30. 精霊の確執と理由、親子を助けたい想い
リブラの協力で龍の親子を新たな種族、龍魔人として作り上げた俺は全身に傷を負ったバルザードを治療するべくリアの元に連れて行った。
アルタイルの大樹に近づいたところで、中からリアが出てきてくれた。
彼女は俺が抱えている人物を見て直ぐに何者かを察した。
「この気配は…龍王バルザード!なぜこの者がこのような姿で!」
「すまない、リア頼みがある、コイツに回復魔法を使ってくれないだろうか」
俺の願いに対して、彼女は即答した。
「お断りいたします」
彼女の答えは断固たる拒否の意思を感じた。
ティナの言う通り過去の確執によりバルザードは助けたくない、そうなのだろう。
「ティナからアルタイルの大森林に起きた出来事は聞いた、過去の確執で許せないのも解る、だが何とか助けて貰えないだろうか、この通りだ」
俺は日本人の専売特許である土下座をして必死にリアへ頼み込んだ。
彼女の確執がどのようなものかはわからないな、最強魔王のスーパー土下座で頼み込むこれしか方法はなかった。
「何故、魔王様がたかだか龍一匹の命を助けようとそこまで必死なのですか?」
「バルザードは自身の娘のために死の呪いを全身に請け負った、体の傷が酷くこのまま放置したら死ぬ、我は二人を助けると約束したのだ」
俺の決意を聞きリアは、大樹を見上げ静かに考えている。
恐らく彼女の中でも葛藤があるのだろう、自分たちを苦しめた相手を助けることに。
「魔王様少し、お話してもよいでしょうか?」
「何かあるのなら聞くよ、話してくれ」
「実は私には昔、妹がいたのです…バルザードがアルタイルの大森林を燃やした時、私とティナで必死に大樹を防御しましたが限界でした、そこで妹は自身の命をかけてこの大樹を守りました、私は止めたのにあの子は聞かず全精霊力をもって火を守る防御壁となって存在を消滅させたのです」
「ティナは話してくれなかったがそんな事があったのか、てっきり森を燃やしただけかと思っていたが…」
なるほど、リアが頑なに断る理由は、妹の命を奪ったのがバルザードだったからか。
確かにそれでは簡単には許せないよな、家族の命が奪われるその苦しみと同じ自体が起きている。
苦しめた相手だけ生き延びるのが許せないと言うのも理解は出来る。
「リア、今の話を聞いて確かに許せないという気持ちはわかる、大事な家族を奪われた気持ちは想像に出来ないくらい苦しい気持ちだったんだろう」
彼女は俺の話を静かに聞いてくれている。
「今回、バルザードはリアと同じ目にあっている、正体も知れない謎の人物に攻撃を受けて大事な娘の命をかけて守ろうとしている、立場は違うが大事な人を守るために死を覚悟しての行動だ、だがリアの回復魔法で救われるかもしれないんだ、もし助けてくれたら私は一つ貴方に約束しよう」
「…その約束とはなんでしょうか?」
「バルザードが回復したら、アルタイルの大森林を燃やしたこと、リアの妹の命を奪ったことに対しての罪を償わせる、それが私に出来る約束だ」
彼女は俺の言葉と約束の決意を聞いて自身の心に問いかけている。
通り抜ける風の音を聞きながら静かにリアの決断を待つ。
どれくらい時間が流れただろうか、彼女は静かにバルザードの元へ歩き出し何かを唱えた。
「還流の浄化!」
バルザードがいる場所に魔法陣が広がり、緑色の精霊力が集まる。
全身にあった傷に精霊力があつまり、傷が治療されているようだ。
そして治療が終わったのかリアは俺に伝えてきた。
「体の傷と出血は塞がりました、呪いの力は除去出来ませんでしたが徐々に効果は薄れています、時間はかかるでしょうがそのうち回復するでしょう」
「すまないリア、貴方の気持ちに感謝するよ」
「約束しましたからね、バルザードに罪を償わせてください」
