第66話 本当だ
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この回は水系の残酷なシーンがあります。ご注意ください。
「みんなが言うのもよくわかる。
アイビーを見ても強くなったと思えない。勇者パーティーに入る前の、カワイイ娘のままだからな。
だが! 目に見える強さもある!!
アイビーを見てくれ!!」
お父ちゃんの言葉で村人全員が振り向いて、一番後ろに座っているわたしを見た。
ちょっと恥ずかしい。
「あんなデカイ銀色狼を、ごくごく普通の村娘が飼いならせるか!? 黒い翼まで生えてる魔物だぞ!?
たとえアイビーが弱くても、銀色狼のフェンがアイビーを守るに違いないし、戦力にもなる!!」
「そう言われるとそうだな」
「シッポでくるんで、主人を守るように寝てるもんな」
「一目で強い魔物だとわかる」
「あの銀色狼は、絶対強い」
「一般人のワシらにでさえ、なんかビリビリくるものがある……」
すごいな、お父ちゃん。
あんなに反対してたみんなを説得できちゃった。
そう思った時、空を黒い影が覆った。
「【ガーゴイル】が来たぞ!!」
お父ちゃんの読み通り、2,3日後に来るはずの【ガーゴイル】がもう来た。
***
勇者は、波の中でたくさんの【灰色ドシニア】の毒をくらった。
波の中心に、上に、流れにされるがまま、勇者は攻撃を受け続け、それは永遠にも思える長さに感じた。
(このまま、朝まで続くのか…………?)
勇者の装備には、たくさんの付与がついている。
頭の兜には、〈失神防止〉。
鎧には、〈ダメージ80%カット〉。
籠手には、〈風属性防御〉。
ブーツには、〈30%重量軽減〉。
マントには、〈火属性防御〉。
剣には、〈クリティカル70%アップ〉。
ネックレスには、〈呼吸補助〉。
ブレスレットには、〈毒ダメージ軽減〉。
指輪には、〈幸運20%アップ〉。
強い魔物に出会っても、そう簡単に死なない装備だった。
体が、上に下に斜めにと波の中をグルグル回り、ずっと殺意を向けられ続ける。
ドスドスドスと、鎧の上から何度も胸を突かれた。
(……そんなに、俺が憎いのか?)
【灰色ドシニア】はダンジョンで殺された仲間の恨みを晴らしに、毎晩きていた。最近は【漆黒の羽交いフェンリル】が山小屋にいたので、近寄らなかっただけ。
波に酔い、勇者は何度もゲロを吐いた。
流される方向によっては、吐いたゲロに顔が突っ込んでいき、目に入って痛かったりもした。
波に流されるせいで胸も頭も気分が悪くなり、死んだ方がましな気分になった時、誰かが波から救い上げてくれた。
水に濡れた服がとてつもなく重い。
波から出ても、まだムカムカして吐き気が止まらない。
波の中をグルグル流されたせいで、まだ視界がグルグル回り、平衡感覚がつかめない。
「あれ? 違うな」
助けてくれた声の主は、ガッカリした声を上げた。
「面白き娘が、ついに【灰色ドシニア】に飲み込まれたと思って拾ってみたら、男か。
ま、あの娘が【灰色ドシニア】なんかに負けるわけないな」
「ゲ……ゲホッ。
お、面白き…………娘?」
勇者は逆さに吊るされたまま、自分の右足を掴んでいる男を見た。
黒く長い髪。
白い肌。
金色の瞳。
どこか人間離れした美しさを持ったその男の背中には、コウモリのような羽が生えていた。
______吸血鬼が言ってたんです!!
ふと、雑用係の言葉を思い出した。
自分が住んでる村が襲われるから助けてほしいと言っていた。
(あの話は、本当だったのか!?)
それを裏付けるように、羽の生えた男は言った。
「この辺りに、赤い髪の娘がおろう?
ペラルゴニウム村の娘だ」
まさか、本当の話だったとはと驚いていると、羽の生えた男はゴミでも捨てるように勇者を放り投げた。
「知らないなら、お前に用はない」
勇者は、川の方に行った仲間たちの近くに落ちた。
「ガイツ!!」
「どうしたんじゃ!? 勇者殿! ボロボロじゃ!!」
「ガイツさん!! 今、回復魔法をかけます!!」
駆け寄ってくる仲間。
助かったと思った時、川でマクラフィッシュが跳ねた。
「バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!」




