73. 驚きの鉱石発見でパルテセスに光が!?
パルテセスへの新規移住者がやってきて、マルガリータとヒルダに加え三十人ほど住人が増えて一週間ほどが経過した。
今ある問題と言えば、移住してきた人達の多くがスタインブッケやグレインダイク領地で夫を亡くした未亡人や子どもたちが多く、男手が少ない。
ゴーレムでも力仕事は出来るが、物資運搬以上の細かい仕事は指示出来ないので、できれば男性の移住者も増やしたいとこでもある。
そんな事を色々考えていた時に、突然ルコットが俺の元にやってきた。
「パルテ様!ちょっと山の方に来てくれないか、石ミミズがやばいもの見つけたんだ!」
「なんだ、やばいものって?」
「とにかく急ぎで来て欲しい」
ルコットに連れられ、パルテセス近くにある山に向かうと石ミミズが掘ったと思われる直径1メートル前後の太さの狭い穴があった。
彼女がランタンを手に持ちしゃがみながら中に入って行く。
俺も続いて一緒に進んで行くとしばらくして少しだけ開けた場所に出た。
「ここだよ、これ見てくれない?」
ルコットが石だらけの壁にランタンで明かりを当てると薄青い光と、光源を反射して黒光りする部分があるのがわかる。
ただ、この世界の鉱石については全くの素人なのでさっぱりわからないので彼女に聞いてみよう。
「なんか青と黒く光る石があるね、これなんだい?」
「パルテ様知らないのか…これはミスリル鉱石と黒魔石だよ!」
「ミスリルはなんとなく価値があるのはわかる、黒魔石って価値があるの?」
「なに言ってるの!価値があるってもんじゃない。魔法の力を増幅できる魔晶石の原料となる鉱石で非常にレアな素材なんだよ!」
「ちなみにざっと見積もってどれくらいの価値がある?」
「ここだけだと、わからないけど…もしこの鉱脈がずっと続いているとしたら金貨数万から十万枚以上の価値があると思う…」
「マジで!?そんなに高いの!?」
「黒魔石ってミスリル鉱石に長期間マナが蓄積して色が失われ黒くなるものほど価値が高く、ここにあるものは完全な黒なのでかなり高価ですよ」
ルコットの言う通りであればここを開発して、採掘坑道を作ったらパルテセスの大きな資金源になりそうだ。
ひとつ引っかかる事がある、少し悩んでいたところで彼女から一つ提案を進言された。
「パルテ様、相談なんだけどここの採掘権をガヴェリアに譲ったらどうかな?」
「採掘権を売るってこと?でもそうしたらこちらは儲けられないんじゃ」
「いや、あくまで売るのは採掘権利だけで、掘り出された鉱石は採掘量にあわせてガヴェリアに買い取って貰う、それだけでも莫大な利益が手に入ると思うよ」
「なるほど、それならこちらも儲けられるな…でもちょっと待ってくれ」
「何か問題でもありますか?」
「いや、ここは元々ガンギルダ領地で割譲して貰った土地だから、価値のある鉱脈見つけたから、それを他国独占で売るのは後々問題が起きないか?」
「それはそうですけど、既にパルテセスの土地だからよくないですか?」
「いや、どこから情報が流れるかわからないし、ガンギルダとは出来るだけ友好な関係を築きたいんだ、波風は立てたくない」
「パルテ様がそう言うなら…ではどうしますか?」
「とりあえず、ガンギルダに報告してくるよ。ルコットの方はガヴェリアと交渉出来る場をセッティングして貰えないか?両国の落としどころを見つけてくるよ、念のため数日の猶予は見ておいて」
「わかりました。では、私は一旦ガヴェリアに戻って待っていますね」
「ああ、頼む」
ルコットにガヴェリアへの事前報告と交渉の場を任せて俺はガンギルダへ向かうことにしよう。
といっても相手は国王だし、直ぐ行って即面会できるとは限らない。
数日の猶予は見たほうがいいな。
俺は街の方まで一旦戻り、ライラに頼んで宿代を少し借りてガンギルダに向かうことを伝えた。
今回も国王との面会なので、綺麗な格好へ着替えていく。
しばらく飛んでからガンギルダへと到着し、入管税を払い国内へと入り王城へと向かう。
まさか国王に合わせてくれと突然言っても不審者扱いされるだけだ、ここはクラリスの力を借りようと考えた。
