20. 村に新しい住人を迎えたい
ドワーフ国との交易をまとめた俺は村に帰ってきて、久々にゆったりとした暮らしを謳歌していた。
俺とリブラは二日ほど休みにすることにして自分たちの家でのんびりと過ごしている。
ついでに、皆あまり休んでないので今日から二日の休みを取ろうと提案し、みんな揃ってお休みだ。
「久しぶりにのんびり出来ますねえ…」
いつもキリッとしているリブラが珍しくテーブルの上に体を預けて溶けている。
俺はしっかり者の彼女も好きだがこんな姿も可愛いなと心のなかで思っていた。
「こっちに来てからトラブル続きだったからなあ、たまにはいいだろう?」
「はい、とてもゆったりと過ごせています…」
二人で静かに時間が流れるのを感じながら俺はルコット達の事を考えていた。
こちらに移住を決意してくれた彼女は準備があるからしばらくしてからこちらに向かうという。
そういえば、ドワーフ国の問題にかかりきりだったせいで村の事を見れていなかったなあ。
皆に現状を確認して改善点を調べてみるかと考え、全員が住んでいる家を回って聞いて見る事にした。
村長に村の食糧事情を確認してみた、以前と比べて作物の育成が順調なため食に困窮することはなくなったそうだ、ただまだまだ余裕があるという状況じゃないので引き続き作物の増産が必要だな。
それともう一つ相談があった、俺に村長の役目を引き継いで欲しいと要望された。
村長は引退してもおかしくない程の高齢だ、村の復興を実質俺が仕切ってるので今後の事を任せたいという。
確かに高齢の村長をこのまま働かせるのも気が引けるし、今後は相談役になって貰うことにして俺が村の業務を引き継ぐことにした。
まあ、社畜時代に業務引き継ぎなんて慣れきってるからこれくらいどうってこと無い。
次にエルフの三人娘へ農作業の状況確認だ、彼女たちは人手が全然足りていないと言っている。
たしかにまだまだ村では人材不足がいなめない、食糧事情も改善してきたので、新たな人材を確保したいところだ。
休日が終わったら他地域のエルフたちで生活で困っている人達がいないか彼女たちに探してもらう事にした。
休みだというのにやっぱり動いてしまう。
魔王の体は疲れを知らないから全然大丈夫だが休みに慣れてないせいかどうも落ち着かない。
体を取り戻したら一日ベットで寝るとかやってみたいなあと思った。
──それから一週間後
ルコット達が村にやってきた。
大型の牛舎四台に大量の荷物とドワーフ達を乗せてかなりの大所帯だ。
「魔王様!ドワーフ国から道具と仲間を連れてやってきたよ」
ルコットは木材加工のドワーフ職人含めた総勢十五名を連れてきた。
かなり大所帯で来たなあ、食料は足りるかと思っていたら俺の心配を他所に、ルコットが食料についての懸念点を先に伝えてきてくれた。
「当面の生活用の食料はドワーフ国から定期的に送られてくる、主に肉類だが私たちの食料については気にしなくていい、村の人の分含めて多く頼んでおいたよ」
村人の食生活にタンパク質が少ないと思っていたから肉類の補充は助かる。
ルコットに感謝して村での活動について相談することにした。
「最初はまず何をやる予定なんだ?」
「まず、建設用の木材を加工する工房を建設したいんだ、どこかいい場所ない?」
村に木材加工場を建てて大量に建材を作り新しい建物を作っていくそうだ。
木の加工をやるなら森に近い場所がいいだろうと思い、アルタイル大森林に近い広場を彼女らに提供した。
木材は大量に伐採して山積みしてある木を好きに使って貰い有効活用してもらおう。
「よーし!どんどん木材と端材で切っていくよ!そっちは基礎工事用に融和石を混ぜて固めて!木材にしたら図面通りに建物作っていこ!」
融和石というのはどうやらコンクリートみたいな材料らしい、住宅用の基礎工事みたいだな。
異世界の建築って土を固めたりしてるのかと思ったが意外と現代的な工法だ。
