63. 正教国家司祭討滅戦 (VERY HARD) フェーズ 2
正教国家司祭との戦いで堕天使の力を解放してきた二人に、魔族に属する俺達の物理と魔法攻撃が通用しないという事実を突きつけられた。
だが俺は二人の行動に違和感を感じていた、最初から堕天使の力を使って敵を殲滅すればよいのに何故か彼女らは追い込まれて能力を解放した。
それならば何らかの弱点かデメリットがあるはず、ひとつ相手の挑発をして様子を見てみるか。
「どうした?堕天使の能力解放して攻撃してこないのか?こちらの攻撃は通用しないんだろ」
「君たち相手に力を行使する程でもないよ、じわじわと苦しめて死なせてやる」
マルガリータは炎魔法、ヒルデは風魔法を繰り出し、全員を攻撃してきた。
こちらの前衛二人は余裕で交わしながら相手に何度も斬りかかるが攻撃を受けても直ぐに再生されて全くダメージを負っていない。
おかしい、さっきはセレネの攻撃を弾き飛ばすほどの防御魔法を繰り出していたのに明らかに魔法の威力が落ちている…なるほど、魔族の攻撃無効化を発動している間は魔法力を全力で行使出来ないのか。
堕天使の能力は物理魔法防御無効化に振っていて他の攻撃に制限される。
切り札として攻撃手段を残しているか、本体の肉体以外では攻撃が出来ないと可能性が考えられるな。
ここでライラと事前に部屋で打ち合わせた事を思い出す。
──回想
「パルテ様、司祭以外に強力な力を繰り出す人間がいたら堕天使が乗り移っていると思ってください」
「え?人間に乗り移ってたらその人を攻撃できないじゃないか」
「だからこその切り札なんです、堕天使の司祭は問答無用でいいですが、伏兵がいた場合は相手の体力を削って弱った時に使用してください」
「ライラがいるならともかく、それって俺でも解るのか?」
「パルテ様を信じます、何か微妙に変化が見えるはずです」
──そして現在
セレネとヴァレリアは無駄とも思えるような攻撃を二人に対して何度もクリティカルヒットさせているがその度に肉体が再生して無傷に戻り平然としている。
二人との戦闘を見続けていて僅かだが微妙に変化があるが見つけられてない。
よく相手を見るんだ!この自分の中に感じる違和感の正体は何だ!?
……もしかして、やはりそうか。
仲間の攻撃を受けている相手の再生速度、最初の頃に比べて復元が遅くなってきているな。
ライラが言っていたのはこれか、堕天使の能力も恐らく無限ではないんだ。
乗り移ってる人間自身の体力が影響しているのか、何度も再生を繰り返すと本体の復元が追いつかなくなって来ている、平然とした顔をしているが弱ってるという事か。
「セレネ!」
俺は彼女に呼びかけ、大きく頷く。
こちらの言葉で察したようで、腰に下げたレイピア二本を抜き、一本をヴァレリアへと投げて渡す。
二人は騎士がフェンシングの試合を行うような突剣を前に突き出すように全く同じポーズで構えを取り準備態勢を取る。
俺が足を大きく踏み響き渡るほどの高い音を鳴らすと二人同時に飛び出して魔法使いと僧侶に対して同時に剣を突刺し体を貫通させる。
マルガリータとヒルデは涼しい顔をして相手の行動に対して疑問を呈す。
「何よ?例え剣で突き刺したとしてもこちらは全く平気よ」
「全く無駄な努力だわね」
剣を刺したセレネとヴァレリアが離れて相手の様子を見ていると突如として眼の前にいる二人が苦しみだす。
「な、なんだ…体が熱い!この剣はなんだ!?抜けない」
「くっ…何よこれ、体が…拒否反応を…」
俺は二人に対して何が起きたのか相手に伝えて勝ち誇ったように伝えた。
「それはライラが力を込めた堕天使殲滅剣だ、肉体に受けているとお前らの存在を消滅させる最強の効果を見せる武器だよ!」
