第71話 戻ってほしいそうですが、隣国で聖女に任命されたのでムリです
「は? 聖女? 雑用係のお前が?」
「そうです。襲ってくる魔物から王都を守っています」
雑用係が〔聖女〕になったなんて、勇者には信じられなかった。
「お前、そもそも〔聖なる力〕持ってんの? ねぇだろ?」
ちょうどその時、ユニオンスライムが森の中から現れた。
雑用係は迷わず門から出てきて、白いヒラヒラした聖女のローブをふわりと揺らし、剣を抜いた。
突如、雷鳴が轟き、稲妻が雑用係が抜いた剣に落ちる。
雑用係は、そんなこと気にも留めず、稲妻ごと剣をユニオンスライムに叩き込んだ。
「ライト!!」
雑用係が叫ぶと光の柱がユニオンスライムを包み、その光は細くなって核を照らし、貫いた。
「神の光だ!!」
「さすが聖女さま!!」
「ありがたや、ありがたや」
城に勤める者、復旧作業をしている者、お城に来ていた行商人、その場にいた者が歓声をあげた。「神の光」だと。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
勇者は、皆が雑用係を〔聖女〕と崇めるのを受け入れられなかった。
「違うだろ? ぜってー違うだろ?
雷は剣の特殊効果にしか見えないし、光の柱は魔法だろ?」
「じゃあ、魔法使ってみろよ」
同じ魔法を使ってみろと門番に言われた。
しかし、勇者ガイツが使える“勇者の魔法”は〔正義の光〕だけだった。
それだけが、勇者の魔法だと思って生きてきた。今までの勇者もそうだ。
勇者のみが使える魔法の系統だと、見ればわかるのにマネできなかった。
〔正義の光〕よりレベルの低い魔法なので、練習すれば勇者も使えるのだが、今すぐに使って見せることはできなかった。
「聖女様に対する侮辱罪で連れていけ!!」
門番が言い放ち、勇者は連行され、強制送還された。
***
お父ちゃんの使いでマシロ王国に来てからすぐ、ペラルゴニウム村はマシロ王国の領土になった。
「マシロ王国としては、領地が増えることは喜ばしいことだ。
【漆黒の羽交いフェンリル】という、強い魔獣を従えているアイビー殿のレベルは、いくつなのかな? 雑用係とはいえ、勇者殿に迫る勢いなのだろうな」
「え? わたしのレベルは8です」
「「「「「……え?」」」」」
王様、ソラル王子、そして二人の側にいる大臣と思われる人、部屋の端っこでビシッと槍を持ってる鎧を着た人など、謁見の間にいた全ての人が驚いた。
なぜ?
雑用係だから、レベルが低いのは当然のことだよね?
「測定してから一ヶ月もたってないので、合ってると思いますけど……?」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。
レベル8では【アッフェクトゥス・オーロックス】にかすり傷さえつけられないだろう。少なくとも、息子のソラルより上のはずだ。
これ! 誰か!!
今すぐ、アイビー殿のレベルの測定をせよ!!」
なんと、マシロ王国でレベルの測定をすることになった。
教会の人と思われるおじさんが水晶を持ってきて、見てくれた。
「……8です」
「そんなバカな!」
「よく見るんだ!!」
ソラル王子と王様が、教会のおじさんに詰め寄る。
よく見たって、結果は変わらないと思う。
「何度見ても〔8〕です。〔08〕とありますが……」
「それは…………〔108〕ということか?」
「その可能性も否定できませんが〔08〕としか、わかりません」
「勇者はレベル70以上でなれる。……が、レベル100を超えたものなど見たことがない。と、いうことは〔聖女〕ということか?」
「聖女! それなら納得がいきます。
〔光の柱〕を使いますし、彼女は聖女に違いありません!!」
なんか違う気がするけど、わたしは〔聖女〕ということになった。
この日から、いちおう聖女ッポイことをするため、王都に近づく魔物を退治することになり、一度だけ、お城の門で勇者さまに会った。
戻ってほしいと言われたけど、この国で聖女として魔物と戦わねばならないのでお断りした。勇者さまは、チグマ王国に帰ってからも体の腫れが引かなくて、引退したみたい。
わたしは、マシロ王国で聖女を続けている。
魔物と剣で戦い、結界や回復魔法を使えない聖女。
少し形は違うけど、魔物のせいで悲しい思いをする人を減らしたいというこどもの頃の夢は叶えている気がする。
最後までお読みくださりありがとうございました!!
途中、ポイントが入らなかなかったら、ブックマークがなかったら、ここまでたどり着けなかったと思います。ポイント評価、ブックマーク登録、レビュー、とありがとうございました!!
次回作は、少し休んでから、短編を書いて5回直す予定です。たぶん恋愛要素のあるファンタジーになるかなと思います。




