54. ライラの隠された能力、黒幕の正体
俺達四人はスタインブッケ領地に闇の道の調査に来た。
概ねの予想通り、四天王フォルマールが妨害工作に出現し、リブラとルコットへ対峙してきたため、彼女たちに戦闘の引き伸ばしを任せて俺とライラは地下深くにある儀式場へ突入し破壊工作へ向かう。
俺達二人は建物の中に入り儀式場へと繋がる入口へ歩き出し扉の前に着く。
前回地下へ通じる扉にトラップがしかけられていたので、念のため罠がしかけられていないかライラへ問いかける。
「ライラ、何らかのトラップは仕掛けられていないか?」
「…おかしいです、トラップも何も仕掛けられていません。まるで通ってくれと言わんばかりです」
「そうか、奥に進むと何かあるかも知れないな、用心して進もう」
入口の扉を開き地下奥深くへ続く階段を用心深く降りていく。
慎重に辺りを見回しながら最下段まで降りたが何もトラップは仕掛けられていなかった。
このまま先に進もうと思った所で、何者かがこちらに向かってきているのが感じられ誰かの声が響き渡る。
「おやおや、とっくに消滅したと思っていたら元魔王様じゃないですか、久しいですね」
どこかで聞いた声、誰だ奥にいる人物は?薄暗い場所からヒールのような靴の音を響かせてこちらに向かってきた人物、入口から差し込む光に照らされて姿が映し出される。
闇の奥から現れたのは、過去にどこかでみた人物。
そうだ間違いない、彼女は魔王の側近として存在していた『シエル』だ。
なぜ、魔王軍の統括がこんな場所まで出張ってきているのか、それ程この場所は重要拠点なのだろうか。
こちらは女性になっている事だし、彼女の言葉を聞き入れずとぼけた様子で相手に告げた。
「誰だい貴方は?初対面だと思うけど」
シエルは薄っすらと口角を釣り上げ妖艶な笑みを浮かべる。
まるでこちらが惚けて答えているのを全て知っているかのように的確にこちらの正体を見破ってきた。
「とぼけても無駄ですよ、体から放つ魔王の覇気。まさか肉体を覚醒まで持って行ける力があったとはね、女性になっていたのは少し驚きましたが私が見間違う訳ありません」
「…こちらの正体を見破られるとは、流石魔王の側近だという事か」
「私が魔王の側近として何百年と君臨して来たと思っているの?魔王の存在を見間違う訳ありませんよ」
「それで、シエルは何故こんな場所で待ち構えていたんだ?まさか俺との再会をするためにワザワザ出てきたとは言わないよな」
「そうですね、誰かがこの儀式場の力場を止めたので、私がこの地における闇の力を復旧させて誰が阻止に来るか待ち構えていたんですよ」
「それなら俺達が何故ここに来たのかある程度予想していると言う事か」
「ええ、もちろん…まさか元魔王が現れるとは予想外でしたが、私だけでも十分対処可能です」
相手は戦う気満々のようだ、こちらも杖を構えて戦闘態勢を取ったところ、ライラが自身の左腕で俺を静止してきた。
「パルテ様ここは私にお任せください」
「何故だ?俺も一緒に戦うぞ」
「相手が悪いのです、三すくみの法則はご存知ですよね」
それは知っている、三つの要素が互いに得意・苦手な相手で三角形で組み合わせが出来る事象だ。
「つまり、俺ではシエル相手に弱点属性があり勝てないという事か?」
「そうです、あの方にパルテ様は勝てません。仮に戦ったとしても攻撃と防御の能力が大幅に弱体化されてしまい相手に通用しません、それにまだ戦う時ではないのです」
「どういう事だ?」
「いずれわかります、ここは私にお任せください」
シエルは俺の前に立ちはだかったライラを見て余裕の表情を見せて挑発してきた。
「たかだか魔王の従者が、私相手に戦えると?冗談にしても笑えるわ」
ライラは相手の挑発に乗らず冷静に相手へとある事実を告げる。
「あなた、魔王の側近と言うのはウソですね…正体は堕天使でしょう?」
堕天使だって?シエルは魔王軍の側近じゃあないのか?