「ああ、全力で言うことを聞かせる、まかせておいてくれ」
バルザードの肉体が回復したことで恐ろしい位のオーラが体内に漲っている。
体の回復を行っているのだろうが、このオーラは普通の村にいる人達の近くには置けないな。
以前に聞いていた村の近くにある洞窟の奥に小部屋があるのでバルザードをそこで安置しておこう。
バルザードを安置したところで村に戻ったところ、ヴァレリアが目を覚ましたらしい。
俺は、家から出てきた彼女に向かって事情を説明しようとしたが、リブラの静止も聞かずに突然猛ダッシュしてこちらを攻撃してきた。
──ガキィイイイン
自分の杖で彼女の攻撃を受け止めたがこちらが10メートル位後ずさる程のとんでもない威力だ。
攻撃の威力から以前戦った四天王のヴァラクより遥かに上のパワーを感じる。
龍魔神となって力がパワーアップしたのか不明だがヤバイ攻撃力であるのは間違いない。
「貴様ぁ!アタシの姿を何故こんな姿に変えた!?」
ヴァレリアは自分の姿が変わったことに怒っているようだ。
ここは素直に
「落ち着け!その姿になったのはバルザードの意思だ!」
「父様の意思だと?どういうことだ!話せ!」
落ち着きを取り戻したヴァレリアにこれまでの事情を話す事にした。
二人が龍殺しの剣で死の呪いを受けたこと、呪いを消すためには俺の配下として龍魔人に生まれ変わらせること、バルザードが配下になることを誓い助けたこと、娘の傷を受けて父親が瀕死になったことやリアに回復して安静にしてもらっているなどだ。
話を聞いてヴァレリアはショックを受けているようだった。
「そんな事があったのか…魔王様すまなかった攻撃してしまって」
「まあ防げたから大丈夫だ、しかし驚いたぞ、めちゃくちゃ強いじゃないか」
「この体になって何か凄い力に溢れてるんだ、戦いは任せておいて!」
ヴァレリアは自分の腕を上げて力こぶを作って見せる。
露出の高い衣装に目が行ってたが、体を見るとかなり筋肉質な感じだ。
先程の攻撃を受けて思ったが力強い仲間が出来たのは間違いない。
「しばらくは戦いはないだろうが、ヴァレリアにはある事を手伝ってもらおう」
「なんだなんだ?何をやればいいんだ?」
「バルザードを助けてくれたリアに対する恩返しの意味をこめて森の復興作業を手伝ってくれ」
「森の復興作業?なんだ、燃やすのか?」
ヴァレリアの言葉を聞いて、俺は少し怒った口調で彼女を注意した。
「お前…リアの前で燃やすなんて絶対に口に出すなよ?」
「あ、ああ…わかった、二度と言わないよ」
「アルタイルの大森林で枯れた木を伐採して、この村に持ってきてくれ」
「なんだ、そんな事か…わかったいつからやる?」
「今日はバルザードの近くにいてやれ、明日から作業を手伝ってもらおう」
「わかったよ魔王様!じゃあちょっと父様のところに行って来る」
そういうとヴァレリアは洞窟の方に向かって羽を伸ばし飛んでいった。
彼女の姿をみて弾丸の様に行動力が早い娘だと俺は思った。
やっと静かな時が戻った俺は、ゆっくりと今日一日を過ごすのであった。
だが、その裏である動きがある事をまだ知らなかった。
──とある教会内
教会の祭壇にて上級司祭とも言える存在が目の前の人物達に対してある命令を下していた。
「勇者セレネ・ヴィクトリアスとその仲間よ、ガンギルダ王国に向かい魔王を自称する存在について調べ、悪の権化と判断できた場合討伐を命ずる」
「解りました、司祭様、これよりガンギルダ国に向かいます」
そういった、金髪で白金に彩られた騎士は立ち上がり、入口へと向かうのであった。
隔日(火、木、土) の21時頃更新予定、筆が乗ったら他の日も投稿します。
月曜日だけは基本投稿お休みです。




