第57話 違い?
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「どうしてここに!?」
「それはなぁ……そこの【漆黒の羽交い】がダンジョンから抜け出したからだ」
「クゥゥゥン」
フェンは申し訳なさそうに下を向いた。
威厳のある黒い大きな羽も、シュンっとなっている。
「魔王様の命で連れて来たのに、フロアボスの仕事を放り投げて逃げ出すとは……」
「クゥゥゥン……」
フェンが大きな体のまま、わたしの後ろに隠れた。
体を小さくするのを忘れてる。
小さくなれば隠れられるのに。
「面白き娘と一緒にいるということは、何か甘いモノをもらったのか?
食いしん坊め」
「ウォン……ウォンウォンウォン……」
「“だって、甘いモノ食べたくなったから” じゃない!
……こんなことになるから “甘いモノは必ず毎日やれ” と【キンタイ卿】に言ったのに……。
まぁ、いい。
勇者にダンジョン攻略されても、別にかまわないからな」
「そうなの?」
攻略されると、魔族は困るんだと思ってた。
だからフェンを連れて来たんじゃないの?
問題ないの?
「ダンジョンは、いったい何なのか考えたことはあるかな?
〔魔物〕と〔魔獣〕と〔魔族〕の違いは?」
聞かれて言葉に詰まった。
そう言われると、ちょっとよくわかんない。
何となくで使い分けてた。
「ダンジョンは魔物の巣じゃないの?」
「森や川に住み着いている魔物もいるだろう?」
確かに、そうだよね。
ん~。
ダンジョンって何だろう?
「まずは、〔魔物〕について説明しよう。
この世界には、瘴気が溜まった所がいくつも存在する。
すると、瘴気をあび続けた〔ある種の石〕が魔力を持ち、〔魔物〕になる」
知らなかった。
〔魔物〕って瘴気をあびた石から生まれるんだね。
あ!
だからなの?
マクラフィッシュの魔石を回収しなかったら、しばらくして、また復活してた!
「〔魔物〕は瘴気をため続けると、進化するか繁殖するかして、体内の瘴気を一定に保とうとする。
進化し続けて、普通の魔物より格段に強くなった者を〔魔獣〕と呼ぶ」
「じゃあ、〔魔族〕は?」
「誇り高き存在。
〔魔物〕や〔魔獣〕は体内の瘴気のせいで、破壊衝動が抑えられず目に入った生き物を攻撃する。
〔魔族〕は、瘴気を凌駕した者だ。
破壊衝動に振り回されず、他者と会話し、協力することができる。
ちなみに、【漆黒の羽交い】のは協力じゃない。寄生だ」
「ウォンウォンウォン」
「“違う違う” と言っても、そうだぞ?
お前は自分の欲望のために〔面白き娘〕を利用しているだけだ」
(フェンは【テンジン卿】とも仲が良いんだなぁ)
ほのぼのと二人のやりとりを眺めていると、【テンジン卿】が言った。
「【漆黒の羽交い】は特に稀なケースだ。
こいつは限りなく〔魔族〕に近い〔魔獣〕。
全ての〔魔獣〕がコミュニケーションをとれるわけではないから、気をつけるんだぞ?」
「はい」
それから【テンジン卿】は、一呼吸おいて説明を続けた。
「〔ダンジョン〕とは、〔魔物〕を閉じ込めるためのものだ。
我々〔魔族〕は、〔人間〕〔エルフ〕〔ドワーフ〕など、他の種族との共存を望んでいる。
それぞれの文化を評価しているのだ。
〔魔物〕をほったらかしにしていると、絶滅する種族が出てくるかもしれない」
「ダンジョンって、わたしたちのためのものだったの!?」
「あぁ。
だから、倒せるなら、中の魔物を倒せばいい。
だが、あまり潜ると危険だからな。
諦めさせるため、【漆黒の羽交い】みたいなのを置いて警告がわりにしている」
何か思い出したのか、【テンジン卿】がため息をついた。
「そもそもが、人間がこの説明を聞けば、無茶なダンジョン攻略をしなくてすむのにな。
先々代のチグマ王国の王の娘が〔魔物〕に食われたから、これっぽっちも話を聞きやしない。
他の大陸の【竜王】や【医王】は人間とうまくやっているから、我らが【魔王】がバカにされてしまう。
マシロ王国やマヤカ王国、ゴウ王国などは、外交ができるんだがなぁ……」
家族を失ったら、〔魔物〕と〔魔族〕は違うと言われても、なかなか受け入れられないよね。
ウソつかれているのかなって、思っちゃう。
きっと、わたしもそうだと思う。
「そうだ、〔魔物〕に食われたで思い出した。
面白き娘。ペラルゴニウム村を知ってるいるか?」
とつぜん、【テンジン卿】が、わたしの住む村の名前をあげた。




