104. 新魔王アルカディアの正体を暴け
新魔王アルカディアとの戦いが繰り広げれこちらは苦戦していた。
相手は問答無用で魔法攻撃を繰り広げこちらは防戦一方だ。
自分より遥かに強い魔力と冷静な分析力、防御スキルもこちらより強い。
何とか対話しようにもこちらの話を聞く耳は持たない。
そういえば、一つ疑問に思っていたことがある。
天使だったライラは魔族の肉体に憑依していた。
もし天使が魔王の肉体にも憑依していたら恐らく打つ手は無い。
だけど洗脳を受けているという事は、誰か別の魂を依り代として使っている?
ならば、この新魔王の中身は一体誰なんだ?
この世界の人間なのか、俺と同じ様に転生した魂が使われているのか?
俺は一縷の望みを掛けて相手の攻撃を受けながら言葉を続ける。
「お前の正体は一体何者だ!?」
「戯言に耳を貸す必要は無い、絶界魔法…爆裂破 (エクスプロージョンブレイク)」
また俺の知らない魔法だ、爆発の魔法か!?
相手の近くにいるのは危険と一瞬で判断し飛翔魔法全開で遠くに離れた。
魔法の発動と同時に眼の前で数百キロの爆弾でも炸裂したような威力巨大な爆発で周囲一体が吹き飛ぶ。
やべえ、こんなの直撃してたら体ごと木っ端微塵じゃないか。
駄目だ!話を止めるな、何でもいいから会話に引き込め!
「私はこの世界とは別の場所から転生してきた!お前は違うのか?」
「…転生だと?」
魔法攻撃を連発していたアルカディアの動きが止まった。
まだだ、もっと会話に引き込むんだ!
「ああ、俺が元居た場所は地球の日本という場所から来た」
相手は右手で自身の頭を掴むようにして僅かに苦悶の表情が見える。
「……地球……日本……なんだ……その言葉」
アルカディアが俺の言葉を聞いて動揺している。
もしかして、こいつも地球から来た転生者なのか?
「その苦しみ様…もしかして、アルカディアも地球から来たんじゃないのか?」
「違う…我は魔王城で生まれた!魔王そのものだ!」
「だったら何故そんな苦しそうな表情を見せるんだ?」
「我の表情が苦しそうだと!?戯言をぬかすな!」
「本当の魔王ならこちらの言葉を聞いても何とも思わないはずだ、自分の顔を見てみろ!冷静な表情が崩れているのを」
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!それ以上言葉を発するな!」
錯乱気味のアルカディアは突然何かの水晶玉を取り出した。
なんだ、凄くいやな予感がする。
「貴様を倒すには、統括様が渡してくれたこの力を解放するしかない!これは暗滅消壊を封じた結晶だ!」
アルカディアは水晶を眼の前に叩きつけると、突然周辺の空気が震え暗黒の巨大な球状の塊が現れ周囲一体を強力な掃除機のように吸い始める。
俺は一瞬で察した、これは小さいブラックホールみたいなものか!?
周囲一体を全部吸い込んで二人共消すつもりかよ!
