69. ガンギルダ国戴冠式に向けて準備するぞ
ガンギルダ国の問題を解決して三週間ほどが過ぎた。
俺は二人の嫁との結婚を報告して簡単な式を準備してたのだけれど、そんな折、ドイラム村改めパルテセス共生国家に皇女近衛騎士隊のリィンが突然やって来た。
「お久しゅうございます、パルテ様。本日は戴冠式の招待状をお持ちしました」
ガンギルダでは、王位継承が正式に行われ、新国王の戴冠式が一週間後に開かれるらしい。
式に出るのはいいが一つ問題があった。
それは国家の式典に向かうための正装が無い。
完全に失念していた。
まさか国家行事に普段着で行くわけにもいかず頭を抱えていたところで、リィンに相談してみることにした。
衣装の仕立てには通常二週間程度掛かるらしい。
このままでは戴冠式に間に合わない。
そんな俺にリィンはある事を提案してきた。
「ここからそう遠くないダルシガイアという街に『裁縫店ベェリベル』という店がございます。凄腕の裁縫職人達が揃っており、私の知りあいもおりますので、もしかしたら間に合うかもしれません」
彼女の計らいで紹介状を書いてもらい、俺はリブラとライラを連れて急遽街まで向かうことにした。
「リィンさん、ありがとう!直ぐに飛んで行ってみるよ」
「お気をつけて」
俺達の村から飛翔魔法を使い三十分ほど。
ダルシガイアの街へ到着し、街の人に場所を聞きながら『裁縫店ベェリベル』へ向かう。
店の扉を押し開けた瞬間、静かな室内に布を織ったり断つ音が重なり、まるで戦場のようは熱気が広がっていた。
カウンターには、白髪まじりの髪を後ろで束ねた女性がいた。
針を持つ指先は驚くほど滑らかで、こちらを一瞥するとぶっきらぼうに言った。
「立て込んでるから、新規依頼なら一ヶ月後だよ、何の用だい?」
こちらへの問いは非常に短く、最低限の言葉だけでどうやら相当忙しそうだ。
俺は息を整えて、相手に目的と用件を告げる。
「今から一週間後、ガンギルダ国にて戴冠式が行われます。実は式典に向かう際の礼服とドレス二着をお願いしたくて……」
俺の言葉を聞いた瞬間、マダムの目付きが鋭くなった。
恐らく無謀な依頼に対しての警戒か、それとも挑戦を前にした職人の本能か。
判断はつかないが、確かに空気が変わった。
「その戴冠式の為に貴族からの依頼が山ほと来てるんだよ、五日もないのに作れって?ふざけてるのかい?」
「無茶なお願いだと言うのは分かっています、でも、次期国王から直接頂いた招待で……どうしても断われなくて。こちらをご紹介していただて、藁にもすがる思いで来ました」
「次期国王から直接だって?その証拠はあるのかい?」
俺はリィンから貰った紹介状をマダムに差し出した。
女性は目を見開き、表情を変えた。
「リィン嬢ちゃんからの紹介状かい…こりゃ断れないね」
「受けていただけるんですか?」
「ああ、ヴァリエール家には恩義がある、裁縫店ベェリベルの名にかけて本気でやってやるよ」
「ありがとうございます!どれくらいで……」
「三日だ、おいラウネ!この三人の採寸すぐやりな!」
「は、はい!」
奥で作業していた二十代前後で眼鏡の三つ編みの若い女性が現れて、俺達は更衣室のような部屋へと案内された。
「では、下着になってください」
「え?脱ぐの?」
「はい、正確な採寸のためです!」
彼女に言われるがまま全員で下着姿になると、彼女はぽつりと呟いた。
「なんか……皆さん色気のない下着ですねえ……」
「えっ……そ、そうなの?」
「王族の式典にでるのなら、下着も綺麗にしないと恥をかきますよ」
彼女の言うことはもっともだ。
確かに女性なら下着も綺麗にして行く必要がある。
俺は思わず頼み込んだ。
「もしよかったら下着も含めてコーディネイトしてもらえませんか?どうも近くにいる人達はその辺りが疎くて…」
「解りました!お任せください、それではドレス三着でよろしいですか?」
「いえ、私だけ礼服で、二人はドレスです」
「え?女性なのに礼服ですか?」
「私はある国の代表として行くので、一人の盟主としてです」
「なるほど…女性盟主として赴くためですか…わかりましたおまかせください!ドレスも同じ様に来賓向けで仕立てますね」
彼女は驚くほどの速さで採寸進め、紙の上に数字を書き込んでいく。
動きを見て解る、彼女は仕事が出来る人間だ。
「では、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「私がパルテ、こちらがライラでその隣がリブラです」
「わかりました、ではお着替え後に代金をお願いします、礼服とドレス二着で……特急料金込みで金貨百二十枚です」
俺は提示されたこの世界の貨幣価値が解っていない。
金額についてこっそりとライラに思念通話で問いかけてみた。
「(ライラお金足りるか?どれくらいの価値だか解らないんだが)」
「(お金は足りますが……平民が稼ぐ三年分の年収位ですね)」
「(そんなに高いの!?)」
「(はい、貴族の衣装とはそういうものです)」
痛い出費だが、国家行事に出る以上、必要経費だ。
これから国を動かすなら、こういう場面も避けて通れない。
お店に代金を支払い、衣装が出来上がる三日後に再来訪する事にした。
しかし、困った。
これからも国賓として他国へ挨拶へ行くときの作法も含め相談できる相手がパルテセスにはいない。
姫様や近衛騎士対がいた時はよかったが今後のことも考えて相談役が欲しいところだ。
色々思考を巡らせながらパルテセスへ戻りライラへ相談してみると彼女はこういった。
「お任せください、ちょっと調べてきます」
──三日後
裁縫店ベェリベルへ衣装を受け取りに向かい、以前お世話してくれたラウネがフィティングも兼ねて試着室で着替えてみることにした。
うん、流石にお勧めしていただいただけあって凄くいい感じの衣装。
俺の礼服はロイヤルブルーにシルバー組み合わせた貴族が格式を表している、このまま結婚式も出来そうな装いだ。
リブラとライラのドレスはシャンパンゴールドを基調とした綺羅びやかさと気品を醸し出す衣装だ。
何時もは戦闘服の彼女達だが、女性らしさ引き立て凄く似合っている。
「二人とも綺麗だな」
「パルテ様こそ、よくお似合いです」
試着が終わり、衣装の問題は片付いたので国へ持ち帰り戴冠式に備えることにした。
─二日後
ガンギルダから迎えの馬車と共にクラリスが同乗してやって来てくれた。
俺達は村の全員に留守にする旨を伝え戴冠式に向かうことにした。
道中でクラリスと衣装や宝飾品、お化粧等色々相談してみたが既に姫様が手配済みらしい。
こちらの事情を既に察して手配してくれているとはさすが姫様だ。
俺達三人は安心してガンギルダへと向かうことにした。
月曜日は投稿お休みです。
4/29 投稿で第一部完結となります。