マルガリータとヒルダが体を貫通した突剣が抜けずに苦しんでもがいて暴れ叫ぶ。
「ウワアアアアッ!!」
「ダメだ耐えられない!!」
二人の絶叫と共に魔法使いと僧侶の肉体から堕天使の本体が飛び出す。
体に剣を受けた本来の二人は物理防御の能力が失われ出血と共に地面に倒れ込んでしまう。
二人の堕天使は後方へと退避して自分たちの親玉とも言える司祭に対して戦いを焚きつける。
「司祭様!貴方の力でこいつらを倒してください!」
「お願いします!」
司祭は不満な表情を見せながら二人の堕天使に対して怒りの声で叱咤した。
「たかだがこの程度の魔族連中すら倒せないのか!わきまえろこの下級使徒共が!」
「ですが奴ら今までの敵とは違います!天使の力を借りているのです」
「どうかお慈悲を!」
堕天使の懇願も虚しく司祭は、側にいる二人の首を両手で掴み上げ笑みを浮かべて最後通告を伝えた。
「役立たずは処分しないとなぁ!我が糧となり力の源として吸い取ってくれる!」
「司祭様!お許しください!!」
「司祭様!お慈悲をオオオオッ!!」
二人の絶叫が響く中、司祭は自身の腕から堕天使をまるで手から掃除機で吸い取るように飲み込んでいき存在を消滅させてしまう。
吸収した司祭の肉体が今までの三倍ほどに膨れ上がり、存在感を際立たせる。
「全く、私自身が動くことになるとはな…この役立たず共が!」
司祭は漆黒の翼を背中に生やして、強化された肉体により数倍に膨れ上がった筋肉によって衣服を弾き飛ばし俺達の前に立ちはだかる。
「貴様ら魔族の端くれなど我が手で引きちぎってくれるわ!!」
司祭は巨大化した体でこちらに迫り、セレネとヴァレリアを掴もうとするが、二人の機動力はそんじょそこらの敵が掴めるような相手ではない。
敵の攻撃を交わしながら二人は次々と司祭へと攻撃を繰り出すが同じ様に物理攻撃への無限再生で何度も修復されてしまう。
司祭との戦いを続けている中で、二人の動きになんだか異変を感じた。
おかしい…二人共動きが鈍くなってないか?攻撃する度に速度が落ちてる感じがする。
「二人とも攻撃を止めろ!!」
俺の静止命令で攻撃を止めてこちらに戻ってくる。
二人の様子を見ると明らかに辛そうだ、セレネとヴァレリアはこれくらいの戦闘で息があがるほど体力は低くない。
恐らくだが相手に対する攻撃で力が吸い取られているのか、どうやってだ?
「パルテ様、とめてくれてありがとよ、なんか…力が落ちてきてるんだ」
「こっちもです、何故か攻撃する度に力が吸われるような感じが…」
司祭は勝ち誇ったようにこちらの俺達に告げてきた。
「気づいたか…流石に下級使徒を退けるだけではないか、貴様ら魔族が私の体に攻撃すると力を奪うのだ、どうだ?真綿で体をじわじわと締めるような感覚は」
やはりそうか、こちらが攻撃すると体力削られるとか最強デバフじゃねえか。
だがそうすると、二人の堕天使のように攻撃を繰り返して弱点を見つける方法はとれない。
逆転の一手を考えないと…このままでは全員がやられてしまう。
だったら触れない攻撃だったらどうだ。
「千氷槍!」
俺の魔法で司祭の周囲に出現した氷の槍が相手に対して襲いかかった。
だが体に突き刺さると思われた氷槍は全て相手の体に飲み込まれていく。
ダメか魔法も物理攻撃と同じ様に吸収されてしまう。
「どうした?それで終わりか?」
相手はこちらに歩みを進めながら勝ち誇ったように告げる。
「貴様ら魔族の攻撃も魔法も私には効かない!大人しく滅ぼされるのだな!」
俺達は戦うことに必死になってある事を忘れていた。
絶体絶命の危機に陥った皆の助けとなる存在について。
第一部完結まで毎日18時頃投稿予定
月曜日は投稿お休みします。




