74. ガヴェリアとの交渉に挑もう
ガンギルダで国王との会談まで手こずるかと思ったが、すんなり応じてくれたので、予定より早く鉱山発見についての交渉が終わってしまった。
ルコットの動向が不明なため、一旦パルテセスへ帰還して彼女が今何処にいるかを確認しに向かう。
ドワーフ工房にて聞いてみたところ既にガヴェリアへ出発した後だと聞き、直ぐに向かっても説明が終わっていないかもしれないため、自宅で一泊して明日に向かう事にした。
──翌日
俺は朝から起きて、いつもの正装に着替えてガヴェリアへ向かった。
到着後入口の門番に、ルコットと七賢人の面会予約を行っていた旨を伝え中に入る。
以前来訪した会議場にて久しぶりに七賢人との再開だ。
ボーマン氏とは先日会ったばかりだが、国の代表として礼節を持って挑もう。
「七賢人の皆様、お久しゅうございます。パルテセス国盟主パルテ参じました」
会見の口火を切ったのは政治のボーマンだった。
「これは、久しいのうパルテ殿、戴冠式以来か…要件はルコットから聞いておる。堅苦しい挨拶は抜いて交渉を始めようではないか」
「はい、それではまずガンギルダとの交渉結果について、お話させていただきます」
パルテセスの鉱石採掘権の譲渡に際し、ガンギルダとガヴェリアによる武器防具の調達、魔王軍との戦いで損耗が大きいため費用を抑えて納入して欲しいと七賢人に要望を伝える。
こちらからの提案についてボーマンが交渉の意向について回答した。
「なるほど、ガンギルダからの武器防具調達依頼か…わかったそちらについては、二国間で交渉して出来るだけ費用を抑えての意向を汲み、交渉には商業のマルタが赴こう」
「承知しました、今後についてご対応お願いいたします」
「次に鉱石採掘の権利だが、とりあえず前金で金貨一万、残り採掘量によって五千枚追加を用意しよう、それでどうだね?」
──来た。
今回ガヴェリアと交渉する時に、事前に考えていたことがあった。
鉱石採掘権利の金銭は惜しいが、最大の目的について交渉しよう。
「いえ、金銭的な取引ではなく別の条件で提案させていただきます、本人の意思確認はまだですが、ルコットさんをパルテセス国にいただきたいと存じます」
「なんだって!?」
七賢人は俺の言葉を聞いて非常に驚いている。
それはそうだ、ガヴェリアにとっても重要な人物を他国へ引き抜きたい。
普通に考えれば受け入れがたい提案だ、しかしこちらの意思は決まっている。
「ルコットさんはドイラム村の時より街の発展や建物の建築等幅広く助けていただきました。金銭的な取引では普通応じられないかと存じますが、彼女は我が国の発展にとって無くてはならない貴重な人材です。採掘権と引き換えに是非引き抜きたいです」
──ドン!
「ダメだ!絶対に許さんぞ!!」
机を叩き大きな声で叫んできたのは建築のドラクだった。
ルコットの父親でもあるから、納得できないのはわかる。
恐らくだけどドワーフ国で娘に自分の跡を継がせたいのだろう。
「最終的な判断は、彼女の意思にお任せします。ですが私は真剣に彼女が欲しいのです」
俺の言葉を後ろで聞いていたルコットが突然笑い出した。
こちらは至って真面目なのだが何が面白いのだろうか。
だが彼女から出てきた言葉は、全員が驚くような言葉だった。
「なんだかパルテ様の言葉聞いてると、私へのプロポーズみたいだね」
「え、いや…そういうつもりではないんだけど…」
ルコットは目を閉じて自身の胸に手を当て静かに考えている。
これからの自分の在り方、ガヴェリアとパルテセスの事について想いを巡らせているのであろう。
しばらくした後、彼女は答えが決まったのか全員に自分の意思を伝えた。
「七賢人の皆さん、そしてお父さん、私はパルテセスに行きます」
「ルコット!なんだって父さんは許さんぞ!」
「お父さん聞いて、私はパルテセスに行ってから自由に、そして伸び伸びと好きな建築に没頭できた。続けて私を国の防衛隊長としても認めて貰い、これも偏に私の事を信頼して頼ってくれるパルテ様がいたからです」
「いや、しかしお前はこの国の騎士団長でもあるんだぞ…」
「ガヴェリアでは色々な立場が重圧となって好きな事に没頭できませんでした。パルテセスで、私は凄く自由に過ごせているんです。だから決意は変わりません」
親子のやり取りを聞いていたボーマンが大きな声で笑いながら、ドラクに対して嗜めるように告げる。
「ドラクよ、諦めるんだな。ルコットの意思は本気に見える、自分の娘を気持ちよく送り出したらどうだ?」
ドラクは考えている。
今までは臨時応援でパルテセスに居たが、完全に引き抜かれるとなると父親として思うところがあるのであろう。
しばらくして考えがまとまったのか、自身の気持ちを告げてきた。
「パルテ殿…娘のことを頼んだ」
「無論です、彼女は大事な人物です。我が国でも大切に扱わせていただきます」
続けてボーマンがこれからの事をルコットに対して告げる。
「では、防衛隊長は副隊長だったラナトへ引き継ごう。ルコットもそれでいいか?」
「はい、彼女なら後任として任せられる人材だと思います」
ルコットの移籍を受けて、改めてボーマンからガヴェリアとパルテセスの関係について改めて問われる。
「以前約束した、ガヴェリアが危機に陥った時には変わらず助けてもらえるのだろう?」
「もちろんです、その約束については引き続き履行します」
「わかった!では七賢人はルコットのパルテセス行きを支持しよう」
会談が終わり、俺はパルテセスに帰ることにした。
ルコットについては、家族水入らずで過ごした後に戻ってくるように伝えておく。
そんな中、別れ際にルコットがある事を提案してきた。
「パルテ様、ひとつ考えて欲しいことがあるんだけど」
「なんだい考えて欲しい事って」
「今日の件もそうだけどパルテ様は、私も含め優しく対等に接してくれてるのはわかる、でもその行動で好意を寄せられるのを自覚していない」
「え、そ…そうかな?でも今俺女の子だぞ」
「パルテ様の体は女性だけど、以前から接してる人たちは男性と見てる部分が多いよ。なんだろう魂の違いでそう感じるのかな…」
「そんな事があるのか…でも生まれ持った性分だしそう簡単には変えられないよ」
「あとリブラさんとライラさんに一途なのは解るけど、みんなを幸せにしたいというなら貴方に好意を寄せる女性の事も少しは考えて欲しいな、それだけ教えておくね」
ルコットの言葉には重みがあった。
リブラとライラ二人に対してだけ自分の気持ちを与えればいいと思っていた。
でも、それによって自分に好意を寄せてくれる人たちは、少なからず不幸になるかもしれない。
ハーレムなんて望まないと考えていただけど、彼女の指摘は凄く考えさせられる事だった。
二人のことを幸せにしながら、皆の幸せも考えなければならない。
ライラの言っていた皆を幸せにする課題が俺に非常に重くのしかかって来て心を締め付けた、
4日月曜日は投稿お休みさせていただきます。
5日から再開予定です。




