61. ガンギルダ王国潜入大作戦
国王の面会について王子に依頼して約一週間が経過した頃、カエデが馬車と共にドイラム村に来訪して面会の準備が整ったと迎えに来てくれた。
事前打ち合わせで、こちらの選抜メンバーは、俺とリブラ・ライラ・セレネ、ヴァレリアの合計五名と近衛騎士団のクラリスと姫様を連れて行く。
この短期間で全員のスキル把握や能力の試験、出来る限りの知識を手に入れて突入対策はバッチリ決めたつもりだ。
俺達が村を離れている間の防衛は、ルコットとバルザード、ドリアードのリアとウンディーネのティナに頼み、不在の数日間協力してもらうことにした。
もしかすると魔王軍が攻めて来る可能性もあるため、事前対策としての作戦だ。
なお、対堕天使切り札としてライラには姿と天使の気配を隠して、密かに城内へ潜入して貰う。
シエルからこちらに天使がいる事が伝えられていたら、ライラは城への入場を難癖つけられて拒否されるだろうから対抗措置として先手を打っておく。
もう一つ、既に死んだ事になったセレネとクラリスは顔を見られるとマズイので顔を隠せるマスクや兜を装備してもらう。
カエデが手配してくれた馬車に乗ってセレネとクラリス、姫様に搭乗して貰い他のメンバーは空から飛んで行くことにした。
セレネも飛翔魔法は使えるが姫様の護衛としてクラリスと共に守ってもらうための同乗である。
数時間かけてガンギルダ王国城門前まで到着すると王子と騎士達が待ち構えていてくれた。
俺は城へ突入する前にリブラに思念通話で会話して、兵士の配置や罠に関して何か準備されていないか調査してもらう。
「(リブラ、領地内の仕掛けられた罠の類や兵士たちの配置はどうだ?)」
リブラは本を取り出しガンギルダ領内に仕掛けられた罠や人の動きを調べて結果を報告してくれた。
「(領内については特に罠は見当たりません、城の中におよそ百名程度ですが多めな兵士が配置されています!城内の護衛にしては多すぎると思います!)」
「(まずは、兵士で囲んで来る可能性があるな、手筈通り例の手を使ってくれ)」
「(わかりました!ボクにおまかせください!)」
続いてライラの潜入状況について確認する。
「(ライラ、城への潜入はどうだ?)」
「(対天使用の結界が国全体に貼られていますね、破ると気付かれそうなので別の手で忍び込みます)」
「(そうか、潜入出来たら教えてくれ)」
「(わかりました、ついでに領内を調べてみます)」
馬車が到着すると王子に気付いた姫様が馬車から急いで降車し、彼の元へ走って胸元に抱きつく。
久しぶりの再会で感極まったのか涙を流しているのがこちらからも伝わる。
「お兄様!よくぞご無事で…」
王子は自身の胸で涙を流し喜びを見せる妹の頭を優しく撫でながら笑顔で再会を喜ぶ。
「エメルディアこそ、よく無事に帰ってきてくれた…行方不明だと聞いた時には防衛線を放り出して何度探索に行こうかと思っていたよ、元気そうで何よりだ」
「はい、近衛騎士団も含めパルテ様には沢山助けていただきました、あの御方は信頼できる人物です」
二人が感動の再会をしているところ水を差して悪いがこれからの目的に向けて動かなければならない。
王子に意思確認のため最終的な決断を問いかける。
「王子、覚悟はできましたか?」
「ああ、手筈通りに頼む、だが妹の安全は保証してくれ」
「無論お二人には危害は加えさせません、リブラが貴方達をお守りします」
俺の言葉を聞いてリブラは自身の胸に手を当てて自信満々な雰囲気を醸し出す。
「大丈夫!ドーンとボクにお任せください!」
「それと、お二人は私の目論見は知らぬ存ぜぬで演技をお願いいたします」
「こちらを巻き込まないための措置か…了承した。では城へ向かうとしよう」
城門を王子に連れられ領内に入ると、各所で警備を行っていた兵士たちが王子の来訪を心から喜んでいるようで周囲から祝福の声が飛び交う。
「王子がお戻りになられた!お帰りなさいませ!」
「姫様が戻られた!お帰りなさい!」
「殿下、お帰りなさいませ!」
やはり王子の人望はとても高いのがわかる、死んだような国でも兵士たちの表情から本当に喜んでいるような雰囲気が感じ取れ活気を感じた。
王城への街道を歩きながら王子と姫様は民衆や兵士達に手を挙げ応えている。
この姿を見ているとやはり王族の貫禄を感じるなあ。
王城前まで到着し中へ入ろうとしたところでライラからの連絡が届いた。
「(パルテ様中に入りました、ただ王城内に対天使用封印結界が仕掛けられています、これは天使を箱のような結界領域に閉じ込める術ですね)」
「(つまり中に入ると天使は拘束されるって事か、それは城全体にかかっているのか?)」
