22. ガンギルダ近衛騎士団と元魔王の戦い
ガンギルダ王国の巨大な鉄門が重々しい音を立てて開かれる、その中から五騎の白馬が躍り出した。
先頭を切るのは、近衛騎士隊長のクラリスだ、彼女は手綱を短く持ち、慣れた手つきで白馬を操り後に続く仲間たちに激励する。
「全騎、遅れるな! 村までは距離がある。陽が落ちる前に、ドイラム村まで走り抜けるぞ!」
彼女の凛とした声に、すぐ後ろを行く金髪縦ロールの騎士リィンが力強く応じました。
「分かっておりますわ。ですが、この美しい白馬たちを酷使するのは少々心が痛みますわね」
隊の中ほどでは、青髪のポニーテールをなびかせた騎士ミラが、穏やかな表情で馬の手綱を引きながら首筋を優しく撫でていました。
「よしよし、いい子ね。……みんな頑張ってね」
そして最後尾付近を銀髪でロングの髪をしたユーニと、首元までのピンク髪を跳ねさせた騎士イザベラが、必死に追いかけます。
「待ってくださいっ! ……わ、私達だって、頑張ります!」
五騎の白馬が巻き上げる砂塵は、まるで一陣の風のように彼女たちの後を追いかけて、未踏の荒野へと駆け抜けていくのでした。
──それからしばらくしてドイラム村
村の近くに何者かが迫ってきているのをリブラが感知して俺の元にやってきた。
「バル様!何者かがこのドイラム村に近づいてきています」
「なんだって?来ているのは魔族か?」
「いえ、人間のようです、恐らくこの速度は馬に乗ってこちらの村に駆けて来ています」
「馬を使うと言うことは、一般人ではないか…用心のため村の入口で待ち構えるか」
リブラと二人で村の入口で待ち構えていると、馬が駆けてきている音が響いてきた。
遠くを見ると白金の鎧を身に着けた騎士五人が向かって来ている。
駆けてきた彼女らは村の入口に待ち構える俺達を見て、そこで馬を降りこちらに問いかけてきた。
「我らバルテオス国所属、皇女近衛騎士団!この村に邪悪な物がいると聞いてやってきた!」
まさかバルテオス国の騎士団直々のお出ましとは思っても見なかった。
とりあえず、要件を聞くため話しかけてみる事にした。
「俺に何用だ?」
「貴様は何者だ!」
「我が名は魔王バルテオスだ、元魔王だがな」
「魔王バルテオスだと!?あの最強最悪で邪悪の化身たる魔王…ただの農夫にしか見えないが」
まあ、初見で見たら農家のおじさん衣装に農業用フォーク持ってるから誰が見てもそう思うよな。
しかし王国の騎士が何故ここに来たのか問いただす必要はあるな。
「魔王というのは真実だ、それで貴様たちは何をしにここに来た?」
「国王様の命により邪悪な魔族を討伐しよとの命令だ!」
そういいながら彼女たちは剣を抜き臨戦態勢になる。
王国の騎士団だろうが、見た感じ相手になりそうにない、こちらが本気で攻撃したら死ぬ可能性だってある。
とりあえず、恫喝でもして追い返すことにしてみよう。
「ハッキリいってやろう、貴様たちの力では我の足元にも及ばない、見逃してやるから素直に国に帰れ」
「そうはいかない!私たちはここで討ち死にしてでも貴様を倒す必要がある!」
「命を落とすとしても戦うと言う事か?」
「忠義を尽くし、使命を全うするのが我ら近衛騎士隊だ!例えこの身が滅びようとも貴様を倒さなければならないのだ!」
うーん、国に忠誠を誓うのは騎士の務めと言うが、このままだと説得も恫喝にも屈しなさそうだな。
美人さん揃いだし、なるべくなら怪我させること無く返したいんだが…こちらの攻撃で脅したとしても逃げないだろうなあ。
そんな時、隣にいたリブラが俺の体と突いて何か教えようとしてきたので耳を傾けて聞いてみた。
「…バル様…この人達何者かに監視されています」
「…監視?こちらを討伐できるかどうか見られてるって事か?」
「少し様子が違うようです、彼女たちの動向を見られているような感じがします」
「王国に監視されてるって事か…理由は考えられるか?」
「わかりません、ただ監視対象になっているのは確かです」
俺は考えた、彼女たちが王国に監視されているという事は行動を見られている。
見たところ彼女らは任務を忠実に全うする忠義の高い騎士たちだ、それなら監視など付けないだろう。
だとすると彼女たちの生死を確認するためか?何故そんなマネをする?
もしかすると王国としては消えて欲しい存在、つまり厄介者を処分するためにこの地に向けられた可能性があると言う事か…。
「…なんとなく予想はついた、リブラ知恵を貸してくれ」
「…なんでしょうバル様?」
「…彼女らを一時的に仮死状態にするような技はないか?一旦死んだと見せかけたい」
「…そうですね、爆裂雷を彼女たちの後ろに落として、誘導雷で全員を気絶させます、その後に私が魔法障壁で彼女たちを包み、仮死状態のように見せかけるのはどうでしょうか」
「…わかった、コンビネーションが大切だな、今から悪役を演じるから上手くやってくれ」
「…おまかせください!」
二人でひそひそ話を続けていたら痺れを切らしたように騎士隊長のクラリスが戦うように剣を向け叫んできた。
「何をコソコソと話している!さっさと我らと勝負しろ!」
「フハハハハ!魔王バルテオスに挑むとは笑止千万!一撃で皆殺しにしてみせるわ!」
俺は、おもいっきり悪役を演じながら魔法攻撃の構えを取り狙いを定める。
「いくぞ!爆裂雷サンダーブレイク!」
魔法発動のセリフとともに彼女たちがいた後ろに大型の雷が落ちて噴煙を撒き散らす。
その誘導雷に全員を感電させるとまるでスタンガンでも当てたように全員がバタバタと倒れてしまう。
「まさか、こんなはずでは…」
隊長のクラリスは右手で落ちた剣を拾おうとしながら、そのまま気を失う。
その動作を見逃さず、リブラが魔法障壁を展開して彼女たちを死んだ後のように固めてしまう。
「王国騎士団と言っても大した事ないな、リブラ村のエルフたちに伝えよ、彼女らの死体を村に運び弔ってやれ (家に運び込ませてくれ)」
「わかりました、おまかせください!(まかせてください)」
され、これで彼女たちは名目上死んだ事になった。
あとで目を覚ましたらガンギルダの事情などを聞いてみるか。
しばらくするとリブラがエルフの娘たちを連れてきた、恐らく事情は聞いているだろう。
彼女たちは何も言わずに五人の騎士たちを運んで行く。
遠くで監視していた何者かが笑いながらこちらの様子を伺っていた。
「ククッ近衛騎士隊は皆死んだか…これで邪魔者は消え去ったな…しかし、奴の強さはかなりのものだ…国王様に報告しよう」
そう言い残し、謎の監視者は姿を消した。
隔日(火、木、土) の21時頃更新予定、筆が乗ったら他の日も投稿します。
月曜日は投稿お休みです。




