第58話 お願いです! 勇者さま!!
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「隣の山のペラルゴニウム村は、あと二、三日で【ガーゴイル】が襲いにくるのが予想される。近づかないようにするといい」
頭が真っ白になった。
ペラルゴニウム村には、わたしの両親がいるのに、また魔物がくるの?
幼いころの記憶がよみがえる。
両親が殺されそうになり、わたし自身も死を覚悟した。
あの時のことを思い出すと、今でも辛い。
「…………なんで、【ガーゴイル】が来るって……わかるんですか?」
「私はヴァンパイアだからな。
コウモリのような羽を持った魔物は、吸血鬼の眷属となるから情報が入ってくる」
そういえば、幼いころに村を襲った魔物はコウモリのような羽を持っていた。
「どこかの冒険者が【ガーゴイル】の巣を攻撃したから、生き残った数体が〔新しい巣〕を探しに飛び立った。
あいつらは習性で、キレイな水の近くに巣を作るからな。〔ペラルゴニウム村〕近くの川にガーゴイルが好む岩が多くある。
きっと、そこに行くだろう」
「【ガーゴイル】が好む岩?」
「〔礫岩〕という、砂より大きな石が固まったものだ。
このあたりは生物の死骸が固まってできた〔石灰岩〕が多い。あいつら、鼻がいいから〔石灰岩〕や〔泥岩〕は好きじゃないんだ。死骸や泥の匂いがイヤなんだろう。私にはサッパリわからんがな」
「じゃぁ、昔、村が襲われたのって…………」
「そうだ。
あの時も、どこかの冒険者が【ガーゴイル】の巣を攻撃したのが原因だ」
また村が襲われる。
それを聞いて、ドクドクと鼓動が早くなり、その音が自分でもハッキリ聞こえた。
わたしに何ができるだろう?
何か行動に移さないと、お父ちゃんとお母ちゃんが殺されちゃう!!
「当時の勇者の判断は素晴らしかった。
ダンジョン攻略より村を優先した。
ダンジョンは〔魔族〕が管理しているから、ダンジョンに入らなければ魔物が復讐に外に出ることもない。いい選択だった」
「お願い、【テンジン卿】!
【ガーゴイル】達を止めてほし________」
「おっといけない。早く魔王様の所に帰らなければ!」
【テンジン卿】がコウモリのような羽を広げ、空に浮かび上がった。
「面白き娘よ。
お前なら、【ガーゴイル】達に負けないだろう。
だが、自信がないなら、勇者に頼んで力を貸してもらえばいい」
それから「また会おう」と言って、【テンジン卿】は飛び去ってしまった。
そうだよね。
【テンジン卿】は魔族だから、人間のわたしのお願いを聞いてくれるわけないよね。
(人間のわたしは、勇者さまにお願いしなきゃ!!)
わたしは、フェンと山小屋に走った。
もう、朝日が輝いているけど、徹夜したのに、これっぽちも眠くなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………!」
山小屋に駆けこむと、急いで食堂に行った。
ちょうど朝食のために、みんなテーブルについていた。
「お願いです! 勇者さま!!
両親がいる村に、再び魔物が押し寄せるので助けてください!!」
「どこから聞いたデマカセだ?」
わたしは、必死に勇者さまに助けを求めた。
しかし、勇者は、わたしを信じなかった。
「吸血鬼が言ってたんです!!」
「雑用係は、基本的に山小屋で留守番。
ダンジョンに入りもしないのに、なんで吸血鬼と会話できるんだ?
寝言は寝て言え!!」
勇者さまは、全く相手にしてくれなかった。
脳裏に、幼い頃の恐怖がよみがえる。
あの時の勇者さまはもういない。
今の勇者さまにすがるしかない。
「どうか、お願いです!!
お父ちゃんとお母ちゃんを、助けてください!
新人の〔武道家〕の人の実家が魔物に襲われそうになったときは、みんなで助けに行ったじゃないですか!!」
「あいつは、王宮から派遣された新人だ!
お前より、めっちゃ使えるヤツなんだぞ。
助けて当然だろ?
あんまりうるさいと、パーティーから追放するぞ」
「そんな! お願いです!! どうか、どうか!」
必死にお願いするわたしに、勇者さまは言い放った。
「寝てばっかりで使えないくせに、うるさいヤツだ!
もう、ぐうたら娘はいらん!
お前をパーティーから追放する!!」




