予定。
月曜日は投稿お休みです。




