81. 裁判結果に異議あり!
見知らぬ土地に飛ばされ突然裁判に掛けられて俺の罪状が告げられた。
「よって貴殿の罪状は『死罪』である!」
相手の言葉を聞いて呆然としてしまった。
死罪?死罪と言ったか?
俺は不可抗力でこちら都市に転移されたと正直に証言して伝えたよな?
証言した内容を一切考慮せず、不法侵入と扉の破壊だけで死刑を告げるほどこちらの司法は乱暴な決め方なのだろうか?
いや…恐らく違う、予想だが俺が魔族と言うだけで死刑を選択したのだ。
傍聴席の民衆が歓喜に震えているのを見て恐らくそういう事なのだろう。
魔族というだけで、あまりにも理不尽ではないか。
いや、ここにいる人達は、魔族に家族や友を殺されてきた人なのだろう。
その怒りは、魔王となった俺が責任を持って全部引き受けるべきなのだろうか。
…答えは否だ。
確かに魔王軍が人々を苦しめていたのは聞いている。
だが俺は、なりゆきで魔王軍を抜けてきたとは言え、みんなが苦しむ状況を打破するため今まで戦い続けていたのではないか。
だったらこんなところで終わる訳にはいかない!
大声で俺は叫び自分の罪状について否定する。
「異議だ!異議を申し立てる!」
俺の大声の叫びに裁判官含め傍聴席に居た全員が驚く。
しかし、隣にいるボルダックからは冷静に異議の拒否が告げられた。
「残念ながら貴方に異議を申し立てる権利はありません、魔族裁判では裁判長の言葉が絶対です」
裁判が異議申し立ても出来ずただ刑を受けろだと?
恐らくこちらが抵抗しないのを見て恐らく強気に出ているのだと感じた俺は大声で叫ぶ。
「ふざけるな!情状酌量の余地もなく死罪など受け入れられるか!」
こうなったら自分自身の本当の恐ろしさを晒して徹底抗戦の構えを見せて強制脱出でも狙ってやる。
「闇の手よ!私の拘束を壊せ!」
背中から現れた闇の手は、俺の手に嵌められていた手枷を破壊して両手を自由にした。
周囲で傍聴していた民衆含め、闇の手により自由になったこちらを見て皆が動揺しだした、騎士たちも周囲を包囲して取り囲もうとしている。
だが俺は間髪入れずに次の行動へ動き出す。
「俺の杖を持って来い!」
もう一本の闇の手は、遠くに置いてあった杖を俺の手元に持ってくる。
最強の武器を手にした状態でまず、自身の恐ろしさを告げるため
「ボルダックよ!ここにいる全員に伝えてくれ!」
「な、なんでしょうか?」
「我が名を聞け!我は魔王バルテオスだ!」
俺は、抑えていた魔法力と力を開放する。
周囲一体に恐ろしいほど膨大な魔力を放ち何人もの人間が恐怖で失神して倒れていく。
自分の名前が響き渡ったのか、傍聴席に居た一般民衆はパニックとなり全員が一斉に外へ逃げ出す。
さすがの迫力に騎士たちも及び腰になったところで、ボルダックが再度問いかけてくる。
「貴殿が魔王バルテオスというのは本当なのか?」
「事実だ!私は魔王を辞めて平和に暮らしていた。先ほど証言した通り、私は争いを望まないし、この国の人にも危害を加える気はなかったが気が変わった」
一息置いて更にこちらの演説を続けた。
「私をただこの国から出て帰りたいだけだ、だがこちらに危害を加えるというならこちらも容赦しない。この杖を使い魔法都市を滅ぼす力を開放するが、それでもいいのか!?」
俺は自身の杖に魔力を込めはじめ強大な破壊力を持たせ始めた。
力の影響で周囲に破壊の威力が伝わり地面が揺れ始め建物から小さな破片が降り落ちて来た。
周囲が恐怖に飲み込まれ混乱の様相を見せ騎士たちも攻撃を躊躇している中で裁判所内に大きな声が響き渡る。
「お待ちください!」
現れたのは豪華な装飾が施された、頭から全身を覆い魔道士に似た雰囲気の漆黒のローブに包まれた如何にも高位の立場に見えるような女性と護衛の従者二人だった。
突然現れた女性の声を聞き、周囲に居た人物たちが次々と跪き始める
片足を地面につけ敬礼とも言える姿で全員が頭を垂れていた。
恐らくだが現れた人物はこの国で相当な地位である事は間違いない。
もしかすると国王クラスの要人かと推測される。
俺は一旦杖に注ぎ込んでいた力の蓄積を止めて状況の推移を見守る。
相手の目的が不明だが何故この危険な場所に自らの姿を現したのか知るためだ。
「ノノスレプヌイト、イウィチ、ソグロジルプイム (この方の身柄は私が預かります)」
謎の人物が何かを告げて裁判所は静まり返るが一人だけ、反論を述べた。
ボルダックがこちらにもわかるように、伝え聞かせる。
「女王様!こちらの人物は魔王の可能性がある人物です!身分を預かるなど到底承服出来かねます」
彼の言葉を聞いて理解した、彼女はこの国の女王なのだ。
しかし、何故女王自ら危険を犯してまでこの場所に乗り込んで来たのだろう?
