18. 俺は四天王ヴァラクに負けたくない!
最強の魔法杖を使い、魔力が底上げされた状態での魔法攻撃に対して虚空のヴァラクは平然としていた。
この世界に来て最強魔王だと伝えられて自負していたが、始めて苦戦する相手に遭遇した。
実際にはまだ本来の力を出せていない可能性がある。
なぜなら、俺の体はまだ魔王としての肉体が実体化していないからだ。
思わぬ苦戦を強いられた俺は、何か打開策が無いかと考えていて気持ちを吐露した。
「こんなところで苦戦するとは思ってもみなかったな…」
だが相手は攻撃の手を緩めること無く、両手から交互に気功弾を連続で放ちこちらを攻撃してきた。
「オラオラオラ!もっと楽しませてみろよ!」
相手の気功弾の連打に対して、リブラが俺の前に立ち魔法障壁で防御してくれている。
だが、彼女の様子を見る限りかなり辛そうな感じをしているこのままでは長くはもたない。
何か逆転の一手はないものだろうか、考えを巡らせていた時に攻撃が一瞬止まった。
ヴァラクが先程の連打の態勢から、攻撃の形態を変えて両手を構えを取っている。
「よく耐えるじゃねえか、それなコイツはどうだ」
ヴァラクの両手に物凄いエネルギーが溜まり超巨大な気孔弾を作り出している。
昔見た某宇宙人が戦う戦闘アニメのようなどんどんと巨大なエネルギーが溜まり超巨大な弾が出来上がった。
「これを食らって国ごと吹き飛びな!!」
相手が撃ってきた超巨大な気孔弾は二人を飲み込むような勢いでこちらに迫ってきた。
俺は瞬時に思った、これはヤバイ!この弾はリブラでは耐えきれない。
そう思った俺は彼女の前に立ちはだかり、手に持ってた杖を身構えて魔力を込めて抑えようとした。
「うおおおおおおおおお!!」
俺は声が変わった状態で全力で叫びながら両手で持った杖で相手の攻撃を眼の前で抑えた。
ただ気孔弾の威力は衰えずブルブルと震えながら耐えてるのがやっとで厳しい状況でキツイ。
このままでは威力を抑えきれない、そんな時ある閃きが俺の脳裏に浮かんだ
これしかない、そう思った俺は両手で杖を上に向けて動かして気孔弾を空に向けて弾き飛ばした。
弾き飛ばされた気孔弾は空に向かって一直線に飛んでいき何とか難を逃れることが出来た。
しかし、こんな攻撃を受けながら杖が壊れないのはさすが最強の杖だと言うべきか。
だが、相手は余裕の表情でこちらを見て更に攻撃を続けようとしていた。
「やるじゃねえか、弾き飛ばすとは…だがまだまだ行くぜ!」
このまま連続で攻撃されたら二人とも命が危うい、俺はいいがリブラを死なせるのは絶対に嫌だ。
そういえばルコッテがこの農具っぽい杖の使い方で気になること言ってたな。
たしかこうだっけか…
(…魔力を込めて使うと物理攻撃の威力を上げる杖とかで、投擲槍や近接武器としても使えるそうで…)
彼女の言葉から遠隔の投擲槍や近接武器として使える杖だと言っていたのを思い出した。
俺は、藁にも縋る思いで投擲槍として使うために手に持っている杖に対して気合を入れて全力で魔力を込めてみる。
「ぬおおおおおお!」
リブラの変声魔法のせいで全然気合入った声に聞こえないがとにかく全力で魔力を込めた。
魔力を込めているといきなり五本に別れている先端が中心に集まり槍のように変形した。
何だ?杖に変形のギミックがあるのか?まさか槍の形状に変形する仕組みがあったのか。
「これでも喰らいやがれ!」
相手が気孔弾を作っている所へ、俺が全力で魔力を込めて変形した槍をヴァラクに対して本気で投げた。