なぜそんな存在が暗躍しているんだろう。
ライラから真実を暴かれシエルは驚きの表情で彼女を睨みつけてきた。
「貴様何者だ!?何故こちらの素性を知っている?いや最初から違和感があった、ただの配下ではないな!?…なるほど天使が紛れ込んでいたとはね」
「こちらの言葉を否定しないと言う事は当たりですね…そうか貴方が正教国家五大使徒の一人『破滅のシエルフィアですね』」
「私の本来の名前を把握しているとは、貴方こそ名乗りなさい!?」
ライラは相手からの追求に対して涼し気な表情を見せながら冷静に答えた。
「私は、パルテ様の側近ライラですよ」
「ウソをつきなさい!天使は嘘偽りを語れないはず、貴方の天使名は!?」
「先ほど伝えたでしょう、私の名前はライラです。貴方に告げるような天使名はありませんよ」
「クッ…あくまで答えないと言うなら貴様の正体を暴いて見せる!断罪の黒棘!」
シエルの叫び声と共に彼女の右手から周囲の空間を歪ませるような強大な暗黒力がこちらへと襲いかかる。
だが、ライラは相手の攻撃に怯むこともなく冷静に何かの言葉を呟いた。
「聖天使武装装飾」
彼女の言葉と共に周囲一体が巨大な光に包まれ、シエルから放たれた暗黒力は輝く力場によって全てのエネルギーを妨げて消滅させてしまう。
眩い光が徐々に収まると全身を覆うほどの巨大な天使の羽と変化した衣装のライラが現れる。
彼女が着用している衣装のデザインは、俺が考えたモノから進化したような形状で、全身が純白に染められおり金色の装飾で彩られていた。
そして何よりも右手には自身の身長と同じ程の長さを持つ槍を装備している。
槍の先端は、鳥のクチバシと似た形状に飛び立つような羽がデザインされていて、これは天使が持つ神聖な武器としてのものだろうか。
「それでは、こちらも反撃させていただきます」
ライラは右手に持った槍を正面に構え大声で何かのスキルを叫んだ。
「神罰の閃光!」
スキルの発動と共に槍の先端より光のエネルギーが収束していく、巨大な光球へと集まったところで突如として花が画かれた巨大な扉が出現して入口がゆっくりと開く。
扉が完全に開いたところで奥につながっている空間から数え切れないほどの無数の槍が飛来してシエルへと襲いかかった。
シエルは襲いかかってきた多数の槍を自身が生み出した魔法陣を眼前に繰り出し防御を繰り返す。
しかし圧倒的な物量による光の槍による攻撃にて魔法陣の周囲から徐々に崩壊を始め体をかすめてキズを負いながら叫ぶ。
「この力は…何者だ貴様あああああぁ!」
攻撃に耐えられなくなったのかシエルは右手から何かを取り出し闇のオーラに包まれて姿を消す。
静寂を取り戻した空間で、ライラは自身が生み出した扉を閉じて消滅させポツリと呟く。
「…逃げられましたね」
まさか俺にも予想できないこれ程の強力な能力をライラが持っていたとは。
リブラと一体化していた時は天使の能力を隠していたので解らなかったが、今は自身が持つ力を存分に発揮して魔王軍統括を追い詰めるほどの潜在能力だ。
静寂を取り戻した空間で、彼女はこちらを振り向きニッコリと笑みを浮かべて俺に告げる。
「パルテ様、先に進みましょう」
「お、おう」
彼女は普段と変わらない接し方で俺と共に儀式場の奥へと進むことにした。
この一件が終わったら色々ライラに聞いてみようと思った。
──場所は変わり魔王城
玉座の間に転移してきたシエルは、圧倒的な力量差がある人物の登場に若干焦りを見せて静かに呟いた。
「まさかあれ程の天使が地上に降り立っていたとは…急いで正教様にご報告に向かわないと…新たな魔王も更に強力に作り上げないといけませんね…」
シエルは、玉座を見つめ闇の姿で構築されている新しい魔王の依代を一瞬見据える。
そのまま踵を返し魔王城の地面に画かれた魔法陣に入って、何処へ転移して空間から消滅した。
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