99. 鍛冶師バルガスとの遭遇、そして国への帰還
俺達は、海運ギルドが抱えていた問題を解決してコンラッド達に感謝された。
どうやらバルタッツァの頭目は海運ギルドの権利を取り消され、この街での商いを禁止、他の地域への放免という処分になったようだ。
事前に約束をしていたように、海運ギルドとの取引について約束を書面で取り付け、今後の商いについては一旦国に戻ってから改めて行うことにした。
これでパルテセスの農作物を新しい販路で開拓できる。
お礼の食事会へと誘われたが、こちらも急いでいるのでコンラッドと固い握手だけを交わし街を離れることになり、次の目的地レイモンドへと向かう。
アトレシアを闇の手で抱えて飛翔魔法で目的の街へと向かう。
休憩を挟みながら概ね二時間ほどの道のりで現地に到着した。
レイモンドは小さな街と言われていたが比較的反映した地区に見える。
通りがかりの女性の人に聞いて武器屋の場所を教えて貰い徒歩で向かう。
教えてもらった店へと入ると頭に虫眼鏡や顕微鏡レンズなど色んな機能がついているヘンテコな兜を被ったドワーフの鍛冶職人が作業を行っていた。
店内には今まで見たことも無いような少し変わった武器が沢山ならんでいる。
こちらの来訪に気付いたのか職人がこちらに視線を向け声をかけ要件を問われた。
「おう、姉ちゃん達何用だい?」
「こちらに凄腕の鍛冶職人の方がいると伺って修理を依頼しに来たのですが」
「修理だあ?一体何を持ってきたんだ」
俺は持っていた愛用の杖をカウンターに出すと店主は驚いた表情でこちらを睨みつけ素性を問いかけてきた。
「姉ちゃんこの武器をどこで手に入れた?」
「ガヴェリア国の七賢人から譲り受けました…武器や農具として重宝していたのですが、ちょっと力を入れすぎて壊れてしまいました。もしかして貴方がバルガスさんですか?」
「バルガスは死んだよ、俺はしがない武器職人の『ドラン』だ」
バルガスが死んだ?いや違う、この杖を見て驚き入手ルートを聞いた。
恐らくだけどこの人が鍛冶師バルガス本人だ。
何か理由があって昔の名を捨て普通の武器屋になったのだろう。
なぜガヴェリアを離れて身を隠したのか知りたいが今は余計な詮索はしないほうがよさそうだ。
「聞くが力を入れすぎたって一体何をやったんだ?」
「杖に魔法力を込めて相手にぶつけると爆発するのを知っていて、全力で私の魔力を乗せて敵を攻撃しました」
「爆発ってどれくらいの威力で吹き飛んだんだ?」
「半径五百メートルは消滅させましたね、それでも敵は死にませんでしたけど」
「五百メートルだとぉ!?杖の爆発機能はおまけ程度につけてたんだぞ!姉ちゃん何者だ?普通の人間ではないだろう!?」
「今はパルテと名乗っていますが、元魔王バルテオスです」
「魔王バルテオスだって!?あの最強最悪とも言われている魔王の事か、しかし何故こんなところに来た?もしかして堕天使どもの使いか?」
「いえ、ここに来たのは単に杖を修理してくれる人を探すためですが…堕天使の事を知っているとは以前に何かあったのですか?」
「いやいや!知らん知らん!今の話は忘れてくれ」
今の堕天使に関する話は何だ?
過去に奴らと何かあって危険を察して身を隠したのだろうか?
一体何があったのか知りたいが、こちらも敵対しているし彼の警戒は解いておくとしよう。
「安心してください、私も堕天使たちと敵対してます。彼らとの戦闘で相手を倒すために全力で杖の能力を使って壊れてしまったんです」
「堕天使と敵対しているだと…それは本当か?」
「ええ、ただ私も含め魔族である仲間もこちらの攻撃が通じなくて堕天使相手に難儀していますが…」
ドランは顎に右手を当てて何かを考えているようだ。
しばらくしてこちらの目を見据えて重大な事実を話しだす。
「姉ちゃん、堕天使の弱点は知ってるのか?」
「弱点?天使に弱いと言うのは知っていますが…」
「そうじゃない、奴らの器と呼ばれる体の弱点だ」
「そんなのがあるんですか!?」
俺は余りにも衝撃的な内容を伝えられ、つい前のめりでドランに自身の顔を近づけて聞いた。
「姉ちゃん顔が近いよ…」
「す、すいません…あまりにも驚きの内容だったので…」
「奴らの器にはコアと呼ばれる心臓部がある、ちょうどお腹の中心あたりにな。そこが肉体再生と対魔族の攻撃防御を行っているんだが、コアに物理的な衝撃を直接与えれば、機能が止まり対抗できる」
「なんでそんな事を知っているんですか!?」
「…過去に俺を助けてくれた人が犠牲になってくれた賜物だよ。それ以上は聞かないでくれ」
話の流れだとドランを助けてくれた人が居たのか。
過去にもライラみたいに人や魔族を助けたいと考える天使が存在していた。
その人が実は天使で堕天使となった器の体で自分の弱点を見つけて教えてくれたんだろう。
恐らく、その人はもう存在していない。
だから多くを語りたくないんのであろう。
「とりあえず、今の杖を修理して対堕天使向けの力を付ければいいんだな?」
「は、はい。そんな武器が作れるなら仲間の分も依頼したいですが、費用はどれくらいでしょうか…?」
「杖の部材だけで金貨千五百枚だ、仲間の武器ってどんな奴だ?」
「金貨千五百枚!?杖の修理代だけでも結構しますね…できれば片手剣、両手剣、格闘武器にドワーフハンマーと魔法使い、僧侶向けの杖…」
「おいおい、多すぎだよ。そんな沢山は一度に作れない」
「ですよね…とりあえずは杖の修理を優先して貰えないでしょうか?費用は後日お持ちしますのでお願いします」
「わかったよ、姉ちゃん一つ貸しだな。その代わり今度俺の頼みを聞いてくれんか」
「頼み事ですか…どんな事でしょうか?」
「姉ちゃん元魔王って事なら物凄い魔力持ってるんだろ、少しばかり力を貸して欲しいんだ」
「魔力を使う手伝いですか?仕事が終わった後でいいでしょうか」
「ああ、構わんさ。こちらも時間かかるし急ぎではないからな」
「それでは修理お願いします!どれくらいで取りに来ればいいでしょうか?」
「急ぎでやるから大体一週間ってとこだな」
「わかりました!国に戻ってお金用意してきます」
バルガスへ杖の修理依頼と強化を頼み、いよいよパルテセスへの帰還だ。
二人で大陸を飛び幾つかの街を転々としながら数日掛けての移動となる。
アルタイルの大森林を示す大樹が遠くに見える場所まで近づいて心が湧き踊る。
大陸を飛ばされて一ヶ月程度の時間が経過した。
長いようで短い時間からの帰還だ。
皆元気で暮らしてやっているだろうか。
森を抜けて見慣れたはずの平原が視界に広がってたきた目に見える光景。
望郷の念は音もなく崩れ落ちた。
激しい戦闘が起きた様な隆起した大地、崩れ落ちた建物、人々の姿は見えない。
みんなで作り上げた俺の大事な故郷は完全な廃墟と化している。
パルテセスという自分にとって掛け替えの無い国が滅んでしまっていた。
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