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転生最強魔王の引退物語 ~最愛の部下と田舎でのんびり暮らしたい~  作者: 茶巾丸
第4章 勇者襲来編

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32. 勇者が村に現れた!(コマンド?)

──勇者セレネ視点


翌朝、太陽が登り部屋を照らし始める頃、私は目を覚ました。

いつぶりだろう、こんなゆっくり休めたのは、毎日魔王軍や敵と戦ってばかりいてこんなに落ち着いて過ごせたのは久しぶりだな。ベッドから体を起こし、顔を洗いローブを脱ぎ捨ていつもの鎧へと手早く着替えて準備する。

剣を持ち部屋を出ると入口に朝食が用意してあった、私はパンだけつまみ軽く食べながら廊下を進み階段を降りて入口に向かう、受付まで降りていくと二人の仲間が待ちかまえていた。


「珍しく遅いじゃない」


「今日はどうやって行くの?」


「飛翔魔法で直接乗り込む、さっさと終わらせて戻ってこよう」


「わかったわ、村の方角だけ聞いてくるわ」


「ああ、頼む」


宿屋を出た後、場所を聞いてきたマルガリータがドイラム村の方角を指さした。


「宿屋の右斜め前でここから東の方角、ウチらが飛んで一時間ってとこね」


「では、いくか!飛翔魔法!」


私を含め全員で空に飛び上がり、ドイラム村の方角へと飛び立った。

今日の討伐目標に向かうために風を切って進んでいく、待っていろ魔族め。



──場所は変わりドイラム村 魔王視点


俺達とバルザード親子が遭遇してから五日経過した、先日仲間になってくれたヴァレリアにはアルタイル大森林の枯れ木伐採作業を手伝うように伝え、毎日木材を伐採してもらっている。

これは、父親がやった所業の償いの意味も込めての行動だ、彼女の攻撃を自身で受けて木を斬るなんて造作もないと考えたからだ。

案の定、リブラが嬉しそうに作業の様子が大きく変わったのを伝えてきてくれる。


「バル様!ヴァレリアさん凄いんです!森の枯れ木をドラゴンスラッシュとか言う技で物凄い勢いで斬りまくって伐採作業がめちゃめちゃ進んでます」


この調子ならあっという間に終わりそうで、大量の木材が運ばれてくるドワーフ工房のほうがてんてこ舞いなくらいだ、少しセーブしてもらうかな?後でルコットと話し合って決めよう。


近衛騎士団は農作業で作物の収穫を手伝ってくれている、最初は不慣れだったが直ぐに慣れて効率も上がってきた、新しい作物も増えたので更に新しい料理とかも考えたい。

姫様も大分体調が回復してきたので、そろそろ外に出て散歩でもして貰うのを考えるか。

色々と考えていたら森から突然リブラが俺の元に向かって飛んで来て大声で叫ぶ。


「バル様!なにかこの村に物凄い力を持った人間が向かってきています!!」


「なんだって?何者だかわかるか?」


「詳細は不明ですが、今まで戦った者達とは遥かに格上…バル様に匹敵するくらいの強さを感じます…」


強大な気配を感じ取ったのか、続けてルコットが大工姿ではなく騎士隊長のフル装備になって続けてやってきてくれた。


「魔王様、迫って来るこの気配気付いてるな?」


「ああ、リブラが教えてくれた、なんだかわかるか?」


「ハッキリとはわからんが、邪悪な気配ではない…もしかすると…」


──ドオオオォン


ルコットが何か言いかけたところで地鳴りのような音を響かせて三人のパーティが現れた。

着陸した部分がクレーターのように窪み衝撃の大きさがわかる、相手の装備を見た感じから女騎士と魔法使い、僧侶の組み合わせか?


パーティの先頭にいる女騎士から今まで戦った者達とは異なる異彩な雰囲気を感じとれる。

赤茶色の髪色で短髪、眉毛と目元から気が強そうな雰囲気を感じさせる欧風美人な顔立ちで白金に黄金の装飾が施されている豪華そうな鎧を肌が全く露出させず全身を覆っている。


