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第64話 魔物がやってくる


 夕方。

 勇者は、一級建築士に急ぎで山小屋の修理と結界の張り直しをしてもらった。



「さすが勇者さま。

 山小屋がこんなになるほどの激しい闘いをなされるとは、頭が下がります。しかし、山小屋が壊れるほどの敵と戦うようでしたら、ここは使わない方が___」


「不意をつかれただけだから大丈夫だ」



 そう言って、勇者は一級建築士をさっさと帰した。

 雑用係がやったとは言えなかった。



「勇者殿。

 水晶は、まだ危険を知らせておる」



 振り向けば、占い師の手にしている水晶が赤く点滅しているままだった。



「壊れたんだろ?

 なんか、最近はよく雷が鳴ってるしな」


「それはアイビーちゃんの〔シーガルスホルムの剣〕のせいで______」


「赤く点滅するわりには、夕方まで何もなかったじゃないか。

 今日は疲れたから、さっさと寝るぞ!!」



「____なんで、この勇者は人の話を最後まで聞かんのかのぅ?」



 占い師は、勇者との会話を諦めた。

 勇者は怒りで頭がいっぱいで、占い師のどんな言葉も届きそうになかった。



「ほんと、あの雑用係には足を引っ張られるぜ。

 仕事できないくせに山小屋《コテージ》は壊すし、町では【ガーゴイル】の作り話までするし! とんだ疫病神だぜ!!」


「に、してもよ?

 どうやって山小屋を壊したのかしらね?

 一級建築士が勇者のために作った建物だから、かなり頑丈なはずよ?」


「知るか! 爆弾でも使ったんだろ?」



「____エスメラルダとは会話するんじゃのぅ」



 勇者と魔法使いのやり取りを聞いてブツブツ独り言をいう占い師に、ヒーラーのフィリアは小声で言った。



「____ガイツさんは、攻撃力のある強い人の言う事しか聞かないところがあります。

 私たちの言葉は届きません」


「____弱者をバカにしとるのぅ。

 いつか痛い目に…………」






『ザザァ……ザザザザ……ザザァ…………』






 突然、波の音が聞こえてきた。



「なんじゃ!? この音は?

 なぜ、山の中なのに波の音がする!?」


「はぁ?

 じいさん、とうとう幻聴が聞こえだしたか。

 歳だなって……、なんだアレ!?」



 山の下り道から波が押し寄せてきていた。


 夕日は、まもなく沈むところなので、薄暗い中にうっすらとオレンジ色に照らされて、キラキラと幻想的な波だった。

 そのキラキラ具合がとてもキレイなのに、なんだか不気味に思えた。






「気を付けて! 【灰色ドシニア】よ!!」






「エスメラルダ? なんで、そう思うんだ?」


「え? 何となく、そう思ったのよ」



 勇者に聞かれても、エスメラルダは答えられなかった。






______【灰色ドシニア】って、集団で波を作って襲ってくるから大変ですよね






「【灰色ドシニア】は集団で波を作るって、誰か言ってなかったけ?」



 雑用係が何日か前に言った言葉だが、いつ、誰から聞いたのかエスメラルダは思い出せなかった。






***



「アイビー! 作戦会議だ!!」



 夕食を食べ終わると、お父ちゃんが言った。

 もう陽が沈むのに、今から村全体で作戦会議をするそうだ。



「【ガーゴイル】が来るのは2、3日後と聞いたとアイビーは言ったが、それを聞いた時間が気になる。

 聞いたのは明け方だろう?」


「うん。まだ外は暗かったかな?」


「【テンジン卿】が、い(・)つ(・)か(・)ら(・)2、3日後と言っているのかが問題だ。

 夜だったら、明日。

 朝からだったら、明後日に魔物が来ることになる」


「あ、そっか」


「そもそも魔族は長寿だから、細かいことは気にしない者が多いと聞く。

 今夜、【ガーゴイル】が来たって、おかしくない」


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