「(いえ、そんな事をするには相当な力場が必要です、見た限り入口近辺のみです)」
「(それで例の方法はできそうなのか?)」
「(リブラに期待しましょう、事前練習では問題なかったので)」
俺達の会話にリブラが割り込んで自信満々に伝えてきた。
「(ボクに任せてください!この為にスキルの練習しましたから)」
「(じゃあ、ライラは俺達が国王前まで行った所で罠にかかってくれ)」
「(わかりました、リブラ後は頼んだよ!)」
「(任せておいて!)」
王子とともに城の中に入り、謁見室まで向かう。
何故だか外の雰囲気と違い、中にいる兵士たちには俺達に対して僅かに殺気が感じられる。
どうやら王城の兵士たちは司祭になにか吹き込まれているな。
相手の気配から襲ってくる気満々なのが感じ取ることができる。
出来る限り平静を装いながら謁見室へ通されると、国王と司祭に護衛の兵士が三十名程だろうか、周囲を囲むように配置されているのが解る。
王子が国王の前で跪いたのを見て他の全員も同様に片足を地につけ同じ姿勢で相手が語りだすのを待つ。
「父上、お久しゅうございます。先般より出没しておりましたグレインダイク領地に現れた魔王軍討伐の任を終えたためご報告に参りました」
国王は魔王軍討伐に対して特に驚きの表情も見せず、淡々と語りだす。
「この度の役目ご苦労であった。魔王軍が退けられた事で民も喜ぶことであろう」
なんだこの違和感…自分の息子が功績を挙げて帰って来たと言うのに、この国王は態度が冷めすぎだろ。
普通の親だったら『よくやった!』とか褒めるだろうが感情が全く感じられない。
まるでロボットが定型文読んでるような雰囲気だ、これは第三者が外から操っているとしか思えないな。
「こちらにお連れしましたパルテ殿のご助力にて、魔王軍四天王を討伐出来ました、偏に彼女の活躍によるものです」
国王と王子が二人で話している時、一人の兵士が司祭の元に静かに駆け寄り何かを耳打ちして伝えている、恐らくライラが罠に掛かったと知ったなこれは。
国王は、突然話の流れを変えて俺の事に問いかけ始める。
「そうか、ところでそこの娘についてある嫌疑がある、司祭よ伝えるがいい」
司祭が出てきた所で国王の雰囲気が変わった、僅かな違いだが皆気付いていない、これは司祭が国王を操っているのが確定だな。
司祭は前に出て来て突然俺に対しての嫌疑とやらを話し出す。
「そこの娘は、スタインブッケ領地にて静養中だった姫様を攫い、他の場所へ匿った疑惑がある!」
「それは、私が何者かに拘束されて誰も助けなかったせいです!パルテ様は救ってくれたのです」
俺の疑惑に対して姫様が自身の処遇に対して大声で擁護してくれている。
更に王子が俺の功績も含め更に陳情を伝えて場を収めようとした。
「父上!パルテ殿は魔王軍を倒して頂いたのですよ!その功績だけでも十分に誘拐の件については帳消しに出来るかと存じます!」
司祭は全く聞く耳を保たず、こちらを罪に被せようとしてきた。
「だが姫様を攫い、魔王軍討伐と言いながらスタインブッケ領地を破壊したのはどう説明する?二人は知らんのであろう?」
どうやら全てご存知ってことか、これはもう隠し立てする必要はないな。
「王子、姫様もういいですよ、どうやら全てご存知らしい。面会を許可したのは恐らくこちらを誘き出すための策略だったんだ」
司祭は周囲に配置されている兵士達に対して命令を下す。
「そこにいる不届き者を全員捕らえよ!!」
相手の行動を見て事前打ち合わせ通り、リブラが立ち上がり大声で叫びだす。
「封止境界防壁!!」
彼女のスキル発動により俺達がいた場所から半球状の防護結界が広がりはじめ、壁に触れた人達が次々と姿を消す。
「な、なんだこれはうわあああああ!」
結界により兵士たちと王子も姫様も国王も含め全員が消えた。
謁見室に残ったのは、俺達パーティと司祭のみになった。
「ボクの結界は特定人物以外を別の場所に飛ばす事ができるんですよ!残るは貴方一人です!」
「まさか、こんな技を持っているとは…追い込まれたのはこちらだと言う事か!?」
「セレネ!もう顔出していいぞ!」
「ああ、コイツは私が倒す」
しかし、司祭が立っていた後方から、突然何処かで見た二人の人物が薄笑いを浮かべながら現れた。
「へえ、勇者がまだ生きてたとは驚きだよ」
「死の呪法発動したのにどうやって生きてたのかしら」
そうだ、コイツらはセレネとパーティを組んでた魔法使いとヒーラーだ。
まさかヴァレリアにも余裕で負けたこいつらが切り札なのか?
敵の戦略が読めないなか、司祭との決戦に挑む事になった。
話を書けば書くほど展開が伸びていく…
ちょっと終了話数未定で進めます、多分10話以内には一旦終わるはず!