ドワーフ達の指揮は彼女にまかせて俺はリアに新しい作物の相談に行こう。
「魔王様どうしましたか?」
「ちょっと新しい植物の種をお願いしたくてな、ついでに森の復元状況も確認しに来た」
最近俺が手伝えてないので伐採のペースが落ちてるが一応順調らしい。
森の木の伐採は徐々に進んでいるようだ、
「すまないな、村の復興を優先的に進めてるからリアの手伝いがあまり出来なくて」
「大丈夫ですよ、リブラさんも手伝ってくれてますし、本来ならもっと時間かかってもおかしくないですから」
リアから新しい作物として大麦、小麦、ライ麦を作ってもらい、お酒用に育成することにした。
そして食料増強用に、にんにく、キャベツ、人参、ピーマン、玉ねぎ、じゃがいも、香辛料として胡椒を育てて食事を更に豊かにしてみんなの健康を増進させよう。
これでかなりの作物が作れるようになるが、今の畑の量では耕作地が足りないな。
あとで放棄された耕作地を耕してみて畑を広げよう。
それから数日後、ルナリーと共にエルフの人達が六人程見つかったそうだ。
だが、来たのは全員女性で、男のエルフはいないのか聞いてみた。
「エルフの男達は行方不明で、現在どこにいるかわからないんです」
そうか、エルフの男性がいた方が村としては助かるんだが今後捜索する事を考えるか。
新メンバーとして、フィオナ、サフィラ、セフィラ、エルシア、ミリア、イリアが加わった。
今後はエルフ農作業隊として頑張ってもらおう。
人員が増強出来たので更に畑を増やす作業にかかることにしよう。
見た目農具の最強杖が武器として使った時はこちらの意思にそって変形したので、今回は地面を耕すクワにならないか試してみよう。
「たしか魔力を込めて、クワとして形を体現せよ…」
魔力を込めて意思を通したら予想通り草用フォークの先端が合体してクワの形に変形した。
この伝説の杖は魔法のロッドとしての機能に加え農具としても使えるとは流石伝説と言われる武器だ。
「よっしゃ!耕してみるか」
それでは魔王の農作業開始だ、俺はクワとなった伝説の杖を思いっきり振り下ろした。
振り下ろしたクワの威力を見た瞬間に珍しく俺は驚愕して珍しく絶叫した。
「なんじゃああこりゃあああ!!」
クワを地面に振り下ろしたら、大凡100m位先まで大地が隆起して地面が一気に耕された。
まるで耕運機が全速力で走り抜けて地面を耕していったような感じの効率だ。
なんだこれ、魔王の魔力が農具の威力に影響してるのか!?作業がめっちゃ捗るな。
調子に乗った俺は耕作放棄地を全部耕して畑をめちゃくちゃ拡張してしまった。
エルフの娘たちに新しく手に入れた種を区画ごとに撒いてもらい、更に作物を拡張していくぞ。
これで村人の食生活が更に豊かになってくれればいいな、ついでにお酒づくりの下準備もできる。
畑作業が一通り終わったところでエルフのエレーナが問いかけてきた。
「そういえば魔王様、ドワーフ国に芋を出荷するんですよね?この芋ってなんて名前なんでしょう」
そうだ、この村の特産品としてサツマイモを出荷するんだった。
でも、名前をそのまま付けると俺みたいに異世界人がいたらここに日本人がいると知らせる事になる。
味方になってくれるならいいが日本で知り得た技術を持って敵対勢力になった時にはやっかいだ。
念の為対策として名前を変えておくか。
うーん、バルテオス芋?魔王がいるぞって宣伝するようなものだな。
バル芋?なんかしっくりこない。そうだ少し変えて『パルテ芋』という名前にしよう、なんか響きも可愛らしいし。
「この作物はパルテ芋という名前だ」
「パルテ芋、いいですね!なんかいい響きの名前です」
出荷するサツマイモの名前を安易に決めた俺はこの時全く気付いていなかった。
この安易な名前付けが今後の俺の運命を変えることになるとは誰も思わなかったであろう。
隔日(火、木、土) の21時頃更新予定、筆が乗ったら他の日も投稿します。
月曜日は投稿お休みです。




