40. 魔王様、目を覚ますと◯◯◯に!?どうなってんの?
──夢
俺は夢を見ていた。
会社員時代のまだ入社して三年目だった頃、ある顧客とのコンペで出した見積もりの金額を誤り失注した。
うちの会社が余裕で勝てる案件だったのに他社に注文を取られ負けてしまったのだ。
この件に対する営業損失は大きく、任せてくれた上司である先輩に多大な迷惑をかけてしまった。
「先輩!すいませんでした!せっかく任せて貰えたのに!」
会社の先輩は自分の上司でとても面倒見のいい人だった。
人柄もよく会社の皆が頼りにしている、皆から一目置かれる上司という感じだった。
「まあ、失敗は誰にでもある、ただ仕切価格と定価で間違えて入札とは少し抜けてるな」
「はい、その通りです」
「そろそろお前も独り立ちして、案件こなせると思って任せたのは解ってるな?だけど仕事ぶりを見ているとミスがないように全力でやって残業もして頑張ってた、そこが問題だ」
「な、なんででしょうか?必死にやったつもりなんですが…」
「仕事に対して100%全力で取り組むのは悪くない、ただ人間がピークの100%で働き続けたら集中力も落ちるし失敗も出やすくなる、これは俺の持論だが仕事は80%、残り20%は終わった後に遊ぶため力を残す、息抜きが大事なんだよく覚えておくんだな」
「はいっ!肝に銘じておきます!」
「あとは失敗しても上の人間がちゃんと部下をリカバーするのも大切だ、なに多少失敗しても別でまた取り戻せばいい、許してやる心を忘れるなよ!よし飲みに行くぞ!」
なつかしいな、よく面倒みてくれた先輩。
これからしばらくした後、別の会社に転職していったんだよなあ、今頃何してるんだろ…。
そう思いながら俺は、静かに目を覚ました。
──目覚め
目を閉じた状態で周囲の光を感じる、視覚に語りかけてくる明るさ。
鼻で感じる周囲の臭い、呼吸をする感覚、舌の味覚、周囲の音を感じる聴覚。
間違いなく肉体がある、心臓の鼓動から生きた体だとわかる。
どうやら復活の儀式は上手くいき俺は体を取り戻せたようだ。
久しぶりに感じる肉体の感覚が懐かしい、闇の肉体では得られなかった生の喜び。
目を開けて天上を見回す、慣れ親しんだベットの上で布を被っているようだ。
顔を少しあげ入口の方向を見ると胸の筋肉で視線が少し遮られる、魔王ってこんなマッチョな肉体していたんだと知る。
魔法使いなのに筋肉質とは武闘派な戦いもこなせるんだろうか。
とりあえず布を捲り体を起こして上半身で大きく伸びをしてみて少し声をあげる。
「…ん~!!」
なんか少し声が高いな、魔王の頃は声が低かったから余計声が高く感じてしまう。
やっぱり、体が出来立てでまだ喉の調子も悪くて、耳も慣れてないのかな?
とりあえず体を起こして隣の部屋で鏡代わりに使っているに鉄の板で自分の姿を見に行ってみよう。
ベットを降り足を地につけ地面の感触を感じる、やっぱ五感があるのはいいな。
周囲の状況を全身で感じられる感覚はとても素晴らしいと思う。
感動しながら素足のまま隣の部屋まで歩いていき、鉄板に近づくとある異変に気付き沈黙した後に驚きの声を発する。
「………え?」
眼の前に現れた人物は腰まで伸び切った長い黒髪、所々に赤メッシュの毛髪が混じっている。
魔王の凛々しさはなく少しやさしい感じの顔立ちで細い眉、丸顔で顎も鋭く尖った凛々しい美形だ。
マッチョだと思った大胸筋は大きな膨らみが二つ並んでいて、腰はくびれお尻は丸みを帯びているな。
ここで超絶特大でウルトラスーパービッグマキシムな疑問が浮かんだ
「女の子…?」
そう眼の前に映っているのは紛れもない女性に見える、いやもしかしたら美形の男なのかもしれない。
恐る恐る胸にある大きな膨らみを触って感触を感じてみる…とても柔らかい感触。
これどう触っても筋肉じゃない、女性が持つ二つの大きな双丘…いわゆる巨乳な胸じゃないか…?