俺の右手を離れた槍は球体のエネルギーが膨れ上がりとまるで同じような気功弾に姿を変えて物凄い勢いでヴァラクへ飛んでいった、そう戦闘機のような速さで。
「まだこんな反撃する能力があったとはな、こんな攻撃捻り潰してくれるわ!」
ヴァラクが準備していた気功弾と俺の攻撃が重なり激しいスパークを起こしている。
飛び散っている花火で周囲が明るくなりまるで太陽のような光を放って眩しい。
相手はこちらの予想外の攻撃の威力を抑えるのがやっとのようだった。
「なんだ!?この攻撃の威力は!!そんなバカな!!」
しばらく耐えていたヴァラクのエネルギーは突如として風船が破裂するように周囲に飛び散った。
エネルギーの残骸の中から現れた槍に変形した杖はそのまま直進して相手の胴体を貫通して行き体に大きな穴を空けた。
ヴァラクは俺の攻撃に驚愕し、自分の死を悟りながら最後の言葉を放った。
「そ…そんなバカな…この威力…もしかしてお前はあああ!」
──ズドオオオォォン
相手の巨体は大きな音を響かせながら地面に倒れ伏せ絶命した。
どうやらなんとか四天王の一人を倒すことが出来たようだ、いやマジで強かったな。
「た…倒せたぞ…さすが最強の杖のおかげだ…」
「お疲れ様です、バル様!私を庇ってくれた時ちょっと心がキュンとしました」
「そりゃ大事な許婚を死なせるわけにはいかないからな」
その言葉を聞いてリブラは照れて両手で顔を隠していた、こういう反応可愛いなあ。
彼女の可愛さを堪能しながら、先程の功労者である最強杖を拾いに行こうと思った。
「じゃあ、あいつを倒した杖を取りに行くか」
ヴァラクを貫いた杖を取りに行こうと相手が倒れた後方を見て驚いた。
戦闘に夢中になって気がついていなかったが杖が通り抜けた背後は何もかも吹き飛ばして完全に地形が変わっていた。
まるでここで巨大な爆弾を落としたように、ヴァラクの死体を中心に周囲が跡形もなく一体を吹き飛ばしていた。
「なんだこれ…破壊の威力やばすぎだろ」
「杖が通ったところから後ろが何も残っていません」
杖の破壊力を見てこれはヤバイと確信した。
最強杖とか言ってて全力で魔力を込めて攻撃したけど下手したら国すら吹き飛ばす破壊力があるかもしれない。
とりあえずこの地形の破壊はヴァラクがやったことにするか、死人に口なしだ。
「リブラ、この破壊はヴァラクがやったことにするいいね?」
「は、はい、わかりました」
この件を内緒にするようリブラに口裏合わせをしておこう。
さっきの杖は使い方によっては強力な武器にもなるが両刃の剣だな、今後使い方に気をつけよう。
二人で遠くの地面に刺さっていた杖を回収して、ドワーフの国に戻って報告することにした。
──場所はかわり魔王城
地下にある会議室のような場所で、四天王の三人と魔王軍統括シエルが集っている。
突如として扉を開き魔王軍の配下が部屋に報告に入ってきた。
「大変です! ドワーフ国ガヴェリアを攻めていた四天王ヴァラクが倒されました!!」
「なんだって?倒した相手は勇者か?」
「い、いえ…農家の格好をした黒い男だそうです」
「黒い男?一体ソイツは何者だ?」
「まあいい、やつは四天王の中でも最弱、代わりになるものを探さないとな」
「だが、戦力減はいなめないな」
「シエル殿如何致しますか?」
「現在、新たな魔王を復活させようとしています、それまでは貴方達三人で任務を続行しなさい」
俺は知らなかった、魔王軍は新たな魔王を復活させようと目論んでいる事など。
隔日(火、木、土) の21時頃更新予定、筆が乗ったら他の日も投稿します。
月曜日は投稿お休みです。




