106. 魔王アルカディア驚愕の正体
魔王アルカディアの正体を暴き、気を失った彼女を俺達の街まで連れ帰った。
まさか、新しい魔王に自身がいた世界の後輩が転生してきていたなんて驚くばかりだ。
目を覚まして暴れられても困るので、俺は付きっきりで彼女が目を覚ますのを待つ。
数時間は経過しただろうか、彼女は静かに目を覚まし体を起こして頭を数回振り、こちらを見据えてきた。
視線が定まり、俺の姿を見た彼女は、突然俺に抱きついてきて大声で歓喜の声を上げてきた。
「お兄ちゃん!やっと会えた!長かったよ…」
お兄ちゃん?どういう事だ。
俺を誰かと間違ってるのか、それとも意識が混濁してる?
彼女を落ち着かせるため、彼女を静かに嗜める。
「残念ながら、私は君の兄さんじゃないよ…誰かと間違ってるんじゃ」
「お兄ちゃんまだ、気づいてないんだ…ホント鈍感なんだから」
「言ってる意味が解らない、どういう事?」
「私の名前は、品元彩香って当ててくれたじゃない。まだ名字の意味を思い出さないの!?」
品元の名字、誰だっけ…?
頭の中で悩んで答えが出てこない。
「ごめん、昔会ったのか?思い出せないんだ…」
「もう!すっかり忘れてる!品元は私の旧姓だよ!天城綾香って言えばわかるの!?」
言われて思い出した。
俺の親父と、妹の母が再婚して天城綾香に名前を変えたのだ。
妹の綾香は再婚する前の名字が品元、すっかり忘れていた。
「本当に彩香なのか…?」
「なりすましてどうするのよ!お母さん再婚して引っ込み思案で虐められてた私をお兄ちゃんが守ってくれた。あの事件が起きて家を出ていって、会社も辞めて別の会社に入った。あとメガネフェチ!ここまで言えば信じてくれる?」
彩香から聞いた俺と家族しか知らない情報を聞いて確信した。
この娘は俺の妹だ、義理の妹だけど間違いない。
「本気で真面目に彩香本人なの?」
「そう言ってるでしょ!ここまで言って信じられないの」
「もし、彩香だとして何で名前変えてまで、俺が居た会社に入って来たんだ?」
「お兄ちゃんは、あの事件が原因で家を出ていって、以前勤めてた会社も辞めて別の会社に入ったってお父さんから聞いたから…だから一緒の会社に入って支えたいと思ったの…」
「あれは俺が相手にキレたので自業自得だ、彩香には自由で元気な学校生活を送るようお願いしたじゃないか…」
そう、今思い出しても腹立たしい事件。
親が再婚して彩香が新しい学校に通い始めたが、転校先でイジメが起きたのを知った。
俺はそんな妹を守ろうと、虐めていた相手を呼び出し説得しようと試みたが、相手は全く悪びれない態度に激怒して本気でブン殴ってしまったのだ。
その後は親が出てきたが、虐めの事実を公にしない替わりに示談が成立し終結。
だけど会社に事件の内容が伝わり立場が悪くなり退職。
別の会社へ転職を余儀なくされたんだ。
「あの時お兄ちゃんは私を守ってくれた!だから今度は絶対お兄ちゃんを守るって決めたの!」
「もう一つ聞いていいか?」
「なに?お兄ちゃん」
「この世界に彩香が転生して来たって事は、俺と同じく死んでしまったのか?親父と母さん残して兄妹とも居なくなって悲しんでるだろうに…」
綾香は真剣な顔をしてこちらを見つめ驚きの事実を伝えてきた。
「お兄ちゃん今から言う事に驚かないでね」
「お、おう」
「お兄ちゃんは死んでない」
「え…ええっ!?俺は確かに会社で息を引き取ったぞ?」
「お兄ちゃんが倒れた日、私は気になって会社に戻ったの。そしたら倒れてたのを見つけて、すぐ救急車を読んで緊急入院して一命は取り留めたよ」
「そ、それで?どうなった」
「お兄ちゃんは、心臓麻痺の後遺症で意識が戻らない状態になってしまったの」
「生きてたけど意識が戻らない状態?それなら何故俺はこっちの世界で元気にしているんだ?もしかしてゲームの世界とかじゃないよな」
「ここは現実の世界だよ」
「なぜ、そう断言できる?」
「私はお兄ちゃんの病室に何度も通っていた、けどある時期からの記憶が抜けていてそこから先がわからないの、記憶を取り戻すためやらなきゃいけないことがある」