いやいやいや、まさかな!念の為、股間に手を伸ばして触ってみるとあるべきモノがない。
ない、ない!長年一緒にいた相棒がいない!もう少し触ってみると別のものがある。
「…んっ」
手で感触を確かめるとなんか電気みないな感覚が全身に流れて変な声が出る、凄く敏感な箇所というのは紛れもないアレだ!自分自身で感じたことがない女性な大事な秘部。
ここで確信して超絶大声で叫んでしまう。
「な、ななな…なんだこれ!!俺が女の子になってるじゃないか!?!?」
どうしてだ?魔王バルテオスって男だったよな?リブラに見せてもらった画像を見ても俺自身も間違いなく男性だ。
でも、眼の前に映っているのは、全然似ても似つかない女性、しかもかなりの美少女。
年齢で言うとJK位の若々しい姿をした可愛い子に見える。
魔王覚醒したら性別変わって女の子になるとか聞いたことない話だぞ!
どうなってんだこれ?そうだ!とりあえずリブラだ、彼女に聞けば解ることだ。
「リブラ!リブラはいないのか!?」
家の中を探し回っているとなにかテーブルの上に書き置きがしてある。
俺はその紙を手に取って書かれている内容を読んでみた。
「探さないでください…リブラ」
おい!こんな状況を残してリブラがどこかに行方をくらました!
探さないでくださいってメガネかけて赤白ストライプのシャツ着た人物かよ!
見つけるなと言われてかくれんぼじゃないんだし、探しにいかないと。
外に出て探索しようと思ったが今の自分の姿はシャツ一枚にパンツ見たいな下着姿のままで、こんな状態で外に出たらただの痴女だ。
辺りを見回すといつもの農作業服が畳んであったので、急いで着替える。
上着を着用すると大きめな大胸筋のせいで上手く前のボタンが閉まらない。
必死にボタンを締めると、胸の圧力で服が上に上がり、ヘソ出しの色っぽい感じの着こなしになってしまった。
続けてズボンを着ようとするとお尻がキツくてピチピチの状態、闇の体の時は感じられなかったよい肉付きで臀部のラインが見える程だ。
だが気にしてはいられない、急いで外に出て探しに行くぞ。
扉を開けて外に出ると丁度エルフのルナリーが居たので、リブラの件を問いかけよう。
「あ、おはようございます…魔王様?」
相手は困惑してるようで、魔王を呼ぶ時に何か疑問符が浮かんでるような口調だ。
「ルナリー!リブラ!リブラがどこ行ったかしらないか!?」
「え、ええと魔王様で間違いないんですよね?別人だったりしませんよね?」
「俺自身が一番困惑してるよ!なんで女の子の体になってるんだ、詳しく教えてくれ!」
俺の勢いに当惑気味な感じのルナリーは復活の儀式に何が起こったのか語ってくれた。
「えっと…わかりました、復活の儀式が終わって魔王様の体が光に包まれて地面に倒れ込んだ後、出てきたのが今の女の子になった魔王様だったんです」
「その時リブラは何か言ってたか?」
「ええ、ボツりと言ってました『こんな事が起きるなんて、ちょっと失敗しちゃいました…』って」
失敗?この女の子になった姿は失敗だというのか?もしかして男の体に戻れるんだろうか。
とにかくリブラを探して問いただしてみないと何があったか解らない。
彼女の場所を知らないか聞いてみよう。
「それで、リブラはどこに行ったか知らないか!?」
「ここ数日間見ていないですね、どこ行ったんでしょう」
「数日?俺は復活して何日経ってるんだ」
「今日までで三日間経過していますよ」
俺は三日間も寝ていたのか?復活の影響だろうか。
その間、どこに行ったんだろうか見ていないという事は帰宅していないんだろう。
ここでじっとしていてもしかたがない、皆に聞き回ってリブラの消息を探しに行くことにした。
一日置き(隔日)の21時から22時頃更新予定、筆が乗ったら他の日も投稿します。
月曜日は投稿お休みです。