そんな疑問を晴らすべくかこちらに視線を送りこちらへと目的を告げてきた。
「パルテ様でしたか、よろしければ少し会談の場を設けさせていただいてもよろしいでしょうか?」
彼女の目的はこちらとの対話であった。
どさくさに紛れて逃げようと考えていたが女王自らの要求であれば断る道理はない。
「わかりました、伺いましょう」
俺は杖に溜め込んでいた魔力を自分自身の魔力へ還元して力を失わせて元の形状へ戻す。
以前練習していたがどうやら上手くいったようだ。
「では、こちらにどうぞ」
俺は女王に促されるまま素直に後ろへ着いていく。
後方にいる女性秘書二人は、身のこなしから見て相当手練れの戦士だ。
動きに全くスキが無い、こちらが攻撃しても即対処されそうな雰囲気を感じさせる。
下手したらこの二人はセレネと同格位の強さがあるのではないだろうか。
まさかこんな辺境の地で勇者に匹敵するような戦士が秘書をやっているなんて、何が彼女達をここまで強くさせたのか不思議だ。
疑問は尽きないが、大人しく会談の場まで付き添うようにしよう。
裁判所から歩いて数分程度の場所に王城と言うか巨大な教会にも見えるような不思議な建物がそびえ立つ。
まるで、向こうの世界で言うサクラダファミリアみたいな豪華な建物だな。
入口の騎士たちも槍を立て敬礼の意志を示しながらそのまま建物の中に通されて長い通路を奥へと進む。
最深部に辿り着くと巨大な扉があり、中へと皆が入り込んでいく。
室内は高い天所に赤い絨毯が敷かれ豪華な装飾に彩られた謁見室とも言える場所であった。
秘書の一人が座り心地の良さそうな豪華な椅子を室内へと持ち込み玉座の正面へと配置して彼女は座るようにこちらに促す。
「質素な椅子で申し訳ございませんが、どうぞお座りください」
俺は用意された椅子に座り、相手も玉座と言える豪華な椅子に静かに腰掛けてこちらを見据えながら問いかけて来た。
「さて、まず自己紹介から…私は魔法都市アルカナアークの女王『シャルミア・アルカナアーク』と申します。
「私は魔道士パルテ…元魔王バルテオスです」
「貴方様が魔王バルテオス…こちらは嘘偽りないのででしょうか?」
「只の魔族が魔王を騙ると思いますか?間違いなく本人ですよ。今は名前をパルテに変えていますが」
「そうですか、まさか魔王様がこんな辺境の地に現れるとは思ってもみませんでした」
「先ほど裁判でも証言しましたが、私は謎の祠にある装置でこの地に飛ばされて来たんです」
「こちらに来たのは自分の意志ではないと?」
「そうです、いきなり転移で大陸横断させられて困っていたところです」
「魔王バルテオスは最悪最強でこの世界にいる人間たちを抹殺することを躊躇しないと伺ったことがございますが何故抵抗しなかったのでしょうか」
「私は争いを好まないからです。兵士に囲まれた時に下手に抵抗するとそちらに死者が出かねないので無抵抗で捕まったんです」
「噂で聞く魔王様とは真逆の立ち振舞ですね」
「よく言われるけど、私は只のお飾り魔王だったからです。魔王軍の振る舞いに嫌気が差して逃げて来たというわけです、しかし何故そんな事が気になるんですか?」
女王は一呼吸置いて意を決したように俺に正体を明かした。
「実は…私も魔族だからです」
彼女は頭から被っていたローブを下ろし素顔を見せてきた。
白銀の綺麗な長髪に大人の女性の顔立ちと女王の貫禄を見せる美しい素顔。
だが頭の左右に羊の角のような魔族特有のシンボルが存在していた。
何故、魔族の彼女がこの辺境の地で女王を努めているのだろう?
俺は改めてこの魔法都市国家について問いかけて見ることにした。
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