「それはなんだ?」
「お兄ちゃんと一緒にいた天使の子に会わせて欲しいの」
「彩香はライラの事を知ってるのか?」
「ライラって名前なんだ…その子は今どこにいるの?」
「ラグナ湖の北にある山頂にいるよ」
「お兄ちゃん、案内してくれる?」
「いいけど、今から行くのか?」
「善は急げって言うじゃない、直ぐに向かいましょ」
突然現れた新魔王の妹と飛翔魔法を使い、ラグナ湖近くの山頂へと向かう。
目的地に到着した妹は、ライラの側へ近より感慨深そうな表情を見せていた。
彩香は、魔法障壁を使った封印の結晶に手を当てて呪文を唱える。
「障壁封印解除」
解除呪法によりライラに掛けられていた封印が解かれ、彼女が静かに目を覚ます。
ライラは、俺とアルカディアが二人並んでいる姿を見て自然と涙が溢れる。
そして彼女は静かに彩香へと言葉を告げて喜びを現す。
「おかえり、もう一人の私」
「ただいま、よく頑張ってお兄ちゃんを支えてくれたね」
二人は上下に手を繋ぎ、揃って宣誓するように言葉を重ねて叫ぶ。
『我ら二人の意思と肉体をひとつに』
突然二人が眩しいばかりの光に包まれ目を開けられない。
まるで閃光弾でも撃たれたような光で何が起きているのか全く不明だ。
しばらくして、光が収まると魔王アルカディアの姿は消え、ライラ一人が残っていた。
「彩香は!?アルカディアはどこに消えたんだ!?」
「お兄ちゃん落ち着いて、私たちは一つになったんだよ」
「二人が一人にどういう事だ!?」
「説明すると長いんだけど…簡単にまとめた感じでいい?」
「ああ、さっぱり解らないからな」
「天使のライラは天城彩香の記憶を引き継いだ分身体、魔王アルカディアはこの世界で私が具現化するために作れらた肉体。二人揃ってこの世界の私が完全に復活したって事」
「なんだかよく解らないけど、ライラの中身も実は彩香だったって事?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、何故それを早く言ってくれなかったんだ?」
「アビスゲート計画を遂行するために、ライラの素性を知られるわけにはいかなかったから。八人の神と天使の監視網を欺くために必要な措置だったの」
「アビスゲートって魔界の扉とか言われてる奴か?でもなんでみんなその扉を開こうとしているんだ?」
「この世界の神に対抗するために必要な事だというのは知っているけど、それ以上の情報はないの」
「二人が一人になったというのは、まあ何となく解ったけど…なぜライラの姿になったんだ?」
「だって、お兄ちゃんこの容姿が好きなんでしょ?メガネだし」
「うっ!何でも知ってる妹というのは恐ろしいな…」
「でもこれで、お兄ちゃんの嫁になれる!ねえねえ子どもは何人欲しい?」
「いやいや、彩香は妹だろうが!」
「ライラの記憶引き継いでるから全部知ってるんだよ?私を嫁にしてくれるんでしょ。それに妹って言っても義妹だから結婚も問題ないじゃない!」
「いや、それはそうだけど…なんだかやりにくくなったなあ」
なるほど、ライラが好意を向けてくれていた理由が今わかった。
中身が妹で俺の事を慕ってたんだからそりゃ好きになるわけだ。
「私は絶対お兄ちゃんの嫁になるんだからね」
「わかったよ…ところでこれからどう呼ぼうか?」
「どう呼ぶって?」
「実はライラが妹でしたって説明してもみんな混乱するだろうし、今まで通り俺のことはパルテで、彩香はライラと呼んでもいいか?兄妹の事は二人だけの秘密な」
「お兄ちゃんがそうしたいなら別にいいよ」
俺は新魔王とライラが自分の妹だという事実を受け入れてこれから一緒に過ごすことになった。
魔王の問題は解決出来たので、街を復興させつつ次の目標に向かおう。
ついでにアビスゲート計画と言うのが一体何なのか全貌を解明していくか。
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