第5話 洗濯するのも大変です
ウソでしょ?
昨日、三十匹以上倒したのに、また同じぐらいいる。
川だものね。
上流か、下流から泳いできたのかも。
この川、いったい何匹のマクラフィッシュが生息しているんだろう?
魔石を回収しないと、一定時間で、マクラフィッシュは復活。
魔石を回収しても、一晩で、またマクラフィッシュがいる。
「魔物と戦うって、大変ね」
あれこれ考えても仕方がない。
さあ、今日も倒すか!
「はぁぁぁぁ!」
護身用の剣で、切りつけていった。
切っても、切っても、次が来る。
勇者さまは、この数を一突きで倒すと言っていた。
「こうかな?」
切らずに刺せば早いのかもしれない。
右から来たマクラフィッシュを刺したあと、そのまま正面、そして左からくるマクラフィッシュと刺していく。
「バタッ!」
五匹目は刺さらずに、跳ね返って川に落ちていった。
「あいたたたたたたっ!」
数匹のマクラフィッシュから、体当たりをくらってしまった。
護身用に持ってきた〔女性用の剣〕は、長くない。
〔女性用の剣〕は短めで、“護身用”となると更に短くなる。
せめて、護身用でないものを持ってくればよかった。
「うぅ、四匹以上は刺せない」
マクラフィッシュを刺したままでは、次が切れない。
「いきなり、勇者さまのマネなんてできないよ」
三十匹のマクラフィッシュを一突きする方法は、また今度考えよう。
今日は腕が重い。
昨日の疲れが腕にたまってるみたい。
これでは、全部倒すのに時間がかかる。
「どうしよう?
洗濯物を乾かす時間がなくなっちゃう!!」
こうなったら仕方がない。
洗濯物を洗いながら、近くに来たマクラフィッシュを倒そう。
まずは、自分の洗濯物で試す。
右手で剣と洗濯物を握り、左手で洗濯物をゴシゴシと洗う。
マクラフィッシュが来たら、左手を離して、右手に洗濯物を持ったまま剣を振る。
「いける! いけるわ!!」
洗濯物と一緒に剣を振るので、自分にも水が飛び散って頭から濡れていくけど、気にはしていられない。
早く洗って、干さなければ!!
普通に洗うより時間がかかるけど、順調に洗えた。
次は、勇者さまの洗濯物!
「あぁ! 勇者さまのパンツが!!」
今まで、マクラフィッシュは洗濯物に興味を示さなかったのに、突然、勇者さまのパンツに食いついてきた。
引き離そうと、強く引っ張るけど離れない。
「ふんぎぎぎぎぎぎぎぎぃ」
体を後ろに倒して、全身の体重をかける。
それでも離れない。
「離してぇぇぇぇぇぇ!」
指の一本一本が、引っ張られている感じがする。
なかなか強い力で引っ張ってくるわね。
(でも、負けられない!
わたしは勇者さまのお役に立つために、ここに来たのよ!!)
もはや背中は、河原の石につきそうなぐらい体が後ろに倒れている。
それでも、負けてなるものか!
「ビリッ!!」
「えっ!?」
わたしは、最後まで手を離さなかった。
マクラフィッシュも、最後まで嚙みついていた。
結果。
勇者さまのパンツがやぶれた。
わたしの背中が、河原の石に「パタン」とついた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
大変!
勇者さまは予備のパンツを持っているだろうか?
あて布して、つぎはぎするしかないかな?
どうしよう?
お母ちゃんみたいに、うまく縫えないよ!
その後、混乱したまま何とか残りの洗濯物を洗った。
とりあず、干そう。
どうするかは、あとで考えるのよ!
「あ、魔石を回収しなくちゃ」
あとで水汲みに来たとき、復活されると面倒だから河原に落ちている分だけでも拾って帰った。
山小屋に帰ると、結界にぶつかって前に進めないスライムが数匹いた。
「うわぁ。結界って本当に魔物をはじくんだ」
もしも、結界がなかったら、干した洗濯物を守るために魔物と戦ったりしなくちゃいけなかったんだろう。
結界のおかげで、山小屋に帰れば安心できる。
ありがとう、山小屋!!
……で、勇者さまのパンツ、どうしよう?
アイビー(14歳) Lv8→9
HP 400→450 攻撃力 32→45
MP 12→13 防御力 13→14
【職業 雑用係】 〔特技 とにかく切る〕