俺はとっさに飛翔魔法で飛び出し、アルカディアの体を両手で抱いて掴み遠くへと離れてようとする。
「何をする離せ!!」
体を抱きかかえられたアルカディアが腕のところで暴れているがお構いなしだ。
ここにいたら二人共存在ごと消滅させられ全てが無かった事になる。
とにかく遠くに逃げろ!そう考え全力で爆心地より飛んで離れていく。
巨大な暗黒の塊が突如一気に収束して半径百メートルの全てを飲み込み周辺には何も残っていなかった。
俺の判断が遅れていたら二人とも飲み込まれて存在自体が消えていた。
遠くの地面に倒れ込んで上になっていた俺に対して、呆気に取られていたアルカディアは、共に回避して逃げたのに疑問が浮かんだのか問いかけてきた。
「…貴様…何故、我を助けた」
間一髪で逃げ切った俺はアルカディアに怒りをぶつけていく。
「お前ふざけんな!こんなモノ使ったら自分も死ぬだろうが!何考えてるんだ!?」
「…貴様を倒すことが我が本懐だからだ」
「それでお前自身が消えても意味がないだろうが!なんのため転生してこの世界に来たんだよ!」
「…我が転生してきた…」
「思い出せ!自分自身の事を!お前はこの世界の人じゃないんだろ!?」
アルカディアは両手で頭を抱えて体を仰け反らせながら悶え始めた。
余程強力な刷り込みがされているのか物凄く苦しそうに見える。
「あああああっ!」
「アルカディア!誰なんだお前は!」
「…我は誰だ…魔王だ!我は魔王でそれ以外でもない!」
彼女はゆらりと立ち上がり、こちらへ殺意を振りまき魔法攻撃を仕掛けてきた。
次々と繰り出される上級魔法を避けながら何度も呼びかけ意識を取り戻そうと必死に叫び続ける。
「アルカディア!目を覚ませ!お前は操られてるんだ!」
「うるさい黙れ!我は貴様を倒さなければならないのだ!」
錯乱状態の彼女は魔法を連発してきてこちらは防戦一方だ。
だが止まるわけにいかない、なんとしても正気に戻す。
「こんな誰もいない世界!先輩がいない世界なんて滅びればいい!!」
今、物凄く気になる言葉を発したぞ。
先輩と言ったか?もしかしてコイツも日本人なのか?
「待て!アルカディア!!魔王の波動!!」
俺は魔王の波動スキルで相手の魔法発動を一時的に止めて呼びかける。
「お前…今先輩と言ったか?その言葉、日本人しか使わない。もしかして…俺と同じゃないのか!?」
「日本人…我がこの世界の人間じゃない…」
「そうだ!お前は日本人なんだ!!自分の名前を思い出せ!」
「…日本…名前…私の…名前」
何だ?彼女の体から闇の力が漏れ出している。
もしかして肉体に蓄えられた闇の力で自分自身を制御出来なくなってるのか?
だったら、俺が全部吸い取ってやる!
「闇の手よ!アルカディアの中にある闇の力を吸い取れ!」
闇の手がアルカディアの肉体を掴み、俺に闇の力が流れ込む。
物凄い量の闇の力がこちらへと吸い込まれていく。
「アルカディア!目を覚ましてくれ」
「目を覚ます…貴様が本当に日本人と言うなら名を名乗れ!」
「俺の名前は天城天馬だ!」
彼女は驚きの表情になりこちらを再度問い詰めてくる。
「嘘をつけ!貴様がその人物なわけない!!」
「なぜだ?お前知ってるのか俺の名前を…?」
「私が知るその人は女性ではない!男の人だったんだ」
「いや、それは色々事情があってな。この世界で女の子の体になってしまったんだよ」
「ふざけるな!そんな戯言で我を謀るのか!?」
「じゃあこれでどうだ、俺の勤務先は株式会社鹿山インダストリーの第二機械営業課所属、役職は主任で毎日終電まで残業三昧だった!」
「…本当に天馬先輩なのか?お前を慕っていた後輩の名前も覚えているのか」
「慕っていた後輩の名前!?」
「そうだ…言ってみろ」
慕っていた後輩の名前、先日死ぬ間際に思い出した女の子。
忘れもしない彼女の名前を叫ぶ。
「その子の名前は『品元彩香』だ!!」
俺が、後輩の名前を伝えると突然アルカディアが地面に膝を付き頭を抱える。
「…しな…もと…さいか……私の名前は品元彩香…ああああっ」
突如彼女の中から闇の力が大量に外部へと放出されていく。
まるで長年溜まった膿のように吐き出され全てが消えてなくなり静かに呟いた。
「…天馬…先輩…やっと会えた…」
最後に一つ言葉を残し魔王アルカディアはその場に倒れ込み気を失う。
驚きの連続が続き過ぎて理解が追いつかない。
新魔王の中に転生してきたのは俺が居た会社の後輩だった『品元彩香』さんだった。
なぜ、彼女がこの世界に転生してきて魔王になったのか。
彼女が目を覚ましたら確認するべきことが沢山あるが、なんとか彼女を止めることが出来た。
一旦、この子を街に連れていき後で事情を聞くとしよう。
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