103. 新魔王アルカディア襲来!
ドランから新しくなった杖を貰い、パルテセスに戻ってきて2週間が経過した。
主要戦闘メンバーも徐々に回復を見せセレネとヴァレリアは既に全快、他のメンバーも概ね元通りで、まだ傷が癒えてないのはリブラくらいだ。
ライラが自身を封印した時に全員の力が元に戻ったが、全員には俺が一人で戦うことを説明しておく。
全員から単独で戦うことを拒否されたが、本当にピンチになった時だけ呼ぶと伝えてなんとか頼み込んで説得した。
そして新たな仲間に加わったアトレシアにも様々な作業を手伝って貰っている。
四天王だから戦いしか出来ないかと思っていたが、彼女は手先が物凄く器用で、小物を作るのが楽しいようだ。
みんなで使う食器や細かい道具の作り方をドワーフ職人達に教えてもらい、皆が使う道具の作成を補助してもらっている。
俺はルコット達と新しい街作りを進めていく。
建物も少しずつ増えてきて住民が徐々に以前の生活を取り戻し始めている。
このまま皆で平和に暮らして新しい魔王が来なければいいのにと思った。
しかし魔王軍は甘くはなかった
検察作業を手伝っている最中に突然全身に悪寒を感じた。
遥か遠くから迫りくる強大な魔力に、俺の体が身震いする。
新しい魔王がこちらに迫っているのを体の五感でヒシヒシと感じて、全員に戦闘の準備を伝えて全員逃げるように促す。
「みんな!ここから避難しておいてくれ!ルコット誘導たのむ!」
「わかりました、みんな森に逃げて!」
俺はせっかく復興し始めた街で戦闘させないため、離れた広い場所で新魔王を待ちかまえる。
誰かが飛翔魔法で遠くから飛んできているのが肉眼で見えた。
相手はこちらの存在に気付いたのか俺の数メートル先の地上へ降りてこちらへと視線を移す。
新魔王は俺が転生してきた時とは違い完全な肉体の状態だ。
金色で派手な装飾が施された漆黒のローブを身にまといスレンダーな女性の姿。
顔つきは少女と成人の中間くらいの若さに見える。
まずは会話の主導権を握るためにこちらから言葉を伝えるべきだ。
「新しい魔王が女性だとは思わなかったよ」
「その強大な魔力…貴様が元魔王バルテオスか」
「そうだ、私がパルテオスだ」
「我名は、魔王アルカディア…貴様を葬るものだ」
アルカディアと対峙して理解した。
彼女の魔力を全身で感じてわかる、明らかに俺より段違いの強さだ。
魔王復活には数ヶ月と言っていたが恐らく肉体、魔力共に完全に復活した状態がこの姿なのだろう。
「ひとつ聞かせてくれ」
「なんだ?死ぬ前の命乞いでもするのか」
「君は何故、私を殺そうとするんだ?」
「貴様は魔王軍に仇成す不要な存在だと魔王軍の統括に教えられた。だから処分する、それだけの事だ」
「魔王軍統括に命令された事を疑いもせず任務遂行するだけなのか、自分の意志で戦おうとは思わないのか」
「戯言を抜かすな、我らが魔王軍の敵は全てを排除する。そして世界の全てを破壊し尽くすのだ!」
アルカディアとの会話、そして彼女の目を見て思った。
言葉にまるで自分の意志を感じない、シエルに操られているのか?
いや…操らているならシエルの口調等が言葉に現れるはず。
恐らくこれは生まれた時から逆らえないように、ずっと魔王としての使命を全うするようにコントロールされた、いわゆる洗脳しているのだろう。
ライラは新魔王を倒さずに話で解決しろと言っていた。
理由は不明だが、彼女の意向に沿うったやり方を試すしか無い。
だが、どうやって会話だけでしかも洗脳がかかっている状態を解く?
このまま会話に応じてくれればいいが、相手はこちらを殺る気満々だ。
次の会話が思いつかず思考を巡らせている隙を見せた瞬間、相手は突如として攻撃を開始した。
「…爆裂雷」
「おい!いきなりかよ!魔王の覇気 (デモンズウォール)!」
俺は相手が放つ魔法を防御のスキルで耐えようとしたが明らかに威力が強い。
スキルには杖の能力向上は意味がないのか!?
このままだと耐えられないので、何か手はないか!
「こうなったら、爆裂雷で相殺だ!」
相手の魔法に自身の魔法を重ねて魔法の威力を相殺して何とか堪えた。
こちらが安心したのもつかの間、間髪入れずに相手は魔法を連発して来た。
「…地獄炎」
周囲に集まる炎を集中させて燃やして攻撃、これは風で吹き飛ばすしかない!
「暴風殺!」
自分を中心に風の竜巻を発生させ突撃してきた炎を弾き飛ばし直撃を避ける。
俺は考えた、相手の攻撃を守り切るだけじゃ駄目だ。
竜巻でこちらの姿が見えてないうちに空へ飛び上がり、最上級魔法を叩き込む!
「絶界魔法!超烈雷!」
アルカディアに対して、こちらが持つ最上級魔法で抵抗を試みる。
「…魔王の覇気 (デモンズウォール)」
だが相手も俺と同じ様にスキルでこちらの魔法を平然と受け流す。
マジかよ…杖で数倍に底上げした最上級魔法も通じないのかよ。
相手はこちらの攻撃を受け止め更に次の攻撃を繰り出す
「…絶界魔法…氷剣斬』
なんだ!?俺はこんな魔法は知らないぞ。
絶界魔法という事は最上級の氷結攻撃だ、直感だがこれはヤバイ!
時すでに遅し、俺の周囲に氷の剣が数え切れないほど大量に出現してこちらの方向を向いている。
全方向囲まれて逃げ道がない、こうなったら一か八か。
「千氷槍!」
氷の槍を集中して一つの方向に飛ばして追従して逃げ道を作り逃げる。
だが全ての剣を避けることも出来ずに全身を何本のも剣が肉体を傷つけてきた。
「くっ…」
痛みに耐えながら地上へと降りてヒルデに教えてもらった回復魔法で傷を治癒していく。
軽い傷ならなんとかなるが、致命傷になるような傷は回復できない。
今のは何とか逃げれたが、空に飛んだら駄目だ。
恐らく今の回避方法は二度目は通用しないだろう。
こちらもまだ魔力に余裕はあるが、こんな上級魔法を連発していたらいずれジリ貧になるのが目に見えている。
「闇の手よ!アルカディアを掴め!」
「…闇の手」
二人の魔王の手ががっぷり手四つの状態になり、スキル同士で力比べを始める。
だが、両方の手は力が均衡なのか重なったまま動かない。
ここでわかった、闇の手については力の差は無いのか。
もしかするとスキルに関しては、技によって大きな力の差は無いのかもしれない。
俺は如何にも余裕がありそうに相手に勝ち誇ったように言い伝える。
「どうやら闇の手には大きな差はなさそうだな、そろそろ諦めろ」
「…それでも貴様の魔法力は私に及ばない」
こちらの挑発には乗らないか…戦闘状況を冷静に分析してやがる。
相手の会話があっと言う間に終わり話が続かない。
攻撃しても逆転の一手が思い浮かばないから何かいい方法がないのか。
現状を打開するためには、何か思いつくんだ!
そうでなければ絶対に勝てないんだ。
俺は何とかして相手を止める方法を考えつこうと思考を巡らせていく。
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