以前戦った四天王のヴァラクより遥かに格上の力、体の節々にビリビリと響き渡る物凄いプレッシャー。

最強魔王として君臨してから始めて恐ろしいという恐怖と緊張感が伝わるくらいヤバイ相手だと言うのを全身で感じる。

静かに対峙する中、女騎士が俺に向かって問いかけてきた。


「この感じ…貴様がこの村にいる魔族か?」


「何者だ、お前達は?」


「私は勇者セレネ・ヴィクトリアス、そして魔法使いのマルガリータと僧侶セレネだ。ここで魔族が村人を苦しめてると聞いて貴様を退治しにきた」


「勇者だって?この騎士が?」


俺の言葉を聞いてルコットが補足説明してくれた。


「西の司教国ルミナリスに属する雷神の勇者だ、何故こんな辺境の地に…?」


俺とルコットが隣で並んで戦闘態勢の構えを取っているのを見てポツリとセレネが呟いた。


「まさかドワーフ族まで操っているとはな…」


「私を操る?何を言っているんだお主は?」


二人の会話を聞いていた俺も同じ疑問だったが、ルコットの質問に対してまるで話を遮るように魔法使いのマルガリータが突然攻撃態勢の構えを取り叫ぶ。


「ま、操られているなら全員掃除対象だから始末するね! 『斬刃のフェロクス・スライサー!』


相手の魔法詠唱と共に大量の風で出来たノコギリのような飛翔体が四方に飛び散った。

おい!こちらの会話無視して攻撃かよ!俺は魔王の手を大きく広げて皆を守る。

ルコットはアルカナハンマーで自身に向かった魔法を消したが一部が逸れてしまい、エリフのルナリーの肩に当たってしまう。


「大丈夫か!ルナリー?」


「ええ、かすりギズです」


こいつら正気か?何もしていない村人に突然無差別攻撃するとは、勇者の名が聞いて呆れる。

ただの大量虐殺を狙う悪人じゃねえか、ふざけるな!だけどこのまま戦闘したら村の人達に被害が出てしまう。


「リブラ!村の皆をリアの元に連れて行ってくれ!」


「バル様はどうするんですか!?」


「俺はこいつらの相手だ!みんな逃げろ!」


先手必勝と思った俺は、とりあえず目眩ましの意味を込めて魔法を放つ。


「爆裂雷!サンダーブレイク!!」


俺の魔法により大地に雷と爆炎が広がり周辺の視界を奪う、頼むこのスキに逃げくれよ。

だが、そんな考えも束の間突如として竜巻のような風圧で爆裂雷の噴煙が周囲に飛び散ってしまう。


「こんなもの私達には効果など無い」


煙の後から現れたセレネは剣を抜いていた、恐らくコイツが剣圧で吹き飛ばしたのか?

だが、少しの時間稼ぎにはなったはずだ、しかしこのままこいつら三人を相手にするにしても分が悪すぎる、近衛騎士団では相手にならないし、精霊の二人に頼むわけにはいかない。彼女らは最後の砦だから。

緊張感の中、異変を察知したのかヴァレリアが俺の元に飛んできてくれ加勢に来てくれた。


「何か異変を感じたんだがどうした魔王様?」


「ヴァレリア来てくれたか!」


静観していたセレネがヴァレリアの姿を見た途端に戦闘態勢になる。


「貴様何者だ…?その恐ろしいほどの魔の力、もしかして魔神か?」


「人の姿を見ていきなり剣を構えるような奴に答えたくないね」


両手を上げてヤレヤレというようなフリを見せながら勇者を挑発している。

二人のやり取りを聞きながら、ヴァレリアに警告の意味を込めて彼女に伝えた。


「気をつけろ、奴の強さは半端じゃないぞ」


「ああ、肌で感じてるよ、強いなコイツは」


突如としてセレネの雄叫び同時に、踏み込んだ地面が大きく陥没する。


「――はああああっッ!!」


彼女のトレードマークとも言える金髪が猛烈な風圧に煽られ周囲にある空気が震えた。

一瞬で眼の前に現れた相手の剣に対して俺は必死で自身の杖を使い大きく火花を散らし攻撃を避ける。

相手の攻撃はもはや『突進』などという生温い言葉で形容できるものではない、まるで巨大な弾丸だ。

攻撃を避けたと思った次の瞬間、落雷にも似た轟音が響き渡る。


──ドゴォォォォォンッ!!


俺の後ろに剣で攻撃した衝撃波が同心円状に広がって後方の建物を吹き飛ばす。

破壊された破片が、後方に飛び散り粉々になって地面に落下した。

二人が対峙し交差した剣の間から、セレネは不敵に笑う。

何となく解った、今撃ってきた彼女の攻撃は様子見なんだ、まだ本気じゃない。


このままでは殺られるかも知れない、俺は何か逆転の手がないか必死に考えるが纏まらない。

とりあえず横槍が入らないようにヴァレリアに念話である行動を伝える事にした。


『(ヴァレリア聞こえるか?後ろの魔法使い二人を相手にして貰えるか?)』


『(え!?勇者の戦いに加勢しなくていいのかい?魔王様)』


『(こっちは、なんとか耐えて見せる、魔法使い二人に入られるとこちらが不利になる、しばらく動けないようにしてくれ、但し殺さないようにな)』


『(難しい注文だな…私の力じゃ強すぎて普通の人間だと耐えられないぞ)』


『(指一本で戦うつもりでやればいい、では頼んだぞ!)』


ヴァレリアに今後の目的を伝えて、俺は勇者に大声で告げる。


「勇者セレネよ!俺を追ってこれるなら来てみろ!」


そういいながら、村から離れた場所に俺は飛んで逃げた。

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