王城入口にいる兵士に、貴族っぽく丁寧な言葉で面会を求めよう。
「お忙しい所申し訳ございません、実は皇女近衛騎士隊長のクラリス様に御用があり、参上いたしました」
「クラリス殿に?貴方は何者だ?」
「はい、私はパルテセスのパルテと申します、私のお名前を伝えていただければ恐らくお解りいただけるかと…」
「しばし待たれよ」
門番の兵の一人が王城内に入っていって彼女が来てくれるのを期待する。
しばらくすると奥の方からクラリスが現れてこちらに気づいてくれた。
「パルテ様どうしたんですか?突然の来訪など」
「クラリス突然済まない、王子…じゃなかった国王との面会を取り憑いで貰えないだろうか?」
「えっ!?国王様との面会ですか…パルテ様、通常国家間で重鎮と面会を行うには、事前に特使を送って約束を取り付けて、会談日時を決めてお会いするものなのですよ…」
「そ、そうなのか…すまない。まだ新任で国家間の作法とか全然知らなかったんだ。とりあえず確認したい事があって突然押しかけてしまった」
「わかりました、念のためお伺いしてきます」
クラリスに窘められてしまった、彼女の指摘もごもっともだ。
国家の重鎮同士が面会する時に友達感覚で突然会いに来るなんて確かに常識がないよな、今後気をつけるとしよう。
時を経てクラリスが約束を取り付けてくれたのか戻ってきてくれた。
「国王様がお会いになられるそうです、どうぞこちらに」
どうやらクラリスが新国王に上手く取り憑いでくれたようだ。
謁見室に通され久しぶりの国王との面会だ、片膝をつき礼節を持って挑まなければならない。
「突然面会の来訪について申し訳ございません。火急を要する案件がございまして大変ご無礼かと存じますがここに馳せ参じました」
「なに、貴方の面会なら断る訳にもいかない。もしかして私の妃になる返事でも持ってきたのかな?」
新国王は笑顔で結婚の話を蒸し返してきた。
まあ、今回は無作法な来訪なのであまり強く言えないから穏便に話そう。
「ご期待の添えず申し訳ございません、今回はパルテセスに非常に貴重な鉱脈が見つかったので念のためお伝えしようと馳せ参じました」
「ほう、貴重な鉱脈とは…?」
「ミスリル鉱石に黒魔石の鉱脈です、ざっと見積もって金貨数万枚の価値がございます」
こちらの申告に対して国王の返事は意外にもあっさりとしたものだった。
「あの領地は、既に貴方達に割譲したものだ好きにするといい」
「いえ、そうもいきません、実はガヴェリアから鉱山の開発権について購入を要望されているのです。元はガンギルダの領地でしたから事前に国王に話を通し二国間の落としどころを見つけたいと考えております」
「先ほども伝えた通り、あの領地は既に割譲したので貴方達のものだ。しかしそれでは納得できないと?」
「はい、私達は広大な土地をいただいたのです、お互いの国で良好な関係を築きたいので事前にお伝えして利益の一部を還元したいと考えています」
国王は、顎に手を当て何かを考えているようだ。
俺からの突然の申し出に困惑しているのだろうか、いつもより長めに思考を巡らされているように見える。
「わかった、ではガヴェリア国から武器や防具について費用を抑えて入手出来るよう手配して欲しい、魔王軍との戦いでかなり損耗しているのでな」
「承知しました、ガヴェリア国と交渉の材料として提案させていただきます」
話し合いが終わり王子はリラックスした感じでこちらに語りかけてきた。
「しかし、貴方は義理堅い人だな…秘密にしてもよいだろうに」
「これは私の性分というか、お互い持ちつ持たれつでいきたい気持ちがどうも抑えられなくて…相手に借りたままでは嫌なのです」
「ますます、貴方を妃として迎えたくなったよ、まあ考えておいてくれ」
「今のところ心変わりはありませんが、ありがとうございます」
王子との話し合いも終わり、次はガヴェリアとの交渉だ。
二国間の落としどころを見つけるのも俺の仕事だ、頑張るとしよう。
次の投稿は3日か4日予定です。




