68. ドイラム村独立と二人との結婚
宿屋でのお風呂騒動の後、宿屋での騒がしい夜は、まあ、いろいろあった。
けれど、その話はまた別の機会に譲るとして──。
翌朝。
まだ空気が冷たい時間にガンギルダ国中央に建っていた教会を俺の杖で粉々にした。
跡形も残らない木っ端微塵とはこういう事を言うのだろう。
ライラの話だと、教会に設置されていた鐘と教会の力場が民衆の洗脳に使われていたらしい。
元凶が消えたことでガンギルダの人々はようやく自分の意思を取り戻した。
街には、久しぶりに普通の活気が取り戻しつつある。
その後の国家運営については王子に任せることにして俺達は帰る準備をした。
「ありがとうございました、これでガンギルダも復活します」
「こちらこそ、では戴冠式が決まりましたらご連絡ください、お祝いにまいります」
王子と固い握手を交わし、俺達はドイラム村に戻った。
これからは、王子がガンギルダの運営を進めて行くことになるだろう。
道のりは困難だろうが彼の性格を鑑みれば求心力は高く恐らく上手く行くと信じている。
飛翔魔法を使い村へ帰還すると、まずは皇女近衛騎士隊の帰還手続きを済ませた。
彼女達はよく働いてくれたが、本来の役目は姫様の護衛だ。
村を去る彼女達には、ガンギルダと魔王軍の戦いで夫を亡くした未亡人たちを村で受け入れる準備がある事も伝えておいた。
人手は一時的に減るが、往来が自由になればまた村人も増えていくだろう。
大きな仕事をひとつ終えたがまだやる事は山ほどある。
俺達は全員を集めてこれからの話しすることにした。
「みんな聞いてくれ!ドイラム村はガンギルダ国から独立して単一領地として国家運営できる事になった」
その瞬間、場がざわついた。
いつかやってくれるだろうと思ったのか皆が歓迎の雄叫びで祝福してくれた。
次に、新国家の名前を決める話になった。
「そこで新国家樹立に伴い、新しい領地の名前を募集したい」
「はいっ!」
「はい、ルナリーくん」
「ここは、パルテ様が育てた村ですし、パルテ国でどうでしょうか?」
「いや、自分の名前が国になるのは恥ずかしいな、別の案で頼む」
皆で悩んでいるとライラが手を挙げてた。
「では、パルテ様が女王として君臨するので、プリンセスと合わせて……パルテセス国ってのはどうでしょうか?」
「女王ってクイーンじゃないのか?何故にプリンセス?」
「クイーンは完成された威厳ある王妃という意味があります、まだ村からはじまるなので、プリンセスからの方が会うかと思いました」
「なるほど、ライラってよく考えてるなあ…じゃあその案でいこう」
俺は皆に向けて、これからの国造りの方針を告げた。
「みんな聞いてくれ!これからドイラム村は『パルテセス共生国家』として生まれ変わる。人間、エルフ、龍族、ドワーフ含め多種族が共に暮らし、それぞれの文化を尊重しながら皆が幸せに生きられる国を作る。だから、みんな協力してくれ」
周囲から歓声が響き渡り、場が一気に明るくなり歓迎してくれている。
長かったが一つの節目が決まった。
そしてもう一つ伝えるべきことがあった。
「それと…俺は国家設立時にリブラとライラ二人と結婚する。妃として迎えます!」
その言葉が落ちた瞬間に空気が震えた。
最初に反応したのは、前列にいたルナリーだった。
彼女は声をわずかに震わせながら、言葉にならない声を漏らす。
「け…結婚?私を放っておいてですか…?」
「いや、ルナリーとは結婚の約束してないだろ…」
二人のやり取りをきっかけに、場は一気にざわめきが広がった。
驚愕、困惑、歓喜、嫉妬、期待とあらゆる感情渦をまく。
後ろを見ると、ライラは泣きそうな顔で必死にこらえている。
彼女とは一番長い付き合いだから思うところがあるのだろう。
対象的にリブラはというと、いつものドヤ顔で『当然です』と言わんばかりだ。
本当に対照的だなあ。
「まあ、みんな聞いてくれ。俺がこの世界で魔王として覚ざめた時に、最初に出会ったのはリブラ…まあ中身はライラだったんだけど。二人に結婚してくれと頼んだんだ」
一息入れて続ける。
「時間は掛かったけど、二人とも承諾してくれた。だからこの領地が独立したら伴侶にしようと決めていた、本当は男の姿でやりたかったけど……まあ女の子になった。でもこれは変えない」
三人が並んだ瞬間、場が静まり返った。
そして、どこからか拍手が起こり、やがて全員が祝福の声を上げた。
「おめでとうございます!」
「パルテ様おめでとう!」
「パルテ様おめでとうございます!」
よし、これで皆に結婚の事も伝えたし、国の舵取りもやることも決めた。
まだ魔王軍と正教国家の戦いが終わったわけではないが一つの節目だ。
これから村を新しい国家として発展させていく、そして二人の嫁を幸せにするべく邁進して行くことにしよう。
あと残り2話で第一部完結となります。




