26. 姫様に美味しい料理を振る舞おう
俺とリブラは、何らかの儀式に利用されていた皇女様を救出してドイラム村に飛んで戻ってきた。
皇女騎士隊が泊まっていた家に姫様を連れていき彼女たちに合わせることが叶った。
「姫様!」
「姫様がいらっしゃった!」
「姫様ご無事で!」
「あまり無事という体ではないな、かなり体が衰弱しているし意識もまだ戻ってない」
皇女様の姿を見た近衛騎士隊は、みんな涙ぐんでいた。
自分たちが遣える大事な姫様に久しぶりに面会できたんだ、嬉しさも一押しだろう。
俺は、皇女をベットの上に寝かせて彼女たちに看病するように伝えた。
「肉体が衰弱しているから体に優しい食べ物で栄養補給してもらわないとな、すまないが看病はまかせた、何かあったら伝えてくれ」
「わかりました!おまかせください」
皇女騎士隊は姫様のそばに寄って綺麗な布で体を綺麗にしたり世話を始めたので任せておこう。
俺は彼女に食べさせる食事のことを考えていた、衰弱してる体には、タンパク質と野菜だよなあ。
姫様の弱った肉体を徐々に回復させる食べ物を考えて作ってあげよう。
なるべく、胃に優しくそれでいて体に栄養があるもの、日本だと豆腐入りの味噌汁とかうどんとか雑炊だが、この世界では揃わないので、まず野菜スープとしてミネストローネと試験的に豆腐を作ることにするか。
実は塩とにがりが手に入った時に考えていた、村にある大豆ぽいビーノから豆腐がつくれないかと考えていた。
先日から水につけていた豆があるので、この村での豆腐作りを始めるぞ。
まずは、水につけていた豆に対して更に水を継ぎ足し粉々に潰していく。
ミキサーがあればいいんだが、もちろんあるわけがないので、すり鉢と棒みたい道具で代用して小さく砕く。
細かく砕いた豆に対してまた水を継ぎ足して、ゆっくりと温めて煮ていく。
沸騰してきたら火を弱くしてしばらく待ち、布でこして豆乳とおからにわける。
ボウルみたいな入れ物に豆乳をいれてにがりを加えて後は、蓋と石で重しをして待つだけだ。
その間に野菜を入れたスープを作ろう。
ドワーフ達が来てくれた時に調理道具一式を用意してくれていたので、これを使って調理しよう。
この村に会った大豆の油を使い、既に収穫済みの玉ねぎを包丁でまず細かく刻んで飴色になるまで先に火で炒める、次に皮を剥いて細かくダイス状に切った切った人参とじゃがいも、とうもろこしの粒、にんにくを刻んで入れて更に炒める。
ある程度火が通ったところで鍋に入れて水と一緒に煮込む。
最後に大量に切ったトマトで赤くなるまでゆっくりと煮込み胡椒と塩で味付けて異世界風ミネストローネの完成だ。
自分で味見できないのが痛いが、学生時代に食費を浮かすため自炊しまくったので料理スキルは多少自身がある、味見出来てないがなんとかなるだろうと思ってる。
先日野菜を増やしたが、果物や調味料になる素材も欲しいな、またリアと相談してみよう。
異世界風ミネストローネが出来上がったのでリブラに少しだけ味見してもらった。
「塩辛かったり、辛すぎたりしてないか?」
「塩加減もいいと思います、優しい感じのスープで私は好きです」
あとは豆腐が出来上がるのを待つだけか、その前にルコットへちょっと相談しに行こう。
俺は、ルコット達の工房に向かい彼女を見つけたので建築の新しい依頼だ。
「ルコットちょっといいかな」
「なんだい、魔王様?」
「実はな、ガンギルダの女性騎士五人と皇女を受け入れる事になりそうなんだ」
「なんだって!?なんでまた王国の皇女なんかを迎えたんだ?」
「少し事情があってな、簡単に言うと皇女は国に幽閉されて何かの儀式に利用されていたんだ、それを助けたので国に見つからないよう、ここで匿いたいんだ」
「なんだか複雑な事情だな、もしかして滞在用の家を作ってほしいって事か?」
「さすが察しがいいな、皇女含めた六人が住める家を作って欲しいんだ」
「それなら、先日の依頼で家を建てる要望あったじゃない、その中に十人住める大きめな建物を設計したから大丈夫だよ」
「おお、ならその建物優先的に作ってもらえるか?」
「わかった、おーい!みんな集まって!ちょっと打ち合わせしよう」
建築に関する相談では、ルコットは非常に頼りになる。
流石ドワーフ国でも一目置かれる存在だ、これからも色々頼りにさせてもらおう。
それから数時間後、姫様が目を覚ましたと騎士団の一人リィンから連絡があった。
皇女の様子を見に行こうと彼女たちが滞在している家に向かうことにした。
近衛騎士達が待ち構えていた家に入って姫様の元に行くとクラリスが今までのことを伝えてきた。
「ここまで貴殿が助けてくれた事までは、お伝えしておいた」
「皇女殿下よ、まずは名前を教えてもらえるか?」
皇女は静かにこちらを見つめ自身の名を静かに、そして力強く応えた。
「私はガンギルダ王国第三皇女『エメルディア・ルフ・ガンギルダ』と申します」
塔で見た時は暗くてよく見えなかったが、彼女の髪は赤茶色に煌めくウェーブ状の長い髪を揺らしている、優しいながら皇女らしい鋭さを兼ね備えた眼差しに気品に満ちた綺麗な顔をしている、国の運命を背負う者特有の力強さと慈悲深さが同居しているような女性だ。
振る舞いから感じるがさすが皇女だけある、礼儀作法はバッチリだな。
「これは丁寧に、我が名は魔王バルテオスだ、元魔王だがな」
「そちらのクラリスから事情は伺いました、幽閉されていたところを貴方様のお力添えで助けていただいたと、救出していただきありがとうございます」
「まあ、成り行きでやったことだ、気にするな、ところで体調の方はどうだ?少し痩せているように見えるが…食事はできそうか?」
「はい、少し体が重いですが、大丈夫です」
「そうか、では食事はできそうか?」
「食事ですか…?ええ、食べられると思います」
「あまり長く話すのも何だから食事を用意しておいた、王国のように豪華な食事は出せないが栄養は付くだろうから食べてくれ」
リブラが人数分の俺特性ミネストローネを皿に注いで持ってきてくれた。
皇女の近くのテーブルと騎士達がいるテーブルの上に置く。
「これは、なんでしょうか」
「この村特産の野菜を使ったスープだ、弱った体の滋養回復に向いている、近衛騎士達も一緒に食べるがよい」
「姫様には、私がお食べさせます!」
そう言って、世話役のミラが皿を持ち、優しくゆっくりと皇女に食べさせている。
「素朴な味わい…だけどなにか体に染み渡ります、とても美味しいです」
近衛騎士団達も食事をして感想をくれた。
「これは、貴殿が作ったのか?貴族の食事に匹敵する味だぞ!?」
「美味しいです、本当に優しい味わいです」
皆の評判を聞く限り、一応料理は気に入って貰えたようだ。
美味しくておかわりを要求する位なので、これは成功したと言ってもいいだろう。
「食事をして腹が満たせたら眠くなるだろう、村の周りには誰も近づけさせないから、みんなしばらく休むといい」
「魔王様ありがとうございます、少しお言葉に甘えます」
部屋を出ようとした時、皇女があらためてお礼を伝えてきた。
「魔王様…ありがとうございました、このお礼は必ず」
「ああ、それ程気にしなくてもいい、後日にまた事情を聞かせてくれ」
「はい、わかりました」
食事を振る舞った俺は満足しながら自分の家に戻っていった。
用意していた豆腐を出していないが次の食事にでも提供しようと考えた。
だが、この時また新たなる脅威が迫ってきていることに俺もリブラも知らなかった。
隔日(火、木、土) の20時頃更新予定、筆が乗ったら他の日も投稿します。
月曜日は投稿お休みです。




